亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金の反発よりナスダックの下げに注目

2021年12月06日 19時49分04秒 | 金市場

先週末の11月米雇用統計はヘッドラインの数字は、既に報じられたようにサプライズということになった。

雇用統計の発表では、毎回、雇用者数の増加数がまず注目される傾向にある。今回は、米連邦準備理事会(FRB)が、来週12月14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)にて利上げに向けた体制を整えるためテーパリング(量的緩和策の縮小)の加速を決めるとみられることから、注目度はさらに上がっていた。雇用者増加数が市場予想の半分以下となったことに、まず市場は反応。金価格はポンと跳ね、米10年債利回りは低下となったが、すぐに売り買い交錯状態に移行し、上下動を繰り返ししばらく方向が定まらなかった。

しかし、その後2時間余り経過した辺りから、市場に流れが生まれ始める。それは、失業率の急低下や労働参加率などが示す旺盛な求人が(賃金上昇を誘導し)、インフレ高進の持続を示すものと解釈されFRBに金融政策正常化を加速させると受け止められたことによる。

報じられたように非農業部門雇用者数(NFP)は前月より21万人の増加で、57万3000人増を見込んでいた市場予想(ダウ・ジョーンズ)を大きく下回り、昨年12月以降で最も低い伸びとなった。時間当たり平均賃金も前月比0.3%増と伸びは鈍化した。それでも前年同月比では4.8%増となる。

一方、11月の失業率は4.2%と10月の4.6%から大幅に低下し、2020年2月以来の低水準だった。さらに労働参加率が10月の61.6%から11月は61.8%に上昇したのが、印象を良くした。そのまま労働市場の急速な引き締まりを示唆するからだ。実際に家計調査では11月の就業者数は大きく増加している。前月比21万人増に留まったものの、年初から11月までの雇用者の伸びは平均して月間55万5000人となる。増加が継続する必要はあるが、悪くはない。

問題は、足元で広がるオミクロン株の行方だが、現時点ではワクチンや治療薬の有効性が示されるまでの時間が不透明で、経済活動の縮小が懸念されるリスクオフ・センチメントにつながっている。もっとも、感染力の強さと症状の強さは異なるため、そのあたりの解明が進むと、事態は大きく変わる可能性はある。既存のインフル並み、あるいは風邪並みとなるとどうなるかは言うまでもないだろう。

いずれにしても先週末の雇用統計の結果は、来週開かれるFOMCには影響を与えないという見方が支配的となり、テーパリングの加速がパウエル議長が示唆したように決定されるとの織り込みが進んでいる。

いわば金には向い風となる環境が予見される中で、3日のNY金は反発したことになるが、この間の下げで先行してFRBの方針変更が織り込み済みになっていたことがある。むしろその後加わったオミクロン株感染拡大の経済全般への影響という不透明要因が、リスク回避目的の金需要の高まりを連想させたとみられる。もっとも、前日に下げたほぼ、そのままを戻して1783.90ドルで終了ということだった。

それよりも3日は、ナスダック総合株指数が2%近い大幅下げに見舞われたことが目に付いた。米10年債利回りが1.4%を割り込み一時1.341%まで低下。9月22日以来の低水準となる1.357%で終了したにもかかわらず、これだけ下げたのは意外性があった。

FRBの金融政策がいよいよ転換点を迎える中で、そこに重なるオミクロン株問題。ここまで集中的に買われてきた値がさ大型株群を、いったん利益確定する投資家が増えている可能性がありそうだ。どう展開するか、見もの。。2~3日して、何かありましたっけ?と平穏に戻るのがここまでのパターンではあるが。。

本日は、朝の時間帯10時45分から、東証アローズStock Voiceに電話出演でした。

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