亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金に優しいタカ派色を前面にしてハトをちりばめたFOMC

2021年07月29日 17時47分05秒 | 金市場

量的緩和策の縮小(テーパリング)について本格的な話し合いがスタートすることで注目された今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)。前回6月とは異なり参加者の金利など経済見通しの発表はなし。現地ワシントンで28日午後2時の声明文発表。2時半からパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見が行われた。 金市場を含め、このイベントを挟み多少の上下動が見られたものの、反応は落ち着いたものとなった。声明文と議長の記者会見冒頭の発言に盛り込まれたのは、「経済や雇用は目標達成に向けて一段と前進した」との判断の引き上げだった。その上で、テーパリングについて「今後複数の会合で経済情勢の進捗を確認」しながら判断するとした。

「時期尚早」という言葉をここまで何度も使ってきたが、さすがに目に見えて回復が進んできた現状から、危機対応の緩和策を縮小に向かわせる意向を明言することになった。この点にスポットを当てると、これまでになくタカ派的な内容といえるもの。ただし、質疑応答を中心に、記者会見での発言は総じて緩和策解除に関して慎重姿勢がにじみ出た印象で、市場への影響は限られた。

実際に昨日のNY金の値動きにそれは投影された。ロンドン時間には1805ドルを越える水準で滞留していたが、NYの通常取引に入って以降は売りが先行する流れに転じ1800ドル割れからマイナス圏に落ちていた。結局、終盤は前日の終値近辺にサヤ寄せして終了。その30分後に声明文発表という流れ。経済正常化が一段と進展との判断の示されたことを受け、ここで売り直され1790ドル方向に下押し。 しかし、パウエル議長の記者会見が始まり冒頭の概況スピーチから、質疑応答の時間帯に入り、時間の経過とともに値を戻す展開に。そして終了後に買いが先行する流れに転じた。そのまま本日29日のアジア時間に地合いは受け継がれ、1810ドル台に乗せ日本時間の夕刻5時台、ロンドンの午前の時間帯は1815ドル前後での推移となっている。

記者会見でパウエル議長が、8月26~28日に開かれるワイオミング州ジャクソンホールでの金融会合にて自らスピーチすると異例の表明をしたことがサプライズとなったが、内容については(当然ながら)触れなかった。このところジャクソンホールは9月のFOMCの前哨戦のような位置づけになりつつあるので、何らかの発言をするのは想定内だが、わざわざ事前に公言したところが、次第に思惑を呼ぶことになりそうだ。

今回はタカ派色を前面にしてハトをちりばめたFOMC派色が相半ばする内容となった。6月の会合ではテーパリングどころか、利上げの前倒しという内容に大きく売りで反応した金市場には、今回の発表程度は織り込み済みということになる。

それにしても、足元のインフレの高進が何ゆえ一時的なのかという点でを問われ 応えたパウエル議長の応答はわかりやすかった。曰く、「物価上昇を引き起こしているのは供給側だ。経済再開に伴う需要急増に供給が追いつかないために起きていることだ。慌てる必要はまったくない」とした。需要は過熱しているわけでなく以前のレベルに戻りつつある中で、供給サイドが戻っていないがゆえにバランスが崩れた状態になっている、したがって一時的というわけだ。

一昨日公開のYouTube「突き抜けたカネ余りとテーパリング」は、2013年当時のテーパリングへの過程を踏まえながら、足元の状況が当時とどのように違うかについて解説したもの。この点からFOMC後にNY金が上昇しても不思議はないといえる。ちょうどNY金は200日移動平均線に接近しつつあり、テクニカル上も注目のポイントということに。

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