風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

中国経済のあやうい本質

2013-01-18 23:53:17 | ビジネスパーソンとして
 昨日の日経新聞に面白い統計データが紹介されていました。OECD(経済協力開発機構)とWTO(世界貿易機関)が公表した「付加価値貿易統計」のことです。日経では、こう説明しています。例えば、日本から中国に60ドル相当の部品を輸出し、中国で完成させて100ドル(40ドル分の価値増)で最終消費地の米国に渡った場合、日本が60ドル、中国が40ドル、それぞれ米国に輸出したと計算される、と。そうだとすると、どの国で生み出された付加価値が、どの国で最終消費されたかが分かる、非常に腑に落ちる統計データと言えそうです。
 これによると、2009年の実績ですが、日本の最大の輸出相手国は米国で、全体の19%を占め、従来の統計では首位だった中国(全体の24%)は、付加価値で見ると2位(全体の15%)に下がるそうです。また、貿易黒字は、中・韓向けでは殆どなくなってしまい、米国向けで360億ドルと、6割も増えたそうです。
 中国は「世界の工場」と言われて久しいですが、かつて、英国やドイツや米国や日本が「世界の工場」だと言われた時とは全く様相が違います。これらの国々で工場生産の主軸となっていたのは、いずれもそれぞれの国の企業群でしたが、今の中国で工場生産を主に担っているのは外資系企業であり、素材やキー・コンポーネントを輸入して組み立てるだけの「下請け工場」に過ぎないことが、この付加価値統計によって裏付けられたと言えるのではないでしょうか。いみじくも浜矩子さんが「中国経済 あやうい本質」(集英社新書)の中で述べておられたように、「中国が世界の工場になったのではなく、世界が中国を工場にしている」のが実態です。そこで中国人が手掛けていることは、設計・開発や、生産技術や生産計画といったノウハウの厚みがない、安い労働力によって「組み立てる」だけの薄っぺらな付加価値でしかありません。まさに「あやうい本質」と言えないでしょうか。
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