新しい安倍内閣が発足した。安倍首相は59歳、私よりも11歳年下である。閣僚の皆さんも若い人が多くなったように思う。安倍首相は何度も「戦後レジュームからの脱却」を主張されている。国会は自民党・公明党の議員が多い安定政権で、安倍首相の支持率が高いこともあって、憲法解釈で集団的自衛権の行使を認めさせ、憲法第9条による足かせをはずした。
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定めた憲法を始めて読んだ時、私は中学生だったけれど素晴しいと思った。人類の理想へ向かって、日本はその魁となる決意だと感動した。昭和30年生まれの安倍首相の中学生の頃は、日本の経済成長は著しく、夢と希望に溢れていた時代だ。労働組合のストライキや学生たちのバリケート封鎖がある一方で、努力すれば何者にもなれると思われていた。
そんな時代に青春期を過ごした安倍首相は、戦後の出発点を噛み締めるのではなく、戦後の体制や制度からの脱却を自らの政治理念としている。いったい安倍首相にとっては現在の何が問題で、それは戦後制度のどこに原因があると考えているのだろう。広島や長崎の原爆犠牲者の追悼式での首相の言葉は空虚な響きだったが、戦争と犠牲者の死について、どのように考えているのだろう。
8月15日、書店に立ち寄ったらいくつかの本が目に付いた。雑誌『正論』『諸君』などが目立つけれど、文庫本の『戦後歴史の真実』(前野徹著扶桑社)、『負けるはずがなかった!大東亜戦争』(倉山満著アスペクト)、『日本の領土がよくわかる本』(晋遊舎ムック)の3冊を買って読んでみた。
昭和元年生まれの前野さんは、日本の社会の乱れはアメリカから押し付けられた憲法にあるから、自主憲法を制定せよというものだった。倉山さんは1973年生まれの若手で、「ハワイを攻撃した愚将山本五十六、戦争設計が無かった東條英機」と手厳しいが、読み物としての面白さしかなかった。中身についてはまたの機会にしたいと思う。