風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

北とアントニオ猪木

2017-09-11 23:01:40 | 時事放談
 北朝鮮を訪問していたアントニオ猪木参院議員が帰国の途に就いたようだ。
 時事によると、9日の建国記念日に合わせて北朝鮮から招待を受けていたらしい。朝鮮労働党で国際部門を統括する李副委員長(朝日友好親善協会の顧問も務める)と会談したが、「最後の目標まで(核・ミサイル)開発を続ける」と語っていたという。政府が対北朝鮮制裁の一環として全ての国民に渡航自粛を要請しているときに、足並みを乱すかのように堂々と北朝鮮を訪問して、「政治家失格だ」といった厳しい意見もある中、かつて果敢に相手の懐に飛び込むプロレス・スタイルを彷彿とさせるようなフットワークの良さで、私自身は必ずしもネガティブに見ていない(何を隠そう、子供の頃は大のプロレス・ファン、アントニオ猪木のファンだった・・・)。
 このアントニオ猪木氏の行動力に対するネットの反応を見ていると、皆さん発想豊かで実に面白い。茶化すつもりは毛頭なく、以下に印象に残ったものを引用すると・・・

 ・9/9に発射予定のミサイルを止めてるのは、この方かもしれないですね(^.^)
 ・今、猪木がICBMに卍固めを掛けて止めています
 ・猪木さんがいようともいないともやるときはやるし、やらないときはやらない。
 ・懲りないなぁ…(-_-;)
 ・怖いもの知らずだな。私がなりたいタイプの人間だ...。
 ・金正恩にビンタお願い致します。
 ・そこまで猪木を批判する気になれない。他の政治家は何やってんだ。

 北朝鮮とアントニオ猪木氏と言えば、彼自身のプロレスラーとしての名声に加え、在日朝鮮人だった祖国の大スター・力道山の愛弟子という親しさもあって、北朝鮮で「切手」になったこともあるほどの人気者らしい。猪木氏は今回の訪問について「恒例の人的交流だ」と説明するとともに、「いろいろな考え方があるが、私はたたかれようが何しようが関係ない」とも述べ、長年かけて築いた北朝鮮側とのパイプを維持する考えを示した(産経新聞電子版)という。
 北朝鮮ばかりでない。猪木氏は、昨年亡くなったキューバのフィデル・カストロ前議長とも20年以上も交流を続けてきたというし、古くは湾岸戦争時、イラクで日本人46人が人質となったときに、サダム・フセイン大統領(当時)と交渉して全員救出したのは、外務省でも時の政府でもなく猪木氏だったというのは語り草だ。
 しかし北朝鮮の金正恩書記長ばかりは、誰が何と言おうと(何しろ国家の存続が、すなわち自分の首が掛かっているのだから)核とミサイル開発に執着して、さすがの(?)猪木氏でも、どうにもならない。昨年も同時期に訪朝したらしいが、滞在中に5回目の核実験が行われた。それでも何故、北朝鮮問題に関わり続けるのかと問われて、かつて、次のように答えている(プレジデント誌 2014年2月3日号)。

 大好きな言葉の一つに「何にもしないで生きるより、何かを求めて生きようよ」がありますが、その心境です。人がやらない何かにチャレンジする、猪木にしかできないことに挑戦していくということです。1976年、当時のボクシング世界ヘビー級チャンピオンであるモハメド・アリと戦ったことがあります(「格闘技世界一決定戦」)。今になって伝説の名勝負と言われていますが、当時は全然評価されなかった。私の歴史を振り返ると、行動を起こした直後はものすごく批判を浴びる。でも結果として形になっていく。私自身ブラジル移民で、力道山にスカウトされて日本に帰ってきたときから、ひどいことを言われ続けてきました。プロレスそのものだって、ずっと蔑視され、差別を受けてきた歴史があるのです。だから「てめえら、今に見ていろよ」みたいな、いつも燃えるものが私の心にあって、それは生涯変えようがないのかなと思う。

 そのほか、ネットで彼の語録を拾ってみた(順不同)。

 「俺が持っている(北朝鮮の)人脈っていうのは、すぐにトップにつながる」
 「ここまで北朝鮮とのパイプを作れたわけだから、どうにかこれをもっと有効的に動かせないか」
 「政治には権謀術数も必要だと思っている。北朝鮮、韓国、日本の三国間で外交展開する場合、力道山を政治的に利用したり、俺のような存在をうまく使うことも戦術の一つになる」
 「きれいごとばかりじゃなく、善も悪も含め、清濁併せ呑んで行動していかなければ、外交にしても交渉ごとにして、けっしてうまくいかないんだ」
 「別に北朝鮮の太鼓持ちをやるつもりはないが、日本が偏見を持って北朝鮮を見ている。そんな日本はおかしいと思われても仕方ない状況に来ている」
 「話し合いができる環境づくりを、と思って、俺は回を重ねる毎に現地に行き、メディアを通してそう言ってる」

 詳細に見て行けばいろいろ問題もあるのだろうが、ここまで信念がある政治家が、昨今、珍しいと思われるだけに、なかなか貴重だと思うのである。あからさまに日本国政府の方針や理念に逆らってはマイナスだが、やや危なっかしいところがあるものの重層的な関係を築くことは必ずしもマイナスではないようにも思うのである。
コメント
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