俳優の大滝秀治さんが亡くなられました。享年87歳。亡くなったのは2日のことですが、その後、死を惜しむ声が止みません。
芝居や映画には詳しくありませんが、名作と言われるもの、少なくとも良い作品だと私自身が思えるものは、主役の素晴らしさもさることながら、主役を食うぐらい味のある脇役が固めて、さながら音の厚みを増す重奏を聞くような作品です。その意味で、大滝さんは存在感のある役者さんで、名作を彩るのに相応しかった。
遺作となった映画「あなたへ」(8月25日公開)では、亡き妻の遺志を受けて海に散骨しようとする主人公(高倉健さん)の再三の依頼を受けて船を出す長崎・平戸の漁師役を名演し、下船のときに漁師役の大滝さんが呟いた「久しぶりに、きれいな海ば見た」という台詞に、主人公の高倉健さんが期せずして涙を見せる一幕もあったといいます。
実はこの頃、高倉健さんは、自分は出る作品を選べるようになった、しかしそれは若い役者の活躍の場を阻んでいることにならないか、自分は役者を辞めた方が良いのではないか、などと悩んでいたそうですが、自分が台本を読んで、なんて詰まらないと思っていた台詞を、大滝さんが呟くと、漁師さんの生身の息づかいを感じて、まだやらなければならないことがあると、役者を辞めるのを思い直したといいます。
大滝さんの方では、高倉健さんの役者としての凄さを、ごく普通に演じられることと評していたこともあり、また、自分はうまい役者と言われて嬉しいけれども真実を表現したいものだと徹子の部屋で語っていたこともあり、二人の名優の交遊は、この人にしてこの人あり、と言われるような、凡人の私たちには窺い知れない桃源郷の羨望を覚えます。
富士家という渋谷の立ち呑み屋が好きで、NHKの仕事があるときにはよく立ち寄ったそうです。空いている時にやって来て、店が混み始めるとすっと立ち去るというように。店に飾られている色紙には、次のような言葉が書かれているそうです。その年齢でこんな言葉を吐いてみたい気がする、味わい深い言葉です。
「仕事は火事場の馬鹿力」
「もう駄目だと思ったり、まだやれると思ったり」
芝居や映画には詳しくありませんが、名作と言われるもの、少なくとも良い作品だと私自身が思えるものは、主役の素晴らしさもさることながら、主役を食うぐらい味のある脇役が固めて、さながら音の厚みを増す重奏を聞くような作品です。その意味で、大滝さんは存在感のある役者さんで、名作を彩るのに相応しかった。
遺作となった映画「あなたへ」(8月25日公開)では、亡き妻の遺志を受けて海に散骨しようとする主人公(高倉健さん)の再三の依頼を受けて船を出す長崎・平戸の漁師役を名演し、下船のときに漁師役の大滝さんが呟いた「久しぶりに、きれいな海ば見た」という台詞に、主人公の高倉健さんが期せずして涙を見せる一幕もあったといいます。
実はこの頃、高倉健さんは、自分は出る作品を選べるようになった、しかしそれは若い役者の活躍の場を阻んでいることにならないか、自分は役者を辞めた方が良いのではないか、などと悩んでいたそうですが、自分が台本を読んで、なんて詰まらないと思っていた台詞を、大滝さんが呟くと、漁師さんの生身の息づかいを感じて、まだやらなければならないことがあると、役者を辞めるのを思い直したといいます。
大滝さんの方では、高倉健さんの役者としての凄さを、ごく普通に演じられることと評していたこともあり、また、自分はうまい役者と言われて嬉しいけれども真実を表現したいものだと徹子の部屋で語っていたこともあり、二人の名優の交遊は、この人にしてこの人あり、と言われるような、凡人の私たちには窺い知れない桃源郷の羨望を覚えます。
富士家という渋谷の立ち呑み屋が好きで、NHKの仕事があるときにはよく立ち寄ったそうです。空いている時にやって来て、店が混み始めるとすっと立ち去るというように。店に飾られている色紙には、次のような言葉が書かれているそうです。その年齢でこんな言葉を吐いてみたい気がする、味わい深い言葉です。
「仕事は火事場の馬鹿力」
「もう駄目だと思ったり、まだやれると思ったり」