「ルパン三世」の次元大介役を務めた声優の小林清志さんが7月30日に肺炎のため亡くなっていたことが判明した。享年89。
小林さんは、1971年のテレビアニメシリーズ放送開始から50年にわたって次元役を演じて来られたが、昨年10月放映の「ルパン三世 PART6」の第一話「EPISODE 0 ―時代―」を最後に降板され、後任の大塚明夫氏(父上の大塚周夫氏は、初代・石川五ェ門役の声優)に引き継がれていた。その時、次のようなメッセージを残されている。「次元はそんじょそこらの悪党とは違うぞ。江戸のイキというもんだ。変な話だが、次元は江戸っ子だ。明夫ちゃん、これは難しいぞ。雰囲気はJAZZにも似ているんだ。最後にこれまで応援してくれた人たちにお礼を申し上げる。ありがとうございました。ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。あばよ」
「ルパン三世」は私にとって特別な存在である。小学校6年の時の担任の教師が「ルパン三世」の大ファンで、私は見ていなかったが、授業中の雑談で屡々語られたものだから、気になっていた。中学生になって、本屋でたまたま見つけたコミックを生まれて初めて買って読んでみると、これが滅法面白い。劇画のタッチは凡そ日本人らしくなく軽妙洒脱で、内容は凡そ子供向きではなくニヒルでセクシー。結局、小遣いをはたいて10数冊のシリーズを買うほどに熱中した。コミックでは「粋でいなせな大泥棒」と銘打たれたルパン三世は、テレビ・アニメでは明るく憎めないコメディー・キャラで、世界を股にかけて活躍する大泥棒となって、私にとっては忘れられない「大阪万国博覧会」と「日立ドキュメンタリー すばらしい世界旅行」という30分の紀行番組と並んで、私の目を世界に見開かせてくれた。10数年前のマレーシア駐在時、ペナン島のとある鄙びたショッピングモールで買い求めた海賊版DVD(テレビ・アニメ第2シリーズ(1977~80年))は、日本語の番組に飢えていた私たち家族を大いに慰めてくれた。
小林さん演じる次元大介は単なる脇役ではない。五ェ門とともにルパン三世の両脇を固める相棒であり、「ルパン三世」は、彼らの足を引っ張る峰不二子を加えて、際立つキャラの4人が揃ってこその「ルパン・ファミリー」の物語だ。
私に馴染みの“ほぼ”オリジナルの「ルパン・ファミリー」声優陣は代替わりし、ルパン三世役の山田康雄さんは1995年3月19日(享年62)に、銭形警部役の納谷悟朗さんは2013年 3月5日(享年83)に、石川五ェ門役の井上真樹夫さんは2019年11月29日(享年80)に鬼籍に入られ、残るは紅一点・峰不二子役の増山江威子さん(1936年生まれ)だけになった。生みの親、モンキー・パンチさんも2019年4月11日に亡くなっている(享年81)。私自身もいい歳なのだから、これも世の習い、しかし声の記憶は今も生々しく耳に残る。なんと素敵な商売だろう。そして作品としての「ルパン三世」もまた、「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」と同様、代替わりしつつ、国民的アニメとして長く愛され続けることだろう。
長年にわたるご活躍に感謝し、ご冥福をお祈りしつつ、合掌。
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