日本では犬も食わないとされる夫婦喧嘩で、自らの正当性を街頭に出て聴衆に訴えるのが中国や韓国流である。それを聞かされたイギリスはどんな思いだったであろうか。習近平国家主席は、イギリス議会での演説に続き、公式晩餐会の挨拶でも、第二次世界大戦における「日本の残虐性」に言及したらしい。イギリスと中国は、正義のために助け合い、日本の侵略に抗してともに戦った、というわけだ。
中国シフトを強めるキャメロン政権に対して、「中国との原子力協力はイギリスの安全保障を脅かす」「中国に仕事を奪われる」「人権侵害や強権体制に目を向けるべきだ」といった声が上がり、実際に鉄鋼会社の1200人が失業し中国製鉄鋼のダンピングに批判が集中しようが、習氏夫妻が滞在する宮殿周辺で人権団体が中国当局によるチベット族弾圧を批判し、逮捕されている人権派弁護士たちの釈放を求めて抗議活動を行おうが、さらに中国の人権問題に批判的なチャールズ皇太子が公式晩餐会を欠席しようが、そういった末節には目をつぶるほど、中国の経済力は魅力に映るようだ。一説では、中国の対英投資は、今後10年間でエネルギーや運輸などの分野を中心に総額1440億ポンド(約26兆円)に上るという。習氏夫妻はエリザベス英女王の国賓としてバッキンガム宮殿に宿泊し、ウィリアム王子による先の訪中に同行しなかったキャサリン妃も習氏を歓迎する晩餐会に出席したという。かつて7つの海を支配したと言われる大英帝国も、中華帝国の軍門に下ったかのような歓待ぶりである。
中国では、こうした英国の対応が余程嬉しいらしい。中国共産党機関紙人民日報系の環球時報は、16日、習近平国家主席の訪英に関連した社説で「欧州に対する中国の影響力は上昇し続けており、中欧関係に変化が生じている」と分析し、英国を含む欧州各国が中国の人権問題に対する批判を抑えていることを評価したという。産経Webの記事の続きを引用する。
(引用)
社説は、2012年にキャメロン英首相がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世とロンドンで会談したのを受けて「中国は英国を冷遇して懲らしめた」と指摘。その後、英国の対中批判が薄まった上、中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に「欧州で率先して参加を申請した」と対中姿勢の変化を歓迎した。
また「英国は落ちぶれているが、米国をはじめとした西側社会への影響力はなお大きい」と指摘。習氏の訪英を、西側社会に中国の価値観を植え付ける機会にするべきだと主張した。
(引用おわり)
さらに、習近平国家主席は、18日に配信されたロイター通信との書面インタビューで、英国が中国と経済関係を強化しているのは「先見性のある戦略的な選択だ」と称賛し、他国も見習うべきとの考えを示したという。英国議会演説では「人民のための政治や法による統治という概念は、古代中国で誕生した」とも述べ、議会制民主主義発祥の英国の議会演説で、大した自信であるが、さすがに英紙は「習氏は、英国による民主主義の講義を受けるつもりはないとの強い姿勢を示した」と(イヤミっぽく?)伝えたという(いずれも産経Webによる)。
中国の面白いところは、その伝統的な革命思想に照らして、とにかく自らの統治の正統性を訴えたいものらしい。日本では実証的であるべきと考える歴史も、中国ではただのプロパガンダになる。抗日70年の軍事パレードで習近平国家主席が眠たげで冴えない表情をしていたのは、暗殺を恐れて前夜一睡も出来なかったからではないかと揶揄されていたが、そうであればこそ、かつての大英帝国にこれ以上のないおもてなしを受け、まさにわが世の春のはしゃぎようは、なんともカワイイ。イギリスの老獪な現実主義はともかくとして、中国の対外政策は果たして戦略的なのかどうか。実に不思議な国である。
中国シフトを強めるキャメロン政権に対して、「中国との原子力協力はイギリスの安全保障を脅かす」「中国に仕事を奪われる」「人権侵害や強権体制に目を向けるべきだ」といった声が上がり、実際に鉄鋼会社の1200人が失業し中国製鉄鋼のダンピングに批判が集中しようが、習氏夫妻が滞在する宮殿周辺で人権団体が中国当局によるチベット族弾圧を批判し、逮捕されている人権派弁護士たちの釈放を求めて抗議活動を行おうが、さらに中国の人権問題に批判的なチャールズ皇太子が公式晩餐会を欠席しようが、そういった末節には目をつぶるほど、中国の経済力は魅力に映るようだ。一説では、中国の対英投資は、今後10年間でエネルギーや運輸などの分野を中心に総額1440億ポンド(約26兆円)に上るという。習氏夫妻はエリザベス英女王の国賓としてバッキンガム宮殿に宿泊し、ウィリアム王子による先の訪中に同行しなかったキャサリン妃も習氏を歓迎する晩餐会に出席したという。かつて7つの海を支配したと言われる大英帝国も、中華帝国の軍門に下ったかのような歓待ぶりである。
中国では、こうした英国の対応が余程嬉しいらしい。中国共産党機関紙人民日報系の環球時報は、16日、習近平国家主席の訪英に関連した社説で「欧州に対する中国の影響力は上昇し続けており、中欧関係に変化が生じている」と分析し、英国を含む欧州各国が中国の人権問題に対する批判を抑えていることを評価したという。産経Webの記事の続きを引用する。
(引用)
社説は、2012年にキャメロン英首相がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世とロンドンで会談したのを受けて「中国は英国を冷遇して懲らしめた」と指摘。その後、英国の対中批判が薄まった上、中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に「欧州で率先して参加を申請した」と対中姿勢の変化を歓迎した。
また「英国は落ちぶれているが、米国をはじめとした西側社会への影響力はなお大きい」と指摘。習氏の訪英を、西側社会に中国の価値観を植え付ける機会にするべきだと主張した。
(引用おわり)
さらに、習近平国家主席は、18日に配信されたロイター通信との書面インタビューで、英国が中国と経済関係を強化しているのは「先見性のある戦略的な選択だ」と称賛し、他国も見習うべきとの考えを示したという。英国議会演説では「人民のための政治や法による統治という概念は、古代中国で誕生した」とも述べ、議会制民主主義発祥の英国の議会演説で、大した自信であるが、さすがに英紙は「習氏は、英国による民主主義の講義を受けるつもりはないとの強い姿勢を示した」と(イヤミっぽく?)伝えたという(いずれも産経Webによる)。
中国の面白いところは、その伝統的な革命思想に照らして、とにかく自らの統治の正統性を訴えたいものらしい。日本では実証的であるべきと考える歴史も、中国ではただのプロパガンダになる。抗日70年の軍事パレードで習近平国家主席が眠たげで冴えない表情をしていたのは、暗殺を恐れて前夜一睡も出来なかったからではないかと揶揄されていたが、そうであればこそ、かつての大英帝国にこれ以上のないおもてなしを受け、まさにわが世の春のはしゃぎようは、なんともカワイイ。イギリスの老獪な現実主義はともかくとして、中国の対外政策は果たして戦略的なのかどうか。実に不思議な国である。
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