連日のように続いた軍用機と思われる轟音は、何を警戒?偵察?していたのか、今宵は響かず至って静かで却って物足りないと思ったりする(笑)。北朝鮮情勢について、国連安保理の特別会合は11日に結論を目指すようだが、どうにも手詰まり状態のように思われる。アメリカの追加制裁決議案が今日の日経・夕刊に出ていたが、金正恩委員長の資産凍結・渡航禁止はともかくとして、石油の全面禁輸や北朝鮮からの労働者受け入れ禁止や繊維製品の禁輸など、「最強の制裁」(米国のヘイリー国連大使)と自画自賛しているようだが、「北朝鮮の生命線を握るエネルギーと外貨の獲得手段を断つ狙い」(日経)であって、中国やロシアに受け入れられるとは思えないからだ。
数日前の産経電子版に「中国はなぜ石油禁輸に反対するのか…5つの理由」と題する記事が興味深かったので、振り返ってみる。
(1)北朝鮮向けの原油には、ろうそくの原料のパラフィンが多く含まれている。送油を一定期間止めてしまうと凝結し管が詰まるという。
(2)北朝鮮にとって生命線といえる原油・石油製品の供給がストップすれば、経済へのダメージも甚大。社会混乱、政権崩壊につながりかねない。中国としては、①大量の難民が中国に押し寄せる、②親米政権が誕生する、事態は断じて受け入れられない。
(3)生命線を断たれた北朝鮮の金正恩政権が暴発する可能性もある。供給停止で中朝関係は最悪の状況に陥っているはずで、北のミサイルが北京に飛んでこないとも限らない。
(4)中国が原油・石油製品の供給を停止したとしても、ロシアが秘密裏に供給し続ける可能性がある。その場合、北朝鮮との関係を悪化させた中国だけが損をすることになる。実際、ロシアの北朝鮮への石油輸出は急増している。
(5)中国にとって石油の禁輸措置は北朝鮮に圧力をかけられる最大のカードであり、それを使っても効果がなかった場合、北朝鮮へ影響力を行使できる手段を全て失うことになる。
ロシアは、冷戦時代こそ経済力や軍事力で中国を圧倒していたが、今や経済力では完全に逆転され、辛うじて軍事的に虚勢を張れるだけだ。それでもプーチン大統領はこの極東地域で存在感を示そうと虎視眈々と狙っているから、上記(4)の線は無視できない。(1)はともかく、(2)や(3)はかねてより懸念されるところで、軍事オプションをとる場合にも似たような問題に直面する。以前ブログでも触れたように、軍事衝突にせよ経済制裁強化にせよ、その後の秩序観(あるいはその方向感)について米・中にそれなりの合意が必要なはずなのだ(春の米中首脳会談で、朝鮮は昔、中国の一部だった、などと習近平国家主席が歴史観を披露した話が洩れ伝わって、韓国が反発したことがあったが、この文脈での話だろう)。仮に統一朝鮮半島が実現するとき、中国東北部の高句麗があった地域が統一朝鮮半島の領土だと主張されるのは、中国には受け入れられないといった歴史的な話も(なかなか表に出て来ないが)あるらしいし、朝鮮族が統一するとなれば、中国にとってクリティカルな他の少数民族問題に火を点けかねない懸念も指摘されて来たことで、そんなこんなで中国が、緩衝国としての北朝鮮という地位を諦める(統一朝鮮半島を許す)ことが出来るとは思えない。そしてやはり重要だと思うのが(5)のポイントだ。中国は石油の供給によって(何をしでかすか分かったものではない若大将を頭に担ぐ)北朝鮮の生殺与奪の権を握っているわけで、これをやすやすと手放すとは思えない。何より中国は5年振りの党大会を控え、10月18日まで事を荒立てたくないだろう。
次の一手として軍事衝突を望む者はいないし、北朝鮮がアメリカに核弾頭を運べる大陸間弾道弾を完成するまでまだ半年や一年はのらりくらりとかわし続けるであろう(従いアメリカとの交渉のテーブルにつかないだろう)ことを思うと、何らかの制裁強化でもやらないことには、トランプ大統領のメンツも立たない。私のような単純な人間は八方塞とはこういうことを言うのだろうとつい諦めてしまうが、そうすると徒に時間ばかり過ぎて北朝鮮を利することになる。果たして誰もが納得するような妙案を紡ぎ出すことが出来るだろうか。
数日前の産経電子版に「中国はなぜ石油禁輸に反対するのか…5つの理由」と題する記事が興味深かったので、振り返ってみる。
(1)北朝鮮向けの原油には、ろうそくの原料のパラフィンが多く含まれている。送油を一定期間止めてしまうと凝結し管が詰まるという。
(2)北朝鮮にとって生命線といえる原油・石油製品の供給がストップすれば、経済へのダメージも甚大。社会混乱、政権崩壊につながりかねない。中国としては、①大量の難民が中国に押し寄せる、②親米政権が誕生する、事態は断じて受け入れられない。
(3)生命線を断たれた北朝鮮の金正恩政権が暴発する可能性もある。供給停止で中朝関係は最悪の状況に陥っているはずで、北のミサイルが北京に飛んでこないとも限らない。
(4)中国が原油・石油製品の供給を停止したとしても、ロシアが秘密裏に供給し続ける可能性がある。その場合、北朝鮮との関係を悪化させた中国だけが損をすることになる。実際、ロシアの北朝鮮への石油輸出は急増している。
(5)中国にとって石油の禁輸措置は北朝鮮に圧力をかけられる最大のカードであり、それを使っても効果がなかった場合、北朝鮮へ影響力を行使できる手段を全て失うことになる。
ロシアは、冷戦時代こそ経済力や軍事力で中国を圧倒していたが、今や経済力では完全に逆転され、辛うじて軍事的に虚勢を張れるだけだ。それでもプーチン大統領はこの極東地域で存在感を示そうと虎視眈々と狙っているから、上記(4)の線は無視できない。(1)はともかく、(2)や(3)はかねてより懸念されるところで、軍事オプションをとる場合にも似たような問題に直面する。以前ブログでも触れたように、軍事衝突にせよ経済制裁強化にせよ、その後の秩序観(あるいはその方向感)について米・中にそれなりの合意が必要なはずなのだ(春の米中首脳会談で、朝鮮は昔、中国の一部だった、などと習近平国家主席が歴史観を披露した話が洩れ伝わって、韓国が反発したことがあったが、この文脈での話だろう)。仮に統一朝鮮半島が実現するとき、中国東北部の高句麗があった地域が統一朝鮮半島の領土だと主張されるのは、中国には受け入れられないといった歴史的な話も(なかなか表に出て来ないが)あるらしいし、朝鮮族が統一するとなれば、中国にとってクリティカルな他の少数民族問題に火を点けかねない懸念も指摘されて来たことで、そんなこんなで中国が、緩衝国としての北朝鮮という地位を諦める(統一朝鮮半島を許す)ことが出来るとは思えない。そしてやはり重要だと思うのが(5)のポイントだ。中国は石油の供給によって(何をしでかすか分かったものではない若大将を頭に担ぐ)北朝鮮の生殺与奪の権を握っているわけで、これをやすやすと手放すとは思えない。何より中国は5年振りの党大会を控え、10月18日まで事を荒立てたくないだろう。
次の一手として軍事衝突を望む者はいないし、北朝鮮がアメリカに核弾頭を運べる大陸間弾道弾を完成するまでまだ半年や一年はのらりくらりとかわし続けるであろう(従いアメリカとの交渉のテーブルにつかないだろう)ことを思うと、何らかの制裁強化でもやらないことには、トランプ大統領のメンツも立たない。私のような単純な人間は八方塞とはこういうことを言うのだろうとつい諦めてしまうが、そうすると徒に時間ばかり過ぎて北朝鮮を利することになる。果たして誰もが納得するような妙案を紡ぎ出すことが出来るだろうか。