草は手(て)をのばし、大地はこゑをひそませる。すべては、うすいろの若(わか)やぐ笑ひをはびこらせて、あをじろい月光(げっくゎう)のおとし子をはらむではないか。樹(き)のうへにおよぐ魚(うを)のすばやさは、点点としてながれさる木(こ)の葉(は)の命(いのち)をかもしそだてて息(いき)ぐみ、よそほひを凝らしながら眼(め)をよせる女の指に不思議のにほひをふるはせる。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、446p)より「季節題詞」)
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