ぐうたらしている内に、なんとなく旬は過ぎてしまいました。ネタは仕込んであったので、とりあえず調理しますが、食あたりしませんように・・・
さて、今回は韓国や周辺諸国の反応の話です。中国が日本を名指しで非難した国連総会の一般討論演説で、韓国は、領土問題を取り上げて日本を牽制するとともに、「戦時の性暴力」という表現で旧・日本軍の従軍慰安婦問題に事実上言及したそうです(28日)。ただし日本を名指しすることは避けたため、日本政府も反論の演説はしませんでした。
ジャーナリストの趙章恩氏によると、韓国のテレビ・ニュースでは、連日、中国各地で発生した反日デモの様子を詳しく放映し、新聞では「日本と中国が一触即発の危機」「中国の反日集会、最高潮に達する」「激浪の尖閣海域」「日中葛藤で日本企業衰退」「中国、日本に経済報復警告」といった刺激的な見出しをつけて報じていたそうです。韓国のネット掲示板やポータルサイトのニュース・コメント欄では、最初の内は、反日集会に参加する中国人に感情移入する書き込みが多かったようですが、集会が過激化し、日本車に乗っていた男性が暴行される写真や、日系スーパーに暴徒が押し入り略奪を働く写真などがネットに出回るようになってからは、「これは間違っている」「領土紛争があるからといって中国にいる日本の企業に嫌がらせしても、そこに勤める中国人が職を失うだけ」「日本に強い姿勢を見せたいのはわかるが、暴動を愛国といって見逃すと中国の国家信用度が落ちる」などと、日中関係を案じ、中国側に冷静さを取り戻すよう望む書き込みが増え始めたといいます。
韓国にとっては、他人事とは言えないのでしょう。韓国も、中国との間に、イオド(韓国名:離於島、中国名:蘇岩礁)という水中暗礁を巡る領土問題を抱えている上、韓国の経済的排他水域は勿論のこと領海内に至るまで、不法操業する中国漁船に日常的に悩まされているという現実があるからです。
日経新聞編集委員の鈴置高史氏は、韓国が、先の国連総会の一般討論演説で強気になれなかったのは三つの誤算があったからだと解説されています。先ず第一に、二年前の尖閣諸島での衝突事件で当時の日本政府が中国に脅されるや直ちに腰砕けになったように、「尖閣諸島で日本はたちどころに中国に屈服する」との「読み」の上に立って、韓国人は「勝ち馬の中国と共同戦線を張ることにより、独島でも日本の要求を跳ね付けられる」と願ったにも関わらず、日本が韓国の期待を裏切って中国にすぐさま屈服しなかったこと。第二に、韓国が実効支配する件の暗礁は、自国の方が近いという理由で韓国が2003年に一方的に海洋科学基地を建設したことに始まり、反発する中国は、今年3月、この暗礁も念頭に「今後、中国が管轄する海域を海洋観視船と航空機で定期的に監視する」と宣言していましたが、ついに9月23日、無人航空機を利用した遠隔海洋観視システムのデモンストレーションを実施し、「釣魚島(尖閣諸島)と蘇岩礁(離於島)を監視対象に含める」ことを明らかにしたこと、つまり、たとえ韓国が日本を悪者にして中国と対日共同戦線を組んだところで、もはや中国は蘇岩礁などで韓国に譲歩するものではないことが明らかであること。そして第三に、安倍晋三氏が自民党総裁に就任し(9月26日)、仮に総理大臣に就任すれば韓国や中国に対し強腰に出るだろうこと。あるいは、安倍氏が産経新聞のインタビューで「過去に自民党政権がやってきたことも含め、周辺国への過度の配慮は、結局、真の友好につながらなかった」(8月28日付)と語ったことに、一部の韓国紙は注目しており、これまで「日本の右派が反韓的な言動をしても、日本の“良心派”がそれを抑えてくれる」と単純に期待してきたことへの修正を迫られかねないと事態を警戒していることです。
ここで言う日本の“良心派”とは、勿論、韓国にとって都合が良い、韓国や中国側に配慮する日本の左派のことを指します。折しも作家の大江健三郎氏や元長崎市長の本島等氏や月刊誌「世界」元編集長の岡本厚氏など、反日的な主張で知られる左派や進歩的知識人を含む約1300人が「『領土問題』の悪循環を止めよう」と題して、中国や韓国との領土問題を「日本がまず侵略について反省すべき」などと声明を発表(28日)し、日本では殆ど全く注目されなかったのに、韓国メディアでは「自国の侵略主義を叱る日本の知性」(東亜日報)などと、大々的に紹介されました(産経新聞)。ただでさえ事実を直視しない相手に対して、同じ日本人の中にも事実を直視しない一派がいて、十年一日、日本の足元を掘り崩すような、想定通りの反応には呆れてしまいます。
それはともかく、小中華の韓国は、伝統的に、周囲の夷狄(と言っても、端的には日本がその対象になるのでしょう)に対する優越感が脅かされると感情的に反発する一方、大中華の中国に対しては、かつてのように全面的に従属することはないにせよ、経済的・軍事的影響力を増すばかりの隣人の存在感に気圧されて、「従中卑日」作戦・・・中国と同じ価値観・歴史観を表明して、一緒になって日本を叩くことで、自己の立場を少しでも優位に保って来ましたが、ここに来て、中国の覇権主義が露わになり、「中国の領土にかける野心が過ぎれば“反中連帯”を加速する」などといった過激な社説が見られるようになったようです(先ほどの鈴置氏による)。離れ孤島の日本はともかく、地続きの韓国には舵取りが難しい時代になりました。
なお、領土問題は、同じ“中国”人としての一体感を醸成するよい機会とばかり、中国は、尖閣諸島の領有権を主張する台湾に対して、共闘を呼び掛けていますし、本土離れが進む香港に対しても同様のようです。しかし、中国とは違い、台湾や香港で、過激な反日行動が見られることはありませんでした。象徴的なのは、台湾で、日本製品を買わなかったり日本への旅行を取り止めたりするような行動は取らない人が三分の二近い多数派を占める一方、政府に対する不満は根強く、「馬英九政権は対応が軟弱」「政府は強硬な態度で領土を守るべき」などと回答する人は過半数を越えるそうです。台湾では、消費者としては中国よりも数段成熟し、あるいは中国より親日的であるが故に日本への非難に向かわない一方、愛国心という点では、中国と大同小異と見受けられます。こうして見ると、同じ“中国”系の民族でありながら、暴徒化した中国の特異性が浮かび上がります。法治国家ではないこと、反日教育や情報統制が行われていること、経済格差や汚職の横行や若者の就職難などの社会問題を内在し、民衆の不満は爆発寸前であること、こうしたことが背景にあると思わざるを得ません。
実は近隣のロシアも、中国に対しては微妙で、軍事的影響力を警戒しています。なにしろ昨年の中国の軍事費1430億ドルはロシアの約2倍にものぼるそうです。ロシア・極東連邦管区の人口が600万人強なのに対し、隣接する中国・黒竜江省の人口は3800万人と圧倒的で、経済面で強まる対中依存が安全保障面にも影響を及ぼしかねないことを懸念するロシア政府は、日本やアメリカとのバランスを取ろうと、こちらも微妙な舵取りを行っている模様です。
もはや領土問題そのものは、日・中双方が譲り合えるような状況にはありません。日本が取り得る道は、韓国や台湾・香港、ロシア、さらに今日は触れなかった東南アジア諸国など、この地域で利害関係が錯綜している現実を理解し、日・中という直接の当事者だけではなく、東アジアや東南アジアを(場合によってはアメリカも)含む規模で考えること、また領土問題というシングル・イシューではなく、資源開発や経済など、一つ上の次元に立って解決の道筋を探すこと、しかし領土問題において決して妥協しないという軸のぶれない対応が肝要と思います。
さて、今回は韓国や周辺諸国の反応の話です。中国が日本を名指しで非難した国連総会の一般討論演説で、韓国は、領土問題を取り上げて日本を牽制するとともに、「戦時の性暴力」という表現で旧・日本軍の従軍慰安婦問題に事実上言及したそうです(28日)。ただし日本を名指しすることは避けたため、日本政府も反論の演説はしませんでした。
ジャーナリストの趙章恩氏によると、韓国のテレビ・ニュースでは、連日、中国各地で発生した反日デモの様子を詳しく放映し、新聞では「日本と中国が一触即発の危機」「中国の反日集会、最高潮に達する」「激浪の尖閣海域」「日中葛藤で日本企業衰退」「中国、日本に経済報復警告」といった刺激的な見出しをつけて報じていたそうです。韓国のネット掲示板やポータルサイトのニュース・コメント欄では、最初の内は、反日集会に参加する中国人に感情移入する書き込みが多かったようですが、集会が過激化し、日本車に乗っていた男性が暴行される写真や、日系スーパーに暴徒が押し入り略奪を働く写真などがネットに出回るようになってからは、「これは間違っている」「領土紛争があるからといって中国にいる日本の企業に嫌がらせしても、そこに勤める中国人が職を失うだけ」「日本に強い姿勢を見せたいのはわかるが、暴動を愛国といって見逃すと中国の国家信用度が落ちる」などと、日中関係を案じ、中国側に冷静さを取り戻すよう望む書き込みが増え始めたといいます。
韓国にとっては、他人事とは言えないのでしょう。韓国も、中国との間に、イオド(韓国名:離於島、中国名:蘇岩礁)という水中暗礁を巡る領土問題を抱えている上、韓国の経済的排他水域は勿論のこと領海内に至るまで、不法操業する中国漁船に日常的に悩まされているという現実があるからです。
日経新聞編集委員の鈴置高史氏は、韓国が、先の国連総会の一般討論演説で強気になれなかったのは三つの誤算があったからだと解説されています。先ず第一に、二年前の尖閣諸島での衝突事件で当時の日本政府が中国に脅されるや直ちに腰砕けになったように、「尖閣諸島で日本はたちどころに中国に屈服する」との「読み」の上に立って、韓国人は「勝ち馬の中国と共同戦線を張ることにより、独島でも日本の要求を跳ね付けられる」と願ったにも関わらず、日本が韓国の期待を裏切って中国にすぐさま屈服しなかったこと。第二に、韓国が実効支配する件の暗礁は、自国の方が近いという理由で韓国が2003年に一方的に海洋科学基地を建設したことに始まり、反発する中国は、今年3月、この暗礁も念頭に「今後、中国が管轄する海域を海洋観視船と航空機で定期的に監視する」と宣言していましたが、ついに9月23日、無人航空機を利用した遠隔海洋観視システムのデモンストレーションを実施し、「釣魚島(尖閣諸島)と蘇岩礁(離於島)を監視対象に含める」ことを明らかにしたこと、つまり、たとえ韓国が日本を悪者にして中国と対日共同戦線を組んだところで、もはや中国は蘇岩礁などで韓国に譲歩するものではないことが明らかであること。そして第三に、安倍晋三氏が自民党総裁に就任し(9月26日)、仮に総理大臣に就任すれば韓国や中国に対し強腰に出るだろうこと。あるいは、安倍氏が産経新聞のインタビューで「過去に自民党政権がやってきたことも含め、周辺国への過度の配慮は、結局、真の友好につながらなかった」(8月28日付)と語ったことに、一部の韓国紙は注目しており、これまで「日本の右派が反韓的な言動をしても、日本の“良心派”がそれを抑えてくれる」と単純に期待してきたことへの修正を迫られかねないと事態を警戒していることです。
ここで言う日本の“良心派”とは、勿論、韓国にとって都合が良い、韓国や中国側に配慮する日本の左派のことを指します。折しも作家の大江健三郎氏や元長崎市長の本島等氏や月刊誌「世界」元編集長の岡本厚氏など、反日的な主張で知られる左派や進歩的知識人を含む約1300人が「『領土問題』の悪循環を止めよう」と題して、中国や韓国との領土問題を「日本がまず侵略について反省すべき」などと声明を発表(28日)し、日本では殆ど全く注目されなかったのに、韓国メディアでは「自国の侵略主義を叱る日本の知性」(東亜日報)などと、大々的に紹介されました(産経新聞)。ただでさえ事実を直視しない相手に対して、同じ日本人の中にも事実を直視しない一派がいて、十年一日、日本の足元を掘り崩すような、想定通りの反応には呆れてしまいます。
それはともかく、小中華の韓国は、伝統的に、周囲の夷狄(と言っても、端的には日本がその対象になるのでしょう)に対する優越感が脅かされると感情的に反発する一方、大中華の中国に対しては、かつてのように全面的に従属することはないにせよ、経済的・軍事的影響力を増すばかりの隣人の存在感に気圧されて、「従中卑日」作戦・・・中国と同じ価値観・歴史観を表明して、一緒になって日本を叩くことで、自己の立場を少しでも優位に保って来ましたが、ここに来て、中国の覇権主義が露わになり、「中国の領土にかける野心が過ぎれば“反中連帯”を加速する」などといった過激な社説が見られるようになったようです(先ほどの鈴置氏による)。離れ孤島の日本はともかく、地続きの韓国には舵取りが難しい時代になりました。
なお、領土問題は、同じ“中国”人としての一体感を醸成するよい機会とばかり、中国は、尖閣諸島の領有権を主張する台湾に対して、共闘を呼び掛けていますし、本土離れが進む香港に対しても同様のようです。しかし、中国とは違い、台湾や香港で、過激な反日行動が見られることはありませんでした。象徴的なのは、台湾で、日本製品を買わなかったり日本への旅行を取り止めたりするような行動は取らない人が三分の二近い多数派を占める一方、政府に対する不満は根強く、「馬英九政権は対応が軟弱」「政府は強硬な態度で領土を守るべき」などと回答する人は過半数を越えるそうです。台湾では、消費者としては中国よりも数段成熟し、あるいは中国より親日的であるが故に日本への非難に向かわない一方、愛国心という点では、中国と大同小異と見受けられます。こうして見ると、同じ“中国”系の民族でありながら、暴徒化した中国の特異性が浮かび上がります。法治国家ではないこと、反日教育や情報統制が行われていること、経済格差や汚職の横行や若者の就職難などの社会問題を内在し、民衆の不満は爆発寸前であること、こうしたことが背景にあると思わざるを得ません。
実は近隣のロシアも、中国に対しては微妙で、軍事的影響力を警戒しています。なにしろ昨年の中国の軍事費1430億ドルはロシアの約2倍にものぼるそうです。ロシア・極東連邦管区の人口が600万人強なのに対し、隣接する中国・黒竜江省の人口は3800万人と圧倒的で、経済面で強まる対中依存が安全保障面にも影響を及ぼしかねないことを懸念するロシア政府は、日本やアメリカとのバランスを取ろうと、こちらも微妙な舵取りを行っている模様です。
もはや領土問題そのものは、日・中双方が譲り合えるような状況にはありません。日本が取り得る道は、韓国や台湾・香港、ロシア、さらに今日は触れなかった東南アジア諸国など、この地域で利害関係が錯綜している現実を理解し、日・中という直接の当事者だけではなく、東アジアや東南アジアを(場合によってはアメリカも)含む規模で考えること、また領土問題というシングル・イシューではなく、資源開発や経済など、一つ上の次元に立って解決の道筋を探すこと、しかし領土問題において決して妥協しないという軸のぶれない対応が肝要と思います。