亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

再任パウエルを待ち受ける「狼」 

2021年12月02日 20時51分37秒 | 金市場

NY金は再びレンジの中にハマってしまったような感じになっている。オミクロン株の世界的な感染拡大懸念によるリスクオフで投資家の関心を集める一方、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向け緩和策終了を加速させる方向に傾いたことが売り要因となり、綱引き状態にある。1770~1800ドルの枠内に入っている。金にとって強弱逆方向のベクトルのせめぎ合いといったところか。

「テーパリング加速終了、利上げスタンバイ」ベクトルが強力で、対抗するオミクロン懸念、不安定な株式市場、米政治リスク、基調的なインフレ高進、新興国中銀の買いなどなど逆向きベクトルを足し合わせて、なんとか拮抗しているような状況にある。とはいえ、抗オミクロン・ワクチンにメドがつくまでに、いかに混乱を抑えられるのか。あるいは、そもそもそれほど恐れるに足る相手ではないのか否か。情報待ちの時間との勝負ということに。

サプライチェーン問題や、経済正常化過程でのモノに絞られた形の需要の急増など、足元で起きている異形のインフレ押し上げ要因は、テンポは遅いが改善が見られるもの。実際に半導体不足、部品不足による自動車生産の滞りは、峠を越えて解消に向かっている。

そもそもこれらは、金融政策とは次元が異なる問題ゆえにFRBも悩ましい。慌てて利上げ体制を整えても、着手は難しいだろう。FRB自体が恐れるのは、オーバーキル。自らが回復の腰を折ってしまうことにある。これから始まる金融政策の巻き戻しの作業の先行きを考えると、テーパリングはほんの入り口に過ぎない。問題なく移行できたのは、まずは目出度し。「前門の虎」は飼いならしに成功したものの、「後門の狼」が相当に手強いことは、2014年以降の正常化過程で市場が不安定化したことで明らかだろう。

あらゆる分野で歴史的規模でdebt(負債)が積み重なっている状況の中で、利上げを急げばどうなるのか。基軸通貨たるドル金利の引き上げだけに、着手できたとしても重ねるうちに、どこかの時点で「ラスト・ストロー」になるのではと思う。

パウエルFRB議長は1日、前日の上院に続き下院で証言。前日同様、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)にて「資産購入を数カ月早く終えるために量的緩和の縮小(テーパリング)の加速を検討することが適切だ」との考えを重ねて表明。「テーパリングを終えた後も緩和的な政策をとっていることが分かるだろう」と大量の資金供給をした環境に変化はないことを強調した。

今週は明日3日の11月の米雇用統計など重要指標の発表が続くが、既に月半ばのFOMCの大勢が判明していることとオミクロン騒動の中で、材料性が薄まっているというか、ここまで発表されたものはスルーという感じになっている。サプライズが起きる可能性は小さいのかな。。。

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