風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

密約

2010-03-12 02:59:43 | 時事放談
 米軍の核持ち込みなどを巡る日米の所謂「密約」問題に関して、外務省の有識者委員会の報告書が公表されました。調査対象とされた4件の内、明確に合意文書があった「狭義の密約」は1件だけでしたが、文書がなくても暗黙の合意や了解があったという意味で3件まで「広義の密約」が認められ、やっぱりそんなものなのだろうなあと納得します。政治は国民の負託を受けて行われる以上、「密約」の有無にとどまらず、広く政策決定過程や判断の内容を明らかにすべきであり、そういう意味で、外交文書は30年で公開するというルールがあるにもかかわらず有名無実化している現状をあらためる必要があります。
 勿論、外交や安全保障には秘密がつきもので、「英国機密ファイルの昭和天皇」(徳本栄一郎著、新潮文庫)を読むと、民主主義の本家・イギリスでも、情報公開の原則のもとに、フォルダーあるいは文書番号があっても文書が見当たらない、公開の例外が見られるようです。それでも、今回の報告書で、当然あるべき文書が見つからず、見つかった文書に不自然な欠落が見られたというように、闇から闇に葬られる秘密主義より、原則公開としながら公開できないごく一部の例外をルールとして認めるのが健全な民主主義のあり方でしょう。いずれ公開されるという緊張感をもちながら政策運営に当たることを担保する仕組みが日本にも必要です。
 それにしても今回の調査で気になるのは、文書管理改革を進めることが趣旨だったのか、日米関係に疑義を差し挟むことを狙ったものか、あるいは自民党政権の過去のアラ探しをしたかっただけなのか、あるいはいずれともなのか、民主党政権の狙いが必ずしもはっきりしないことでした。というのも、過去の検証もさることながら、より重要なことは、明らかにされた事実を今後にどう生かすかということだろうと思うのですが、鳩山さんも岡田さんも「非核三原則を見直す考えはない」と何の躊躇もなく即座に明言したからです。この地球上で最大の軍事的緊張が続く北東アジアに位置する現実を直視せず、対等の日米関係と言いながら、中国におもねて緊密度を増すことによってしか日米の距離感を見直す考えがない民主党政権には、核政策や集団安全保障といった本質的な安全保障論議を仕掛ける気配はなく、結局、日本を背負って立つ気概も感じられません。
 こうして、事業仕分けと同じく、自民党政権のアラ探しのパフォーマンスで終わるとすれば、極めて残念なことです。野党根性が抜けない与党(民主党)と、野党になりきれない元与党(自民党)という構図に変化の兆しは見えないものでしょうか。
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