「雪の宿」という語の日本国語大辞典の初用例年は1638年ですが、もっとさかのぼる用例があります。
くれ竹のふして思ひのながきよもうづもれまさる雪の宿かな
(215・冬題歌合 建保五年、109)
『新編国歌大観5』角川書店、1987年、558ページ
~この歌合は、建保五年十一月四日=1217年成立
「雪の宿」という語の日本国語大辞典の初用例年は1638年ですが、もっとさかのぼる用例があります。
くれ竹のふして思ひのながきよもうづもれまさる雪の宿かな
(215・冬題歌合 建保五年、109)
『新編国歌大観5』角川書店、1987年、558ページ
~この歌合は、建保五年十一月四日=1217年成立
「雪の花」という用法があるなら、「雪の花園」という用法もあるのではないかと思い、調べてみると複数の用例がありました。ちなみに、日本国語大辞典には立項されていません。意味は、「雪の降り積もった情景を花園に見立てていう語。」。
竹河の橋より見れは木にもあらす草にもあらぬ雪の花園
(『契沖全集 第13巻』岩波書店、1973年、194ページ。漫吟集類題、巻十・冬歌下、雪、3279)
夜の間にやふりつもるらんよし野山のこる枝なき雪の花園
(『本居宣長全集 別巻三』筑摩書房、1993年、691ページ。歌合評補遺、明和七年寅閏六月初度 十六番歌合、朝雪、十六、右)
志賀の浦やふるき都は道絶えて雪の花園行く人もなし
(『新編国歌大観 第八巻 私家集編4 歌集』角川書店、1990年、696ページ。35・雪玉集、故郷雪、5703)
さゝ波やふるき宮木は埋れて又このころの雪のはなその
(塙保己一編『群書類従 第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、24ページ。巻第百六十三・為尹卿千首、冬、故郷雪)
あれにける志賀の山里冬くればところもわかぬ雪の花ぞの
(『校註国歌大系 第廿一巻』国民図書、1930年、528ページ。夫木和歌抄巻第十八・冬部三、雪、為家)
ふりにける跡ともけさはみえぬかな志賀のみやこの雪の花園
(塙保己一編『群書類従 第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、244ページ。巻第百七十・正治二年第二度百首和歌、藤原雅経、雪)
「雪の花」という語には、「雪を花に見立てていう語。また、雪の中に咲いている花。」という語釈があり、日本国語大辞典第2版では、『為忠集』の用例を早い例としてあげていますが、さかのぼる用例があります。
にほのうみやつりするあまのころもでにゆきのはなちるしがの山風
(『新編国歌大観 第五巻 歌合編 歌集』角川書店、1987年、475ページ。197・千五百番歌合、1982)
まがふ色は梅とのみ見て過ぎ行くに雪の花には香ぞなかりける
(『新訂 山家集(岩波文庫)』岩波書店、1928年、112ページ)
わりなくもこすのあみふのひまわけてかぜにちりくるゆきのはなかな
(『新編国歌大観 第四巻 私家集編2 定数歌編 歌集』角川書店、1986年、272ページ。29・為忠家後度百首、冬、雪十五首・簾中雪、540)
日本国語大辞典の「雪の声」(語釈2:降る雪の中を聞こえてくる声。また、積もった雪をわたって聞こえてくる声。)には、俳諧『いまみや艸』(1734)からの例が採られていますが、もっと古い、200年以上さかのぼる用例があります。
ゆく人の今朝あとつくる雪のこゑ枕にさゆる道のべのやど
(『新編国歌大観 第八巻 私家集編4 歌集』角川書店、1990年、182ページ。10・草根集、6000)
「霜」という単語には、「年月のこと。」という語釈があります。日本国語大辞典第2版では、浄瑠璃『公平誕生記』(1661頃)からの例が添えられていますが、さらに、300年ほどさかのぼる用例があるので、紹介します。
庭の面に老のともなるしらぎくは六十(むそぢ)の霜や猶かさぬべき
(岩佐美代子『風雅和歌集全注釈・上巻』笠間書院、2002年、539ページ。巻第八・冬、775、後宇多院)