
FRBによる金融引き締めの加速観測から、このところ急伸していたドル指数(DXY)だが、週明けは失速。1日としては昨年11月以来の下げとなり(0.7%)、NY金は反発ということに。それでも時間外の引けで1800に届かず清算値は1796.40ドル。時間外の終値は1797.80ドルで2月1日のアジアに引き継がれた。前週までに一気に積み増したファンドのロングの投げは、早くも一巡ということか。
DXYと並び金価格に影響を与える米長期金利の指標10年債利回りは、1.781%と前週末とほぼ同じ水準に滞留。一時は1.812%まで上昇したが、1.8%超の水準では買いが入っているもようだ。先週のFOMC声明文発表後には一時、1877%まで上昇したが長くは続かなかった。ここにきて年内の利上げ回数が、最大7回とする市場予想の上振れは別格として、市場は5回を織り込みつつある。それでも利回りの上昇につながらないのは、現時点で先行きの景気減速の可能性を債券市場が読んでいることがある。
実際に、前週末に発表された12月の個人消費支出(PCE)は前月比0.6%減と、11月の0.4%増からマイナスに転じていた。アトランタ連銀が公表している国内総生産(GDP)見通し(GDP Now)を参考までに掲載するが、まだデータ数は少ないが1月28日時点で1~3月期前期比年率0.1%とゼロ成長の予想となっている。景気が停滞し市場が予想しているほど、利上げが進まない可能性もありえる。
この日も金ETF(上場投信)の最大銘柄「SPDRゴールドシェア」の残高は3.49トン増加し1017.75トンとなった。昨年8月16日以来の水準となる。金市場にとって向い風が吹く環境の中で、金ETFの残高増の意味するものは何か。長期債利回りが上がりにくい先行きの環境(減速)を映すのか、目先のインフレ加速を読んでのものか。
個人消費支出(PCE)と一緒に発表された個人消費支出(PCE)価格指数いわゆるPCEデフレーターの方は、前年同月比5.8%上昇と、11月の5.7%上昇から加速し、1982年以来の高い伸びとなった。FRBが物価の判断材料とすることで知られる(変動の大きい食品とエネルギーを除いた)コアPCE指数は、同4.9%上昇と、11月の4.7%上昇から加速し、こっちは83年以来の高い伸びとなった。トレンドを見る上で重要視される前月比でもコアPCEは0.5%上昇と、11月と同じ高い伸びを維持している。
つまり消費減速の中で物価は上がっている。足元で金ETFの買いを進める投資家は、こうした単月のデータを基にはしていないと思うが、構図としては同じだろう。急旋回したFRBがやり過ぎて(判断を誤って)、スタグフレーション(低成長化のインフレの継続)につながるリスク対応ということか。オミクロンの感染が一巡すれば消費は戻りインフレは沈静化と、絵に描いたようま安定が得られるのかというと、そう簡単ではあるまい。
10~12月期のデータではあるが、新興国のみならず米欧でも地金(バー)や金貨といった実需(現物)の買いが活発化していることが判明したが、予想外に需給が締まっていることを思わせるもの。
本日は1月のISM製造業景況指数の発表。このところ発表されたマインド系指数は落ちているだけに要注目。前回大きく落ちた価格指数もどうなったか・・・これも注目点。