前回ブログで触れたように、十年一日どころか二十五年も変わらない日本の政局とメディアの状況と比べれば、国連総会でのトランプ大統領の演説や、その前後のアメリカと北朝鮮の非難の応酬は刺激的で、つい惹き込まれてしまった。とは言っても、国連総会ともなれば格調高いと思いきや、トランプ大統領の子供じみた挑発が際立って、正視に耐えない、目を覆い(耳を塞ぎ)たくなるほど異様だった。
トランプ大統領が北朝鮮やイランを「ならずもの体制だ」と指摘したのは、ブッシュ・ジュニア大統領も似たようなものだったが、北朝鮮の金正恩体制について、「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と述べ、北朝鮮の核・弾道ミサイルは金体制の崩壊につながると警告、「米国はあらゆる手段を講じて自国と同盟国を防衛する」と言明するとともに、もし軍事攻撃に踏み切る事態となれば「北朝鮮は完全に破壊される」とまで言い放ったという(このあたりは産経新聞電子版による)。「完全破壊」に言及したときには、さすがに議場からどよめきが起こり、北朝鮮の国連大使は抗議の退席をしたらしい。
それだけではない。とうとう金正恩本人をひっぱり出してしまった。トランプ演説を非難する声明を、北朝鮮の国家最高位である国務委員長名義で、党中央委員会庁舎で発表したというのである。「トランプが(と呼び捨てにして)世界の面前で私と国家の存在自体を否定して侮辱し、わが共和国をなくすという歴代で最も暴悪な宣戦布告をしてきた以上、我々もそれに見合う史上最高の超強硬対応措置断行を慎重に考慮する」、「朝鮮民主主義人民共和国を代表する者として、わが国家と人民の尊厳と名誉、そして私自身の全てを懸け、わが共和国の絶滅を喚いた米国統帥権者の妄言に代価を支払わせる」、「トランプが何を考えようが、それ以上の結果を目の当たりにすることになろう」、「米国の老いぼれの狂人を必ず火で罰するであろう」などと主張したらしい。トランプ大統領に負けず劣らず激しい言葉だが、まだ冷静で余程抑制が効いている。特に「超強硬対応措置断行を“慎重に考慮する”」と言ったあたりは、腰が引けているようにも見える。しかし祖父の金日成主席も、父の金正日総書記も、最高指導者名義で声明を出したことはなく、米国への最大の警告とみられている。
(トランプ大統領の子守り役である)マティス国防長官は、トランプ演説の後、「われわれは北朝鮮情勢に(国連安保理などの)国際プロセスを通じて対処しており、今後も続ける」、「ティラーソン国務長官がこのような取り組みを主導している。外交的手段によって解決されることを望む」とフォローしたが、実はトランプ演説の前日(18日)、北朝鮮への軍事的選択肢に関し、韓国の首都ソウルを北朝鮮の報復で「重大な危険」に陥らせることのない軍事的手段があると記者団に明かしたという(作戦の詳細について言及することは控えたらしいが)。「Mad Dog」と呼ばれた歴戦の海兵隊・指揮官である。「狂犬」と直訳するのは間違いで、「荒くれ者」と訳すのが妥当と言われるが、ビジネスマン出身のコケオドシと違って迫力がある。金正恩委員長は、トランプ演説よりもむしろマティス発言に敏感に反応したのではないだろうか。
かつてベトナム戦争の頃、ニクソン副大統領(当時)は北ベトナムのホーチミン国家主席に対し、戦線拡大の脅しをかけて、「何をするか分からない」という恐怖感を与えて、和平交渉に引き出そうとした。所謂「Madman Theory」である。トランプ大統領も「何をするか分からない」不確実性が大いに懸念されているが、些か滑稽なハリボテのMadman風情で、ニクソンの「Madman Theory」に比すならば「Mad Dog Theory」の方ではないかと思ったりする・・・
トランプ大統領が北朝鮮やイランを「ならずもの体制だ」と指摘したのは、ブッシュ・ジュニア大統領も似たようなものだったが、北朝鮮の金正恩体制について、「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と述べ、北朝鮮の核・弾道ミサイルは金体制の崩壊につながると警告、「米国はあらゆる手段を講じて自国と同盟国を防衛する」と言明するとともに、もし軍事攻撃に踏み切る事態となれば「北朝鮮は完全に破壊される」とまで言い放ったという(このあたりは産経新聞電子版による)。「完全破壊」に言及したときには、さすがに議場からどよめきが起こり、北朝鮮の国連大使は抗議の退席をしたらしい。
それだけではない。とうとう金正恩本人をひっぱり出してしまった。トランプ演説を非難する声明を、北朝鮮の国家最高位である国務委員長名義で、党中央委員会庁舎で発表したというのである。「トランプが(と呼び捨てにして)世界の面前で私と国家の存在自体を否定して侮辱し、わが共和国をなくすという歴代で最も暴悪な宣戦布告をしてきた以上、我々もそれに見合う史上最高の超強硬対応措置断行を慎重に考慮する」、「朝鮮民主主義人民共和国を代表する者として、わが国家と人民の尊厳と名誉、そして私自身の全てを懸け、わが共和国の絶滅を喚いた米国統帥権者の妄言に代価を支払わせる」、「トランプが何を考えようが、それ以上の結果を目の当たりにすることになろう」、「米国の老いぼれの狂人を必ず火で罰するであろう」などと主張したらしい。トランプ大統領に負けず劣らず激しい言葉だが、まだ冷静で余程抑制が効いている。特に「超強硬対応措置断行を“慎重に考慮する”」と言ったあたりは、腰が引けているようにも見える。しかし祖父の金日成主席も、父の金正日総書記も、最高指導者名義で声明を出したことはなく、米国への最大の警告とみられている。
(トランプ大統領の子守り役である)マティス国防長官は、トランプ演説の後、「われわれは北朝鮮情勢に(国連安保理などの)国際プロセスを通じて対処しており、今後も続ける」、「ティラーソン国務長官がこのような取り組みを主導している。外交的手段によって解決されることを望む」とフォローしたが、実はトランプ演説の前日(18日)、北朝鮮への軍事的選択肢に関し、韓国の首都ソウルを北朝鮮の報復で「重大な危険」に陥らせることのない軍事的手段があると記者団に明かしたという(作戦の詳細について言及することは控えたらしいが)。「Mad Dog」と呼ばれた歴戦の海兵隊・指揮官である。「狂犬」と直訳するのは間違いで、「荒くれ者」と訳すのが妥当と言われるが、ビジネスマン出身のコケオドシと違って迫力がある。金正恩委員長は、トランプ演説よりもむしろマティス発言に敏感に反応したのではないだろうか。
かつてベトナム戦争の頃、ニクソン副大統領(当時)は北ベトナムのホーチミン国家主席に対し、戦線拡大の脅しをかけて、「何をするか分からない」という恐怖感を与えて、和平交渉に引き出そうとした。所謂「Madman Theory」である。トランプ大統領も「何をするか分からない」不確実性が大いに懸念されているが、些か滑稽なハリボテのMadman風情で、ニクソンの「Madman Theory」に比すならば「Mad Dog Theory」の方ではないかと思ったりする・・・