今朝の日経「追跡 ニュースの現場」というコラムは、「銅鑼湾書店」事件のその後を追跡しており、興味深く読んだ。中国共産党内の権力闘争やスキャンダルなど、中国本土では販売が禁じられている「発禁本」を扱う出版社・巨流伝媒が経営する同書店の株主や従業員ら5人が、2015年秋以降、次々と失踪し、営業休止に追い込まれた事件だ。今も看板は出ているが、書店の扉は閉じられたままである。
あのとき、友人を訪ねるため広東省深センに入ったところで専案組(特別捜査班)を名乗る当局者に捕えられ、その後8ヶ月間にわたって拘束されたという店長の林栄基氏は、小さな部屋で24時間監視され、発禁本の情報源や中国本土にいる顧客情報を明かすよう迫られたと言う。更に翌16年初めに、中国政府の息がかかるメディアが流した「自白映像」は、当局が作った台本を読み上げるよう強制されたものだったと言う。そして6月、書店の顧客リストを持ち帰ることを条件に香港に一時戻ることを許された林氏は、監視の目を振り切り、香港の民主派議員の事務所に駆け込んで、同日夜、中国当局による拘束の実態を暴露する記者会見を開いたのだった。
しかし事件はまだ終わっておらず、株主の桂民海氏は中国当局に拘束されたままらしいし、香港に戻った李波氏ら書店関係者3人は、中国本土に親族がいるため、口をつぐんだままで、林氏も敢えて接触していないという。銅鑼湾の同業他社によると、16年の発禁本の売上は3~4割減少し、顧客の9割を占める中国本土の旅行者からは「監視カメラはないか」「税関で見つかると、ひどい目に遭わないか」と心配する声が増えたという。
今年7月で20年を迎える香港返還から50年間は、社会主義政策を実施せず一国二制度を維持するなど高度な自治を保障したはずだったが、その香港に迫る中国大陸への同化の圧力と、英国(ひいては国際社会)の(如何に憤り、反発したとしても)無力さ加減は、中国の本質と国際社会の力学を映す鏡として、甚だ興味深い(などと呑気なことを言っておれないのだが・・・)。既に2014年11月、駐英中国公使は、超党派の英議員代表団の香港訪問受け入れを拒否すると通告した際、香港返還を約した1984年の「中英共同宣言」は「今は無効」との見解を伝えており、以来、中国としては勝手ながら「内政問題」化してしまったのかも知れない。日本の歴史教科書の記述すら「内政問題」化して憚らない中国である。その後、行政長官と立法会(議会)の議員選出を巡って、「最終的に普通選挙」を明記した香港基本法を無視し、民主派の立候補を事実上認めない中国大陸に対して香港の若者の反発が広がり、雨傘革命と呼ばれる事態に至ったのは記憶に新しい。
そもそも一国二制度は、将来の台湾統一工作のカギと考え、鄧小平氏が先行して香港で実験したものだったはずだ。その点からも、中国は(ルトワック氏が言うように)戦略的ではないのかも知れない。その証拠に、先の日経記事は、林氏が香港の民主運動家らと協力して台湾に新しい「銅鑼湾書店」を今年後半に開く準備を進めていると伝え、林氏の次の言葉で結んでいる。「書店は民主の種をまく手段になるし、抵抗のシンボルでもある。かつて銅鑼湾書店がそうだったように」 中国は全てが内政問題に起因する。香港のことなどなりふり構っていられない中国の内政は、最大の核心的利益であるはずの台湾さえ目に入らないほど、緊迫しているのだろう。香港と台湾の民主制と独立を見守りたい。
あのとき、友人を訪ねるため広東省深センに入ったところで専案組(特別捜査班)を名乗る当局者に捕えられ、その後8ヶ月間にわたって拘束されたという店長の林栄基氏は、小さな部屋で24時間監視され、発禁本の情報源や中国本土にいる顧客情報を明かすよう迫られたと言う。更に翌16年初めに、中国政府の息がかかるメディアが流した「自白映像」は、当局が作った台本を読み上げるよう強制されたものだったと言う。そして6月、書店の顧客リストを持ち帰ることを条件に香港に一時戻ることを許された林氏は、監視の目を振り切り、香港の民主派議員の事務所に駆け込んで、同日夜、中国当局による拘束の実態を暴露する記者会見を開いたのだった。
しかし事件はまだ終わっておらず、株主の桂民海氏は中国当局に拘束されたままらしいし、香港に戻った李波氏ら書店関係者3人は、中国本土に親族がいるため、口をつぐんだままで、林氏も敢えて接触していないという。銅鑼湾の同業他社によると、16年の発禁本の売上は3~4割減少し、顧客の9割を占める中国本土の旅行者からは「監視カメラはないか」「税関で見つかると、ひどい目に遭わないか」と心配する声が増えたという。
今年7月で20年を迎える香港返還から50年間は、社会主義政策を実施せず一国二制度を維持するなど高度な自治を保障したはずだったが、その香港に迫る中国大陸への同化の圧力と、英国(ひいては国際社会)の(如何に憤り、反発したとしても)無力さ加減は、中国の本質と国際社会の力学を映す鏡として、甚だ興味深い(などと呑気なことを言っておれないのだが・・・)。既に2014年11月、駐英中国公使は、超党派の英議員代表団の香港訪問受け入れを拒否すると通告した際、香港返還を約した1984年の「中英共同宣言」は「今は無効」との見解を伝えており、以来、中国としては勝手ながら「内政問題」化してしまったのかも知れない。日本の歴史教科書の記述すら「内政問題」化して憚らない中国である。その後、行政長官と立法会(議会)の議員選出を巡って、「最終的に普通選挙」を明記した香港基本法を無視し、民主派の立候補を事実上認めない中国大陸に対して香港の若者の反発が広がり、雨傘革命と呼ばれる事態に至ったのは記憶に新しい。
そもそも一国二制度は、将来の台湾統一工作のカギと考え、鄧小平氏が先行して香港で実験したものだったはずだ。その点からも、中国は(ルトワック氏が言うように)戦略的ではないのかも知れない。その証拠に、先の日経記事は、林氏が香港の民主運動家らと協力して台湾に新しい「銅鑼湾書店」を今年後半に開く準備を進めていると伝え、林氏の次の言葉で結んでいる。「書店は民主の種をまく手段になるし、抵抗のシンボルでもある。かつて銅鑼湾書店がそうだったように」 中国は全てが内政問題に起因する。香港のことなどなりふり構っていられない中国の内政は、最大の核心的利益であるはずの台湾さえ目に入らないほど、緊迫しているのだろう。香港と台湾の民主制と独立を見守りたい。
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