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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 七月七日 七夕

2013年07月07日 | 日本古典文学-秋

天の川水蔭草の秋風に靡かふ見れば時は来にけり
天の川楫の音聞こゆ彦星と織女と今夜逢ふらしも
天地の 初めの時ゆ 天の川 い向ひ居りて 一年に ふたたび逢はぬ 妻恋ひに 物思ふ人 天の川 安の川原の あり通ふ 出の渡りに そほ舟の 艫にも舳にも 舟装ひ ま楫しじ貫き 旗すすき 本葉もそよに 秋風の 吹きくる宵に 天の川 白波しのぎ 落ちたぎつ 早瀬渡りて 若草の 妻を巻かむと 大船の 思ひ頼みて 漕ぎ来らむ その夫の子が あらたまの 年の緒長く 思ひ来し 恋尽すらむ 七月の 七日の宵は 我れも悲しも
(万葉集~バージニア大学HPより)

十年七月七日之夜獨仰天漢聊述懐一首
織女(たなばた)し舟乗りすらしまそ鏡清き月夜に雲立ちわたる
 右一首大伴宿祢家持作
(万葉集~バージニア大学HPより)

題しらす 読人不知 
久方のあまのかはらのわたしもり君わたりなはかちかくしてよ
(古今集~日文研HPより)

天(あま)の河今宵ながめぬ人ぞなき恋の心を知るも知らぬも
(和泉式部集~岩波文庫)

題しらす 清輔朝臣
思ひやる心もすゝし彦星の妻まつよひの天の川風
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

かくて、七月七日になりぬ。賀茂川に、御髪(みぐし)すましに、大宮より始め奉りて、小君たちまで出で給へり。賀茂の川辺に桟敷うちて、男君達おはしまさうず。その日の節供、川原にまゐれり。君達御髪(ぐし)すましはてて、御琴しらべて、七夕に奉り給ふほどに、(略)
(宇津保物語~岩波・日本古典文学大系)

 七月七日ひきたりける糸にくものすかきけるをみて
さゝかにのもろてにいそく七夕のくもの衣はかせやふく覧
 といふかへし
七夕の(イ:ひこほしの)くへき宵とやさゝかにのくものいかきもしるくみゆ覧
(実方朝臣集~『群書類従 14』)

七月七日
たなばたにけさひくいとのつゆをおもみたはむけしきをみでややみなん
(蜻蛉日記・巻末家集~バージニア大学HPより)

七月七日、いと疾(と)う起きて
織女に心をおけば朝ぼらけただわがごとや露もおくらん
同じ頃、糸をいたう高う引きて、青き紙を杉の葉に結びつく
七夕によきもあしきも織れとてぞ空にかけたるくものいとすぢ
(和泉式部続集~岩波文庫)

 (七夕をよめる) 藤原資隆朝臣
年をへて何を織らん棚機のあはぬなけきをたてぬきにして
(月詣和歌集~続群書類従14上)

七月七日は曇り、夕がたは晴れたる空に月いとあかく、星のすがた見えたる。
(枕草子~バージニア大学HPより)

尚侍貴子四十賀、民部卿清貫し侍ける屏風に、七月七日たらひに影見たる所 伊勢
めつらしくあふ七夕はよそ人も影みまほしき夜にそ有ける(イ空にそ有ける)
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

きかばやなふたつの星の物がたりたらひの水にうつらましかば
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

七月七日かちのはにかきつけ侍ける 上総乳母
天河とわたる舟のかちのはにおもふことをもかきつくるかな
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

 七夕筆
秋にとるかちの七葉とみゆるより露に染たる水くきの跡
(為重卿集~群書類従14)

くさのうへのつゆとるけさのたまつさにのきはのかちはもとつはもなし
(壬二集~日文研HPより)

乞巧奠の心を 入道前太政大臣
庭の面にひかてたむくることのねを雲ゐにかはす軒の松風
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

おなし御時御屏風、七月七日夜、ことひく女あり 源したかふ
ことのねはなそやかひなき織女のあかぬわかれをひきしとめねは
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

 七月七日。中ぐうの御まへにせんざいにむらごのいとをひきて。いろいろのたまをつらぬきたり。よしみん人はとみかどのよませ給けんは。かくおもひより給ふ人のなかりけるにや。にようばう
  しらつゆも玉をみかきてちよふへきあきのみやにはつきせさりけり
  ゆきあひのそらよりをけるつゆなれはことにたまをばみかくなりけり
  たなはたのいとにひかれてたまさかにかくきえのこるつゆもありけり。
(栄花物語~国文学研究資料館HPより)

暮れぬれば、乞巧奠の火の光、水にうつろひて景色殊におもしろし。琴柱たてよ、洞院宰相中將なり、會のしるしと珍しくや、七夕つめも思ひやられて、
手向けおくたまの小琴(をごと)も此のあきは七夕つめのいかに聞くらむ
この秋はたなばたつめに手向けおく玉の小琴に音もや添ふらむ
たむけする空だきものに如何ばかり天のはごろも袖かをるらむ
權大納言參らせ給うて、御語(おんかたり)あり。前大納言殿琵琶、琴は女御の御方の權大納言殿、洞院宰相中將、笛、花山院中納言殿、伯少將やすなか、拍子、綾小路少將。御(おん)樂果てぬ。心のうち靜り果てて、月見む、といひて、女御の御方に忍びて、御琵琶彈かせ給ふ。
(中務内侍日記~有朋堂文庫「平安朝日記集」)

七月七日、きかうでんの夜、頭中將、事ども奉行す。あさがれひにて、こう當の内侍、ことぢたてられて、ちとかきならしていだされしこそ、いとおもしろかりしか。「頭中將奉行がらにや、今宵の雨もしめやかにふる。」など、人々おほせらるれば、少將内侍、
しめじめと今宵の雨のふるまひに奉行の人の氣色をぞしる
など申せば、大納言殿ことにけうじて、わらひ給ふもをかし。ことゞもよくなりて、うへの御つぼねより二間にてみれば、ともし火の影かすかなるもおもしろくて、少將内侍、
ともし火のかげもはづかし天河あめもよにとや渡りかぬ覽
返し、辨内侍、
星あひの光はみせよ雲ゐよりくもゐはちかしかさゝぎの橋
(弁内侍日記~群書類從)

  七夕には、梶の葉の七首たむけ侍れど、書とむるにおよばず、阿波守の家にて一続有しに、待七夕
待(ま)ち遠き年にはたへて天津星今日の暮行程や久しき
  七夕雲
七夕の逢夜の床の天津風まれにや雲の塵払ふらん
  七夕霧
さす花の挿頭(かざし)も領巾(ひれ)も錦(にしき)裁つ霧のまぎれの天の河風
  七夕橋
河橋や帰る涙の村雨にぬれて星合の秋の紅葉ば
  七夕衣
織女の織るや五百機(はた)たてぬきは露霜知らぬ天の羽衣
  七夕船
君に行綱手(つなで)も急げ川波にいやのりうけぬ天の岩舟
(草根集~「和歌文学大系66」明治書院)

百首歌たてまつりける時、七夕 入道二品親王法守
九重の庭のともしひ影ふけて星合の空に月そかたふく
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

ふけゆけはほのかになりぬたなはたにたむくるよはのにはのともしひ
(嘉元百首~日文研HPより)

天平六年七月丙寅(七日)、天皇、相撲(すまひ)の戯(わざ)を観(みそなは)す。是(こ)の夕、南苑に徒(うつ)り御(おは)しまして、文人に命(おほ)せて、七夕(しちせき)の詩を賦(ふ)せしめたまふ。禄賜ふこと差(しな)有り。
(続日本紀~新日本古典文学大系13)

寛弘元年七月七日、己丑。
今日の夕方、召しによって、内裏に参った。作文会(さくもんかい)が行なわれた。「七夕の秋意」の題である。
(権記〈現代語訳〉~講談社学術文庫)

七夕の、 織る糸竹の 手向け草、 いく年経てか かげろふの、 小野の小町の 百年(ももとせ)に、 及ぶや天(あま)つ 星逢ひの、 雲の上人に 馴れ馴れし、 袖も今は 麻衣(あさごろも)の、あさましや 痛はしや、 目も当てられぬ 有様(ありさま)。
とても今宵は 七夕の、 とても今宵は 七夕の、 手向けの数も 色々の、 あるいひは 糸竹に、 かけて巡らす 杯の、 雪を 受けたる、 童舞の袖ぞ 面白き
星祭るなり 呉竹の。 代々を経て住む 行く末の。 いく久しさぞ 萬歳楽。
(謡曲・関寺小町~岩波・日本古典文学大系41「謡曲集 下」)

ワキ、ワキツレ二人次第「待ち得て今ぞ秋に逢ふ。待ち得て今ぞ秋に逢ふ。星の祭を急がん。
ワキ詞「これは江州関寺の住僧にて候。今日は七月七日にて候ふ程に。七夕の祭を取り行ひ候。又この山陰に老女の庵を結びて候ふが。歌道を極めたる由申し候ふ程に。幼き人を伴ひ申し。かの老女の物語をも承らばやと存じ候。
ワキ、ツレサシ「颯々たる涼風と衰鬢と。一時にきたる初秋の。七日の夕に早なりぬ。
ワキ「今日七夕の手向とて。糸竹呂律の色々に。ツレ「ことを尽して。ワキ「敷島の。
ワキ、ワキツレ二人歌「道を願の糸はへて。道を願の糸はへて。織るや錦のはた薄。花をも添へて秋草の露の玉琴かき鳴らす。松風までも折からの。手向に叶ふ。夕かな手向に叶ふ夕かな。
(謡曲「関寺小町」~謡曲三百五十番)

延喜十六年七月七日亭子院殿上の歌合に 読人しらす
別れてはわひしき物を彦星の昨日今日こそ思ひやらるれ
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

橘としつなの、ふし見の山庄にて、七夕後朝の心をよめる 藤原顕綱朝臣
七夕のまちつるほとのくるしさとあかぬ別といつれまされる(イいつれまされり)
(詞花和歌集~国文学研究資料館HPより)

かさねてもなほや露けきほどもなく袖わかるべき天(あま)の羽衣
天の河こぎはなれゆく舟の中のあかぬ涙の色をしぞ思ふ
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

七夕後朝の心をよみ侍ける 八条院高倉
むつこともまたつきなくに秋風にたなはたつめや袖ぬらすらん
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

八日の朝よませ給ける 延喜御製
彦星のわかれて後の天河おしむ涙に水まさるらし
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

 花山院の御庚申(かむし)に、七月七日、たなばた
としごとにまつもすぐるもくるしきに秋はこよひのなからましかば
(惟成弁集~「惟成弁集全釈(私家集全釈叢書32)」風間書房)

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古典の季節表現 七月七日 七夕に寄せて

2013年07月07日 | 日本古典文学-秋

七夕の歌の中に 源義詮朝臣
年をへてかはらぬ物は七夕の秋をかさぬる契りなりけり
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

おなしき七月七日、三首歌講せられけるに、七夕契久といふことを 前関白左大臣
幾秋も絶ぬ契りや七夕の待にかひある一夜なるらん
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

七月五日、七日にと頼めける人の返事に 前右近大将道綱母
天の川七日を契る心ならは星合はかりかけをみよとや
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

七月七日、いかにいひたる契なるらんと申ける返事に 堀河院中宮上総
契けんこゝろの程もひこほしの行合の空に誰かしるへき
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

 この男、いひすさびにけるに、七月になりにけり。さりければ、七日に川原にゆきて、遊びけるに、この男、夢のごとあひて、見もえあはせで、言の通ひは、ときどきいひ通はす人の車ぞ、来て、川原に立ちにける。供なる人々見て、いふを聞きて、男、「かう近きことのうれしきこと。これをば天の川となむ思ひぬる」などいはせて、男、
  彦星に今日はわが身をなしてしか暮れなば天の川渡るべく
といはせたれば、女、見には見て、つつむ人などやありけむ、ただ、「暮れなば、かしこにを」といひて、いにけり。されば、日や暮るると、いつしかいきてあひにけり。またのつとめて、男、
  天の川今宵もわたる瀬もやあると雲の空にぞ身はまどふべき
返し、女、
  七夕のあふ日にあひて天の川たれによりてか瀬をもとむらむ
といへり。いたく人につつむ人なりければ、わづらはしとて、男、やみにけり。
(平中物語~新編日本古典文学全集)

 七月七日のつとめて、あさがほにさして
あさがほのつゆうちはらひたなばたのけふのくれをばまちやわたらん
 同じ日、かぢのはにかきてたてまつりし中に
けさはとてふなでをすらんひこぼしのかぢのはをこそわれはかしつれ
(為信集~新編国歌大観7)

七月七日の夕べ、荻の風になびくを聞きて 伊勢をの前関白の中の君
常よりも心して吹け七夕のつま待つ宵の荻の上風
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

七月七日に、ゆふかたまてこん、といひて侍けるに、雨ふり侍けれはまてこて 源中正
雨ふりて水まさりけり天川こよひはよそにこひんとや見し
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

七月七日、内より、「今夜さへよそにやきかん我ための天の河原はわたるせもなし」との給はせけるに 女御徽子女王
天河ふみみることのはるけきはわたらぬせとも成にや有らん
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

逢かたき人に、七月七日つかはしける 伊勢
いむといへは忍ふ物から夜もすから天の河こそうらやまれつれ
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

かたらひける人の、七月八日の夜きて物語して、帰ぬるつとめて 赤染衛門
七夕の昨日別し袖よりもあくれは今朝そわひしかりける
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

七月七日夜、小弁上東門院にまいりて、明る朝出けるにつかはしける 小式部内侍
たなはたのあひてわかるゝ歎をも君ゆへけさそ思しりぬる
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

源昇朝臣時々まかりかよひける時に、ふむ月の四五日計のなぬかの日のれうに、さうそくてうしてといひつかはして侍けれは 閑院
あふことは七夕つめにひとしくてたちぬふわさはあへすそ有ける
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

ふむ月の七日の夜、大納言朝光物いひ侍けるを、又の日心あるさまに人のいひ侍けれは、つかはしける 小大君
七夕にかしつと思ひしあふことをそのよなき名の立にける哉
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

ふみつかはす人のこと人にあひぬときゝて七月七日つかはしける 源雅光
よとゝもにこひはすれともあまのかはあふせはくものよそにこそみれ
(金葉和歌集・三奏本~国文学研究資料館HPより)

 七日えち川といふ處にいきつきぬきしにかりや作りておりたるにようさり月いとあかう波をとたかうておかしきに人はねにたるにひとりめさめて
彦星はあまのかはらに舟出しぬ旅の空にはたれをまたまし
(赤染衛門集~群書類従15)

文永十二年七月七日、内裏に七首歌奉し時 前大納言為家
天河八十にかゝる老の波又たちかへりけふにあひぬる
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

大方の身のやうも、つく方(かた)なきにそへて、心の中もいつとなく物のみかなしくてながめし比、秋にもやゝなりぬ。風の音はさらぬだに身にしむに、たとへんかたなくながめられて、星合(ほしあひ)の空みるも、物のみあはれなり。
つくづくとながめすぐして星合(ほしあひ)の空をかはらずながめつるかな
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

なに事もかはりはてぬる世の中に契りたがはぬ星合(ほしあひ)の空
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

藤原尹綱朝臣身まかりて又の年七月七日に、年月手なれける琴をみて、今はかきならすも物うく覚え侍けれは 参議家綱女
秋といへは手向しことの緒をたちてあらぬうきねに世をやつくさん
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

七月七日も、例に変りたること多く、御遊びなどもしたまはで、つれづれに眺め暮らしたまひて、星逢ひ見る人もなし。まだ夜深う、一所起きたまひて、妻戸押し開けたまへるに、前栽の露いとしげく、渡殿の戸よりとほりて見わたさるれば、出でたまひて、
「七夕の逢ふ瀬は雲のよそに見て別れの庭に露ぞおきそふ」
(源氏物語・幻~バージニア大学HPより)

近衛院の御事に、土左内侍さまかへて篭り居て侍けるもとへ、又の年の七月七日よみてつかはしける 備前
天の川ほしあひの空はかはらねとなれし雲ゐの秋そ恋しき
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

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