風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ストレス

2010-03-22 13:10:03 | 日々の生活
 昨晩のあるテレビ番組で、ストレスがテーマになっていました。ストレスという言葉が生まれたのは20世紀になってからですが、現代の病というわけではなく、既に2500年前にお釈迦様が「苦」という言葉で表現し、生きている限りストレス(苦)はなくならないことに気がついていた・・・と言われると、ストンと腑に落ちます。研究者によると、ストレス(苦痛)には三つあると言います――身体的な苦痛、快適を得られない苦痛(答えが見つからない等)、他人から評価されない苦痛、の三つ。なんとなく感覚的に理解できますね。生きている限りストレスから逃れられないということは、社会的動物とされるヒトの持って生まれた悲しい宿命と言えそうです。ストレスによってイライラしたり、ジンマシンが出たりするだけでなく、屁が臭くなるというのには、思わず笑ってしまいましたが、人間という機関が化学反応の塊である所以です。
 ストレスがそうした類いのものである以上、ストレスに対処するには、それを感じる脳からストレスを消すことが大事だと、その研究者は言います。所謂ストレス解消です。その方法として、ホルモンの一つ、セロトニンを増やすことが有効だそうで、そのためには、朝、日光を浴びたり(欧州に多い冬季うつ病は、イタリアなどの南方で日光をたっぷりと浴びるだけで治癒するのだそうです、北欧人のバカンスの意味が分かりますね)、リズム運動をしたり(集中しさえすればガムを噛むことでも可なのだとか)、タッピング・タッチをしたりすること(軽く叩くように触れること)が良いのだそうです。
 因みに、私には耳慣れないセロトニンは、脳内の神経伝達物質のひとつで、必須アミノ酸であるトリプトファンの代謝過程で、脳の中にある「ほうせん核」で生成され、ほかの神経伝達物質であるドーパミン(喜び、快楽)、ノルアドレナリン(恐れ、驚き)などの情報をコントロールし、主に精神を安定させる働きをしてくれる物質だそうです。このセロトニンが不足すると感情にブレーキがかかりにくくなるため、ストレスを強く感じたり、うつ病になりやすく、また、代謝を経て、メラトニンという、一時期、時差ぼけに効くとされて有名になった、睡眠リズムに関係する物質にもなるので、いわば安らぎを与えてくれるホルモンと呼んでもよいそうです。
 もう一つ、ストレスを消す方法として有効なのは、感動の涙を流すことだそうで、脳内の血流量が増し、交感神経の緊張が緩み、脳がリラックスした状態になり、心拍数が落ちるのだそうです。私たちの普段の生活の中で、さんざん感涙にむせいだあと、スッキリしたように感じるのは、ただの気のせいではなく科学的にも裏付けられるわけです。
 この番組に登場していた脳科学者の茂木さんは、現代社会は便利で快適になっているために、却ってストレスに弱くなっているのではないかと分析し、現代人にとって日常がずっと続くことがストレスだから、たまに非日常を経験するのが良いのかもしれないと示唆されています。茂木さんのことですから、民俗学や文化人類学で言う「ハレ」と「ケ」、さらには社会学や政治学上の祭り(象徴的なものを含め)の効用などを踏まえての発言なのでしょうが、決して牽強付会ではなく、根っこのところで繋がっている本質的な話であるところが、なかなか味わいがあります。日本の社会は、伝統的に祭りや宴会などの非日常を用意して来ましたし、アメリカのように歴史が浅い国でも、さまざまな行事やパーティなどをごく自然に取り入れているように、都市化が進んでも、いろいろな形で非日常的な出来事に心惹かれ、ある種の気分の高揚を求めるのは、心(正確には脳)がバランスを取ろうとするヒトの本能のなせるわざなのだろうと思います。
コメント
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