風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

市民マラソン

2010-03-01 01:58:20 | スポーツ・芸能好き
 4回目の東京マラソンが開催されました。過去最多の3万5千人が参加したそうですが、応募は毎回うなぎのぼりで31万人超、競走率8.9倍と、走ることが出来るのは極めて「狭き門」になっています。実際に、私のかつての同僚で、毎年外れている人がいる一方、今の同僚で、4回続けて参加した人もいますが、その確率はなんと0.1%だそうな。こうして見ると、東京都としては、興業として大成功ですね。近隣県のマラソン大会ともタイアップして、同時期開催で盛り上がっているようですし、若い女性を中心にマラソン人口も増えているようです。
 私も、かれこれ10年以上前になりますが、3万人規模の市民マラソンに参加したことがあります。ニューヨーク・シティ・マラソンで、これだけの規模になると、兵站、所謂ロジスティクスが大変な作業になります。その一つは、スタート地点に用意する簡易トイレで、見渡す限りの数を揃えたとしても、スタート直前には混み合うため、待っていられない男性が立ちションに至るのは止むを得ないにしても、辺り構わず座りションを始める女性ランナーも出て来たのには、さすがに狩猟民族のアメリカだと、その逞しさに感心したものでした。もう一つは、沿道の給水施設ですが、こちらの方はよくしたもので、その時は折悪しく11月初めの冷たい雨がそぼ降る悪条件でしたが、沿道は応援の人たちで途切れることはなく、子供たちをはじめとして、パン切れやバナナや飲み物を差し入れてくれるボランティアが大勢いて、助かります。
 市民マラソンの良いところは、参加する方も観戦する方も、お祭り騒ぎのように楽しめるところでしょう。ニュース番組を見ていると、東京マラソンでも仮装するランナーがいるようですが、アメリカではどの市民マラソン大会でも、着ぐるみをまとったり、タキシードで正装したり、缶ビールを目の前にぶら下げたり、大きなアメリカの国旗を担いだりと、それぞれに工夫して観客を惹きつけようとするランナーがいて、見るだけでも楽しい光景です。逆に、走っている方から眺める景色もなかなか興味深い。ランナーの色とりどりのコスチュームが気になりますし、力強い走りや軽々とした走りを目で追います。沿道の人たちの中には、プラカードを掲げて応援してくれる人も大勢いて、なるほど英語でこういう風に表現するのかと感心したり、音楽をがんがん鳴らして、応援すると言うよりも自分たちが踊り狂って盛り上がっている人たちもいます。ニューヨークは人種の坩堝で、黒尽くめのユダヤ人街を通り抜け、緑尽くめの恐らくアイリッシュ街も通り抜けるのも目を惹きますし、ちょっと治安に不安のある北部の市街を通り抜ける時には、立ち止まったり歩いたりしないよう、思わず元気を振り絞ったりします。日本のマラソン大会は、XXX走る会などの走り屋さんが多く、修行僧のような厳しさがあったものでしたが、この東京マラソンはこれまでになく楽しそうで、走るコースの街並みにも興味が尽きないことでしょう。
 こうして3時間も4時間も、一体、何を考えて走るのかと疑問に思う方もいるかも知れませんが、意外に、ランナーや街並みや沿道の人たちを目で追い、匂いや風を感じて走っていると、刺激一杯で、飽きることはないことが分かるでしょう。
 ニューヨーク・シティ・マラソンでは、ゴール地点のセントラルパークの数マイル手前に、ナイキが大きなテレビ画面広告を出していたのを、今も思い出します。その傍らのコピーが秀逸でした。「何故走るのか?」「走り切るためさ」・・・こうして日本語に訳してしまうと味がなくなってしまいますし、その時の臨場感もなくなってしまいますが、実はこの問答は一人称のもので、原文は、Why do I run? To finish. これは、走っているような歩いているような、へたっている素人ランナーには、沿道の応援にも増して、しっかりしろよ~と尻を叩かれるような、心に響く、自らを奮い立たせるメッセージでした。そこに山があるからだ、と答えた山登りがいましたが、それと同様、こうした楽しい大会があると、走りたくなる気持ちがむくむくと頭をもたげます。さて。
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