参院選挙も残すところ2日間となった。テレビから党首が呼びかける党のコマーシャルは面白い。自民党の安倍さんの「日本を取り戻す」は、ますます余裕が出てきたようにさえ見える。維新の橋下さんはどう見ても開き直りだ。公明党は相変わらずで、山口代表の押しのある声が学会員に指令のように響くだろう。「公平」を重んじるわが国の選挙管理委員会が封じているとは思わないが、その他の政党のコマーシャルは見たことが無い。自民、公明で議席の過半数は確実と見られるから、投票率は低いだろうと懸念される。
佐藤優さんという元外務省の職員が、『インテリジェンス人間論』の中で、「政治家であれ、官僚であれ、自らが目指す政策を実現するためには権力を必要とする。しかし、権力には魔物が潜んでいる。潜んでいるというよりも、自分の内部にこの魔物を飼っていかなくてはならないのである。そして、この魔物を飼っている人たちは独自の磁場を作り出す」と述べている。この書には日本の政治家や官僚の間では、「信頼しているか」「信用できるか」という言葉がよく出てくる。ロシアの政治家や官僚の間では、「愛しているか」「愛されているか」が使われ、時にはキスもする。
また、こんな文章もある。「官僚は酒に弱いと国会議員から軽く見られる。国会議員から勧められる酒は飲み干すが、酩酊して正気を失わないようにしなくてはならない」。政治に酒は付きもので、自殺した首長が「政治家になろうと決めた時から、酒を飲む訓練をした。初めはすぐに真っ赤になったが次第にたくさん飲めるようになった。必死になれば何でも出来る」と言っていたことを思い出す。酒の席は腹の探り合いでもある。だから酒が飲めない人は、人脈づくりができない。政治の世界に限らず、人が酒を飲むようになってから、あらゆる場面で酒は人をつなぐ重要な役割を果たしている。
「政治は恋愛に似ている」とも佐藤さんは書いている。選挙を見ているといっそうそう思う。応援する気持ちは恋する気持ちと同じだ。理屈よりも先にその人が好きという傾向が強い。何かしてあげたい、何か役に立ちたい、そんな気持ちが候補者を応援するのだ。候補者はそうしたフェロモンを出せる人だ。私は酒を殺して飲む必要がなくなり、味合って飲めるようになって、酒を作り出した人類の偉大さと共にその末を感じる時がある。