亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

1850トライの金、欧米売りのアジア買い(WGCデータ) 

2021年07月30日 21時39分18秒 | 金市場
注目イベントFOMC(連邦公開市場委員会)を通過し、NY金が6月17日以降の下げに対する戻り高値を更新している。限月変更を考慮しても29日の清算値(終値)ベースで1835.80ドル(8月限1831.20)と節目の200日移動平均線(1824ドル)を越えてきた。

29日発表された経済指標が予想を下回ったことも、FRBの政策転換の後送りをイメージさせ金を押し上げた。朝方発表された2021年4~6月期実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率で6.5%増と市場予想(8.4%増)を大きく下回った。ただし、金額ベースの規模としては新型コロナウイルス禍前の2019年10~12月期を上回った。個人消費が成長を後押しした。前期比11.8%増と全体をけん引した。

金市場に関連付けて書くならば、日本時間の昨日午後に国際的な金の広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した需要統計にて、米国の4-6月期の米国の宝飾需要は37.7トンとトップの中国の146.9トンは別格として、ロックダウンなどで落ちたインドの55.1トンに次ぐ規模となっていた。

米国含め欧米の宝飾需要はクリスマス前に集中する傾向があり、コロナ禍のなかでも2020年10-12月期の米国は48.7トンと例年並みの水準となった。いわゆる第4四半期以外の米国の金宝飾需要は25トンを挟んだ水準に落ち着くが、この4-6月期の数字は2007年以来のもの。コロナワクチンの接種普及で経済活動が再開され、富裕層の購入拡大以外に、レスキュープランによる1人当たり1400ドルの小切手送付などから押しとどめられていた需要が幅広く広がったとみられる。おそらく7-9月期はこの水準は維持できないものと思われる。

いずれにしても、個人消費の力強さが4-6月期の米GDPを6.5%に押し上げた。その他の要素としては民間設備投資は前期(12.9%増)から伸びは縮小したものの8%増となった。一方、住宅投資は9.8%減少し、前期の13.3%増からマイナスに転じている。4-6期GDpは6月上旬には10%増との見方が多く、目線が上がっていた分、6.5%成長となるとやはり減速感は否めない。秋以降の米経済の減速を読んできたが、その方向と思う。この減速を株式市場を中心に“景気過熱によるインフレ加速への警戒感が後退し金融緩和が当面続く” と読み替え押し目買いが続くということになるのだろう。

WGCの4~6月期金需要統計に話を戻すと、前年の4-6月期は新型コロナ禍を受けた世界的な金融緩和や財政出動の急拡大の中で、投資家がリスク回避から金ETF(上場投信)の大量取得に向かう一方、ロックダウン(都市封鎖)など経済活動の縮小から宝飾需要が前値比半減していた。その前年との比較となるため今回のデータは、項目別の落差が大きくなっている。

金ETFは前年同期比90%減少の40.7トン、逆に宝飾品は経済活動の再開が進み60%増の390.7トン、産業向けは18%増の80トンとなった。興味深いのは投資全体で見た場合、地金・金貨が243.8トンと前年同期比で56%増となっていることだ。米国経済の正常化期待(=FRBの緩和策縮小見通し)を映し、欧米投資家がETFを手放し価格が急落する中で、アジアを中心とした実需買いが増加したことを表す。この買いが1700ドル割れまで下げた価格を下支えしたことを示すデータといえる。なお、金需要全体は前年同期比1%減の955.1トンとなった。

200日線越えのNY金だが、1850ドル突破にもうひとつ手掛かりが欲しいところだが、先にテーパリングが控えるのだから強気出来ない・・・という大方の見方を覆すサプライズの可能性は、今後いくつかの波の中であると思う。
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