きのふまで馴れしたもとの花の香(か)にかへまく惜しき夏衣(なつごろも)かな(続古今和歌集)
夏木立(なつこだち)あを葉まじりの花もあればなほ染めかへじ今日の袂は(正治二年初度百首)
さくら色に目なれし雲の衣手(ころもで)もはやたちかへて山風ぞ吹く(前摂政家歌合)
さくら色に染めし衣(ころも)をぬぎかへて山ほととぎす今日よりぞ待つ(後拾遺和歌集)
春山のかすみの衣(ころも)ぬぎかへて今朝はみどりの夏のあけぼの(後鳥羽院御集)
今日といへば大宮人(おほみやびと)のしらがさね春の色こそたちかはれぬれ(新撰和歌六帖)
昨日(きのふ)にも空は変(か)はらでもろ人の衣(ころも)の色に夏は来(き)にけり(藤葉和歌集)
白たへの雲のはたての夏衣(なつごろも)今か干すらむ天の香具山(宝治百首)
なつごろもたちかへてける今日よりは山ほととぎすひとへにぞ待つ(新勅撰和歌集)
鳴く声はまだ聞かねども蝉の羽(は)のうすき衣(ころも)はたちぞきてける(拾遺和歌集)
壁代(かべしろ)も御簾(みす)にそへたるうすものも今朝たちかへて袖や涼しき(草根集)
今日よりは千代をかさねむはじめとてまづ ひとへなる夏衣かな(続古今和歌集)