さても七月の七日は天上にあまの川とてふかくひろき川あり
一とせにただこよひばかり牽牛(けんぎう)織女(しょくぢょ)のあふ夜なれば
かささぎのもみぢの橋をわたしてちぎりふかきなかだちをなすとかや
乞巧奠(きかうでん)とて人みなこよひは七夕まつりするもなまめかし
五色(しき)の糸を針にさし衣をかしくたなばたつめに事をいのるもさら也
九日十日六たうといふところにまうでてまつるべきしやうりやうをむかふもけしからずみゆ
十四日よりは寺にせがきのくやうあり
町には聖霊(しやうりやう)のたなをかざり百味のそなへもの十六日までいとなむもたうとし
家々のかどにはいろいろのとうろうに火をともしむかしよりある事にてわかき人みなたち出てをとりをするもたえぬ見物ならずや
たれとはしらずほうかぶりして柳の腰たをやかにうちふり哥のふししめやかにうたひつれたるは夜目にみるからうつゝごころになりぬ
(佛教大学図書館デジタルコレクション「十二月あそひ」より)