TBSテレビの報道番組『NEWS23』(こちらではCBCテレビ)が6月26日、通常国会が発電と送電を分離する電力システム改革に向けた電気事業法改正案を、廃案として閉会したことを報じた。すると自民党は、「廃案の責任を与党にのみ押し付ける不公平な報道」と反発し、TBSに対して取材拒否を発表した。TBSテレビは5日夜、報道局長名で自民党に、「指摘を受けたことを重く受け止める」という文書を提出し、自民党は「謝罪と受け止める」として、取材拒否の解除を発表した。
大阪の橋下市長が「取材拒否」を連発したけれど、権力の座にある人は、自分があるいは自分たちが、堂々と反論する立場にあることを棚に上げて、「取材拒否」すればマスコミがビビると思っている。実際、マスコミはビビった。権力にとって都合のよいことしか報道しないのであれば、マスコミは死んだも同じだ。しつこいくらいのいやらしさがあってこそマスコミの存在価値はある。どのマスコミ報道が妥当かは受け取る側が判断する。
電気事業法改正案は、電力会社にとっては成立して欲しくなかった法案だ。自民・公明・民主が、会期末のドタバタにまぎれて、廃案にしてしまったという見方だってある。TBSテレビは「謝罪はしていない」と言うものの、自民党は「謝罪と受け止める」として、この件は双方で「終わり」にしたかったようだ。マスコミは「偏っている」と言われることを恐れていては報道など出来ない。そもそも報道に「中立とか公平はない」と、私は思っているし、あってはならない。
報道する者は、自分の目で見た「中立・公平」を報じている。それを中立・公平と判断するかは受け止める側だ。どんどんマスコミは自分のカラーを出していくべきだ。その報道が好きな人もいれば、嫌いな人もいる。そうでなければ、民主主義の社会は成り立たなくなる。『週刊文春』がフィギュアスケートの安藤美姫選手の出産について、「支持しますか?」というアンケートをメルマガ読者を対象に実施したが、多数の抗議を受けて中止した。
そんなアンケートを実施するマスコミは程度が低く情けないが、中止に追いやった読者は誠に理性があると思う。受け取る側の人々がマスコミを育てるのだ。政治の世界も市民が政治家を育てる時代になると思う。いや、そうならなければいけない。今朝の中日新聞の社説は、衆議院で改憲勢力は3分の2ある。今度の参議院選挙で改憲勢力が3分の2になれば、憲法改正が現実化すると解説し、「本紙は憲法を守る精神に立つ」とあった。私は中日新聞を応援する。