中国の「反日」現象を追うシリーズは今回が最後です。旬を過ぎましたし、正直、私も飽きてきました(笑)。今回は、世代論という切り口で、綴ります。
中国で反日と一口に言っても、その相は様々のようです。ネットの世界とリアルの世界、都市部と農村部、さらに同じ都市部でも伝統的に親日のところとそうでないところでは、それなりに温度差があるようです。
かつて、戦前の日本の軍部が独走したのは、幕末・維新の刃の下をくぐり抜けた志士がいなくなったからだとか、天皇の統帥権を乱用するに至ったのは、大日本帝国憲法の産みの親である伊藤博文などの明治の元勲たちがいなくなって、その思いが忘れられたからだ、といったような話を聞いたことがあります。こうした世代交代による影響は、人の営みの集積が歴史の流れを形作るという点で、歴史を読む上では無視できないところだろうと思います。そして今回の反日暴動を巡っても、世代論について考えさせられます。
勿論、中国が増長して、ここまで言いたい放題・やりたい放題になりつつあるのは、経済的・軍事的に台頭し、日本を凌駕しつつあることが背景にあります。しかし、歴史問題でこれほどしつこく日本の反省を迫るようなことは、支那事変または日華事変(最近は日中戦争などと、誰の陰謀か、互いに宣戦布告もなく、当時の中国がまるで戦争を遂行できるだけの一人前の国家だったかのような呼び方を強要されています)を知る革命第一世代の毛沢東(終戦時51歳)や、第二世代の小平(終戦時41歳)の頃は、絶えてありませんでした。彼らは南京大虐殺がなかったことも知っていたでしょうし、従軍慰安婦が軍の強制ではなかったことも知っていたでしょう。コミンテルンの策謀も知っていたでしょうし、台湾が中国領だとも思っていませんでした(況や尖閣諸島をや)。毛沢東に至っては、1964年7月、日本社会党委員長の佐々木更三氏率いる訪中団と会見した際、過去の日本の戦争について謝罪されると、日本の中国「侵略」を非難するよりも、日本の存在は(当時、党利党略、私利私欲に狂奔する中国人が、「先安内後攘外」(内部安定が先、対外戦争は後)というスローガンの代わりに、「共同抗日」の機運をつくり、中国民衆の結集の為の大義名分にし、結果として、本来ばらばらだった中国人を一つにまとめることに役立ったという意味で)中国の「革命」と「統一」に貢献したことに感謝する、と語ったほどでした(黄文雄氏による。他にWikipediaでも)。ところが第三世代の江沢民(終戦時19歳)になると、随分ねちっこく日本の贖罪意識を刺激し、もはやその歴史観はフィクションにフィクションを塗り重ねて、恥じることを知りません。
今から20年前の1992年10月の党大会で指導体制を確立し、最高指導者としての地位を確実なものとした江沢民氏は、「社会主義市場経済」の導入を決定し、事実上自由主義経済に舵を切って、その後の経済成長を加速させるとともに、天安門事件で経済制裁を受けた上に東欧革命やソ連崩壊の影響によって自国の共産主義政権が崩壊することを恐れ、国民に対して中国共産党による統治の正統性を再確認させるとともに、政治への不満から目を逸らせる為に愛国主義教育(反日教育)を推進しました(Wikipedia)。今、反日デモで暴れまわるのは、子供の頃からそうした環境で育った若者たちです。
福島香織さんによると、彼女が「北京人」と呼ぶ、祖父母あるいは父母の代から北京戸籍を持ち、家族・親戚に軍人や官僚や党委員会の幹部がいたり銀行や大企業でそれなりの職位に就いている人がいて、海外留学経験があったり海外定住ビザを持っているような、ありていに言えば特権階層は、生まれながらにそういう階層に属するので、本人たちはそれが特権階層だとは余り感じていないらしい。そして「今回の反日デモで暴れた奴は、中国人の面汚しだ」と異口同音に言い、領土問題については、勿論、中国人としての立場を主張するが、政治的立場を暴力的な形でしか主張できない人間と同じ人種だと見做されたくないらしい。
そして彼女の軍籍の友人によると、「今回のデモで暴れたやつらは第2代農民工(農民工とは農民出身の労働者、つまり出稼ぎ者で、第2代はその子弟)の若い奴らだ。あいつらは、とにかく自分の中に溜まりに溜まった不満を排泄したいだけなんだ。反日なんて関係ない。機会があれば暴れたいのだ」ということらしい。それでは「第2代農民工」とはどういうグループかというと、百度百科という中国版ウィキペディアみたいなネット百科事典によると、「18歳から25歳までの年齢で、学歴、希望職種、物質的・精神的欲求は高いが、忍耐力は低い“三高一低”が特徴。製造業、紡績業、電子産業などへの就職希望が多い。彼らが働くのは生活維持のためだけでなく、農民出身の父親世代の境遇を抜け出し、都市民になること。中国産業の基礎労働力をすでに形成している。2010年の党中央一号文献で初めてこの言葉が使われた。出稼ぎ農民の60%を占める。…」ということらしい。
福島さんが更に補足説明するとこうなります。「この『第2代農民工』には若干の侮蔑のニュアンスがある。農民でありながら都市で肉体労働に従事する人たちで、都市戸籍はなく、都市民が医療・福祉や義務教育や受ける恩恵にあずかれない」。その世代の親はどうだったかと言うと、「都市に出稼ぎに来て、そういう差別に耐えながら何年か働いて必死に金をためた。そのあと故郷の農村に帰り、家を建て結婚した。そしてまた出稼ぎして仕送りして、子供や老父母の生活を支えた」。第2代農民工はそういう親に育てられた子供たちというわけです。「親の出稼ぎ先の都市で生まれ育った場合もあるし、農村の祖父母の元に預けられ、親の仕送りで育てられた場合も含まれているだろう。彼らは農民の子供でありながら、ほとんどが農業を知らない(一人っ子政策のため)。出稼ぎに出た親たちは都市の豊かな生活を目の当たりにし、農村戸籍ゆえの差別に耐え、せめて自分のたった一人の子供には、この農村出身の悲哀を味あわせまいとして、高い教育を与えようと最善の努力をする。子供に期待するあまり、彼らがほしいものをできるだけ与え、甘やかせる。その結果、都市の若者と同様の指向、たとえばインターネットやファッションや趣味・娯楽への個人消費欲求が高いなどの特徴を備えている。欲望を我慢できず、苦労や侮辱に耐えられない。しかし、頭はけっこういい」と。
この世代を取材したことがある福島さんは、さらにこう続けます。「2010年に頻発した日系企業の工場ストライキの主役は第2代農民工だった。彼らはインターネットのSNSで情報を集め、連携することも知っている。社会や世の中に対する意識も高い。同時にプライドの高さや、自分の未来に対する期待の高さも親世代より高い、と感じた。第2代農民工といっても、もちろんその世代をひと括りにできるものでもなく、個々人に違いはあるが、現状に満足している人が少ないというのはある程度共通している気がした」。「ある若者は、ネットで社会変革が起こせると力説し、ある若者は工場の賃金は悪くはないが、これでは自分たちの造っている日系車すら買えない、いつか貯めた金を元手に起業して大金持ちになる、と大風呂敷を広げた。ただ、その若者が工場の賃金を全部貯金に回せるのは、やはり出稼ぎ者の親と同居し飲食を含めて面倒を見てもらえるからだったが。人生設計や見通しの甘さと欲求の高さに反して挫折に非常にもろいという印象も残っている」。「いくら高学歴を得ても出稼ぎ者は北京戸籍と対等に口をきけない。恋愛や結婚なんてありえない。ネットのオフ会の場で、相手の背景を知らずに若い男女が出会う機会は増えたが、相手の男性が農村戸籍であることを知ると、彼が北京市戸籍の女の子よりも垢抜けていたとしても、彼女の目に冷やかな光が宿る。同じように消費し娯楽を楽しむ若者であっても、彼らの間には越えられない壁がある」。
そういう第2世代農民工が、今回の反日デモが荒れた背景にあるのだ、と言う声を北京の人からよく聞いたそうです。勿論、デモの中には私服警官が相当まじっていて、そういう彼らも上司の命令で混じっていたと証言したそうですが、その目的はというと、「やつらを勝手にさせると、なぐり合って死人が出ることもある。さすがにそれはまずいから」と言います。実際に、9月15日の広州市のガーデンホテル前のデモと、16日の深センのデモに紛れ込んで状況を取材したジャーナリストによると、「暴れて、大声で罵っている奴らは、若い民工、湖南訛りを話していた」と言います。深センは労働集約型の工場が集積し、住民の97%は出稼ぎ者と言われ、若い出稼ぎ者の多くは今なお失業中。「そういう、とにかく貧しく不満をもっている彼らは反日も尖閣も興味がなく、深センのデモでなぜ参加しているのか?と聞いたら、『日本車をぶっ潰したら痛快だ!それが政府や公安の車だったらもっと痛快だ!』と笑っていた」そうです。「要するに暴れる口実がほしかったのだ」と。そして象徴的なのが、9月23日に、フォックスコン工場の寮で10人以上の死者を出した暴動で、従業員の管理を預かっている警備員も、実は第2代民工世代で、同じ出稼ぎ者の若者でありながら、その両者の間に微妙な階級差に対する鬱屈が今回の死者を出す暴動に発展した、という見方があるのだそうです。
福島さんの結論は、「日本としては、反日デモと尖閣問題は分けて考えないといけない」ということでした。神は細部に宿る、と言いますが、こうした草の根の話の中にこそ、分裂した中国社会の現実が見えてくると思ったので、長々とではあっても引用しました。
ボイコット対象にされる「日本製」にしても、回転寿司をはじめ日本食レストランを経営する台湾人や中国人は多いですし、日本の家電メーカーは現地資本との合弁で進出し、自動車メーカーは現地調達率をあげ、地場メーカーとの関係が深いという現実もあります。「反日」のムードは、確かに頭が痛い問題ですが、マッチポンプのように「反日」を煽り、社会矛盾を深める、共産党独裁政権の国のありようこそ問題であることがよく分かります。
中国で反日と一口に言っても、その相は様々のようです。ネットの世界とリアルの世界、都市部と農村部、さらに同じ都市部でも伝統的に親日のところとそうでないところでは、それなりに温度差があるようです。
かつて、戦前の日本の軍部が独走したのは、幕末・維新の刃の下をくぐり抜けた志士がいなくなったからだとか、天皇の統帥権を乱用するに至ったのは、大日本帝国憲法の産みの親である伊藤博文などの明治の元勲たちがいなくなって、その思いが忘れられたからだ、といったような話を聞いたことがあります。こうした世代交代による影響は、人の営みの集積が歴史の流れを形作るという点で、歴史を読む上では無視できないところだろうと思います。そして今回の反日暴動を巡っても、世代論について考えさせられます。
勿論、中国が増長して、ここまで言いたい放題・やりたい放題になりつつあるのは、経済的・軍事的に台頭し、日本を凌駕しつつあることが背景にあります。しかし、歴史問題でこれほどしつこく日本の反省を迫るようなことは、支那事変または日華事変(最近は日中戦争などと、誰の陰謀か、互いに宣戦布告もなく、当時の中国がまるで戦争を遂行できるだけの一人前の国家だったかのような呼び方を強要されています)を知る革命第一世代の毛沢東(終戦時51歳)や、第二世代の小平(終戦時41歳)の頃は、絶えてありませんでした。彼らは南京大虐殺がなかったことも知っていたでしょうし、従軍慰安婦が軍の強制ではなかったことも知っていたでしょう。コミンテルンの策謀も知っていたでしょうし、台湾が中国領だとも思っていませんでした(況や尖閣諸島をや)。毛沢東に至っては、1964年7月、日本社会党委員長の佐々木更三氏率いる訪中団と会見した際、過去の日本の戦争について謝罪されると、日本の中国「侵略」を非難するよりも、日本の存在は(当時、党利党略、私利私欲に狂奔する中国人が、「先安内後攘外」(内部安定が先、対外戦争は後)というスローガンの代わりに、「共同抗日」の機運をつくり、中国民衆の結集の為の大義名分にし、結果として、本来ばらばらだった中国人を一つにまとめることに役立ったという意味で)中国の「革命」と「統一」に貢献したことに感謝する、と語ったほどでした(黄文雄氏による。他にWikipediaでも)。ところが第三世代の江沢民(終戦時19歳)になると、随分ねちっこく日本の贖罪意識を刺激し、もはやその歴史観はフィクションにフィクションを塗り重ねて、恥じることを知りません。
今から20年前の1992年10月の党大会で指導体制を確立し、最高指導者としての地位を確実なものとした江沢民氏は、「社会主義市場経済」の導入を決定し、事実上自由主義経済に舵を切って、その後の経済成長を加速させるとともに、天安門事件で経済制裁を受けた上に東欧革命やソ連崩壊の影響によって自国の共産主義政権が崩壊することを恐れ、国民に対して中国共産党による統治の正統性を再確認させるとともに、政治への不満から目を逸らせる為に愛国主義教育(反日教育)を推進しました(Wikipedia)。今、反日デモで暴れまわるのは、子供の頃からそうした環境で育った若者たちです。
福島香織さんによると、彼女が「北京人」と呼ぶ、祖父母あるいは父母の代から北京戸籍を持ち、家族・親戚に軍人や官僚や党委員会の幹部がいたり銀行や大企業でそれなりの職位に就いている人がいて、海外留学経験があったり海外定住ビザを持っているような、ありていに言えば特権階層は、生まれながらにそういう階層に属するので、本人たちはそれが特権階層だとは余り感じていないらしい。そして「今回の反日デモで暴れた奴は、中国人の面汚しだ」と異口同音に言い、領土問題については、勿論、中国人としての立場を主張するが、政治的立場を暴力的な形でしか主張できない人間と同じ人種だと見做されたくないらしい。
そして彼女の軍籍の友人によると、「今回のデモで暴れたやつらは第2代農民工(農民工とは農民出身の労働者、つまり出稼ぎ者で、第2代はその子弟)の若い奴らだ。あいつらは、とにかく自分の中に溜まりに溜まった不満を排泄したいだけなんだ。反日なんて関係ない。機会があれば暴れたいのだ」ということらしい。それでは「第2代農民工」とはどういうグループかというと、百度百科という中国版ウィキペディアみたいなネット百科事典によると、「18歳から25歳までの年齢で、学歴、希望職種、物質的・精神的欲求は高いが、忍耐力は低い“三高一低”が特徴。製造業、紡績業、電子産業などへの就職希望が多い。彼らが働くのは生活維持のためだけでなく、農民出身の父親世代の境遇を抜け出し、都市民になること。中国産業の基礎労働力をすでに形成している。2010年の党中央一号文献で初めてこの言葉が使われた。出稼ぎ農民の60%を占める。…」ということらしい。
福島さんが更に補足説明するとこうなります。「この『第2代農民工』には若干の侮蔑のニュアンスがある。農民でありながら都市で肉体労働に従事する人たちで、都市戸籍はなく、都市民が医療・福祉や義務教育や受ける恩恵にあずかれない」。その世代の親はどうだったかと言うと、「都市に出稼ぎに来て、そういう差別に耐えながら何年か働いて必死に金をためた。そのあと故郷の農村に帰り、家を建て結婚した。そしてまた出稼ぎして仕送りして、子供や老父母の生活を支えた」。第2代農民工はそういう親に育てられた子供たちというわけです。「親の出稼ぎ先の都市で生まれ育った場合もあるし、農村の祖父母の元に預けられ、親の仕送りで育てられた場合も含まれているだろう。彼らは農民の子供でありながら、ほとんどが農業を知らない(一人っ子政策のため)。出稼ぎに出た親たちは都市の豊かな生活を目の当たりにし、農村戸籍ゆえの差別に耐え、せめて自分のたった一人の子供には、この農村出身の悲哀を味あわせまいとして、高い教育を与えようと最善の努力をする。子供に期待するあまり、彼らがほしいものをできるだけ与え、甘やかせる。その結果、都市の若者と同様の指向、たとえばインターネットやファッションや趣味・娯楽への個人消費欲求が高いなどの特徴を備えている。欲望を我慢できず、苦労や侮辱に耐えられない。しかし、頭はけっこういい」と。
この世代を取材したことがある福島さんは、さらにこう続けます。「2010年に頻発した日系企業の工場ストライキの主役は第2代農民工だった。彼らはインターネットのSNSで情報を集め、連携することも知っている。社会や世の中に対する意識も高い。同時にプライドの高さや、自分の未来に対する期待の高さも親世代より高い、と感じた。第2代農民工といっても、もちろんその世代をひと括りにできるものでもなく、個々人に違いはあるが、現状に満足している人が少ないというのはある程度共通している気がした」。「ある若者は、ネットで社会変革が起こせると力説し、ある若者は工場の賃金は悪くはないが、これでは自分たちの造っている日系車すら買えない、いつか貯めた金を元手に起業して大金持ちになる、と大風呂敷を広げた。ただ、その若者が工場の賃金を全部貯金に回せるのは、やはり出稼ぎ者の親と同居し飲食を含めて面倒を見てもらえるからだったが。人生設計や見通しの甘さと欲求の高さに反して挫折に非常にもろいという印象も残っている」。「いくら高学歴を得ても出稼ぎ者は北京戸籍と対等に口をきけない。恋愛や結婚なんてありえない。ネットのオフ会の場で、相手の背景を知らずに若い男女が出会う機会は増えたが、相手の男性が農村戸籍であることを知ると、彼が北京市戸籍の女の子よりも垢抜けていたとしても、彼女の目に冷やかな光が宿る。同じように消費し娯楽を楽しむ若者であっても、彼らの間には越えられない壁がある」。
そういう第2世代農民工が、今回の反日デモが荒れた背景にあるのだ、と言う声を北京の人からよく聞いたそうです。勿論、デモの中には私服警官が相当まじっていて、そういう彼らも上司の命令で混じっていたと証言したそうですが、その目的はというと、「やつらを勝手にさせると、なぐり合って死人が出ることもある。さすがにそれはまずいから」と言います。実際に、9月15日の広州市のガーデンホテル前のデモと、16日の深センのデモに紛れ込んで状況を取材したジャーナリストによると、「暴れて、大声で罵っている奴らは、若い民工、湖南訛りを話していた」と言います。深センは労働集約型の工場が集積し、住民の97%は出稼ぎ者と言われ、若い出稼ぎ者の多くは今なお失業中。「そういう、とにかく貧しく不満をもっている彼らは反日も尖閣も興味がなく、深センのデモでなぜ参加しているのか?と聞いたら、『日本車をぶっ潰したら痛快だ!それが政府や公安の車だったらもっと痛快だ!』と笑っていた」そうです。「要するに暴れる口実がほしかったのだ」と。そして象徴的なのが、9月23日に、フォックスコン工場の寮で10人以上の死者を出した暴動で、従業員の管理を預かっている警備員も、実は第2代民工世代で、同じ出稼ぎ者の若者でありながら、その両者の間に微妙な階級差に対する鬱屈が今回の死者を出す暴動に発展した、という見方があるのだそうです。
福島さんの結論は、「日本としては、反日デモと尖閣問題は分けて考えないといけない」ということでした。神は細部に宿る、と言いますが、こうした草の根の話の中にこそ、分裂した中国社会の現実が見えてくると思ったので、長々とではあっても引用しました。
ボイコット対象にされる「日本製」にしても、回転寿司をはじめ日本食レストランを経営する台湾人や中国人は多いですし、日本の家電メーカーは現地資本との合弁で進出し、自動車メーカーは現地調達率をあげ、地場メーカーとの関係が深いという現実もあります。「反日」のムードは、確かに頭が痛い問題ですが、マッチポンプのように「反日」を煽り、社会矛盾を深める、共産党独裁政権の国のありようこそ問題であることがよく分かります。