風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

中国に乗っ取られる?(前編)

2011-01-22 10:39:38 | 時事放談
 ここ二日間、日経新聞はまるで中国に乗っ取られたかのような賑々しさで、一昨日夕方の一面は「中国GDP世界2位」と「米中、経済・安保で連携」の大文字が踊り、昨日朝の一面は「NEC、レノボと合弁」の記事が紙面を埋めました。
 先ず、中国の2010年のGDPの話ですが、実質で前年比10.3%増え、日本が中国に肩を並べるには、内閣府が2月14日に発表する10~12月期の名目GDPが前期比27%増になる必要があることから、日中逆転は確実になったということのようです。既にここ数年来、予想されて来たこととは言え、日本が1968年にドイツを抜いて以来42年間守り続けた世界第二位の経済大国の座を譲ることになるわけで、日本人としてはやはり心中穏やかではいられません。しかし冷静に考えれば、十分の一の人口しかない国に勝ち目はなさそうですので、一人当たりGDPでは日本がなお十倍という圧倒的な強さを誇るということで慰めるしかありません。実際にアメリカやドイツなどの連邦制でもない、中央集権制の国家でありながら、1億人という規模で豊かな社会を実現したということは、日本が誇って良い偉業と思いますし、日本の凄さが分かろうというものです(同時に今まさに壁にぶち当たっているからこそ、地方分権が叫ばれるわけですが)。
 次いで、米中会談が賑々しく報道されましたが、日経一面に踊った空疎な文字「経済・安保で連携」とは裏腹に、二面には「米中、個別案件は先送り」「人民元などマクロ政策すれ違い」「両首脳、協調演出もぎくしゃく」など、総論賛成・各論反対の典型で、これ以上緊張を高めないためのカタチだけの会談だったことが見て取れます。象徴的だったのは、記者会見で、何故人権問題を追及しないのか、あるいは人権問題を抱える国と何故会談するのか、といったような質問が飛んで、オバマ大統領が回答に詰まって言い淀んだところでした。結局、アメリカではアメリカ寄りの報道に終始し、中国では中国寄りの報道に終始しただけで、狐と狸の化かし合いとまでは言いませんが、お互いに相容れない人権問題や領土問題や為替問題はお互いに言いっ放しで議論にならず、中国は国賓として同格に扱われるメンツを取り、アメリカは故錦濤主席の手土産である輸出という実を取って、表面上、握手するという、これが外交かと訝るのも故なしとしませんし、ある意味でこれぞ外交の極致と感心もします。大国化する中国のプレゼンスばかりが目立った会談で、とりわけ中国は、日本の歴史に学んでいるので、人民元は過小評価されていると、いくらオバマ大統領に糾弾されても、動じる気配は微塵も無く、こうした駆け引きを見ていると、かつての日本はなんとナイーブでお人好しだったことかと、愛しくもあります。
 そして最後に、NECとレノボとの合弁ですが、いくら調達・販売で提携するとか、合弁後もNECの雇用は維持し、NECブランドのパソコンは存続し、アフターサービスなど国内のサポート体制も従来通り継続し、生産拠点である米沢事業場を活用すると言いながら、レノボ主導の事業形態に移行してパソコン事業の成長余地を確保するとか、レノボはNECの広範な販路などを活用し、約5%にとどまる日本でのシェア(8位)を高めると言い、NECにおけるパソコン事業の現実を見れば、レノボがNECを乗っ取るのは時間の問題だろうと思います。思えば、1980年代には、日本資本がアメリカのロックフェラー・センター・ビルやコロンビア・ピクチャーズを買収し、アメリカの心を買ったと、アメリカ人の琴線に触れて、日本叩きが燃え上がったものでしたが、特にここ数年は、家電量販店・ラオックス、ゴルフ用品販売・本間ゴルフ、金型・ハギワラ、アパレル・レナウンといった名だたる企業が中国資本の傘下に組み込まれて、ここでも日本人としては心中穏やかではいられません。とりわけ、アメリカで勃興したパソコン市場は、コンピュータで自社開発の垂直統合型ビジネスを展開してきたIBMが、自社開発ではないデファクト・スタンダードのキー・コンポーネントを寄せ集める水平分散型ビジネスに転換したからこそ爆発的に拡大したもので、ある意味でアメリカのビジネスの象徴でもあったパソコン事業を、レノボが2005年に買収したのに続き、日本においても、パソコンの代名詞だった98を育て上げ今もトップ・シェアを誇るNECに、レノボが資本参加するというのは、パソコンはもはやコモディティ商品と呼ばれて久しいですが、我慢強い日本においても、ようやくそれを認めざるを得なくなったという意味では、象徴的な出来事だと言えます。コモディティの世界で、中国の存在感はとどまるところを知りません。
コメント
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