亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米中合意署名12月にずれ込み? 困るFRB、下値を固める金

2019年11月07日 11時03分10秒 | 金市場
11月6日のNY市場の金価格は、大幅安となった前日の取引に対する自律的反発と安値拾いの買いにより4営業日ぶりの上昇となった。NYコメックスの通常取引は前日比9.40ドル高の1493.10ドルで取引を終了した。ここ1カ月余り続いている1480~1520ドルのレンジ内に収まる展開。前日の下げは米中通商交渉を巡る楽観論の高まりに反応した債券市場(金利)や株式市場に関連し、金市場にてアルゴリズム(AI自動売買)による売りが膨らみ、さらにチャート上の節目突破などでモメンタム系の売りを誘いこみ目立った下げにつながったということだろう。NYの先物主導の下げ。その中で現物系のETF(上場投信)には買いが入るという面白い(興味深い)展開が見られた。

6日は米中の「第1段階」通商合意の署名が、12月にずれ込む可能性があるとロイターが米政府高官の話として報じ、このところのリスクオンの流れに水を差す形になった。アジア太平洋経済協力会議(APEC)が開催国チリの政情不安でキャンセルされたものの、「合意は近く前倒しになる」(トランプ大統領)としていたが、やはり条件や開催地で折り合いがついていないとみられる。

トランプ大統領が、中国が合意したがっているとして米国内有数の穀倉地帯とされるアイオワ州で署名する可能性を示していたが、その可能性は消えたとされる。農村部の支持離れを防ぐために、大統領選に向けた選挙キャンペーンに政治利用しようとの魂胆は受け入れられなかったもよう。一方、報道では中国側はギリシャ案を提示したものの米国側は蹴ったとされる。これもなぜギリシャか?と考えれば、なるほど「一帯一路」政策の西の重要拠点ということがある。最近では財政難のイタリアへの接近を図っている。米国サイドの理由は、トランプ大統領個人の選挙戦略に絡む開催地の提示だが、中国は国家戦略としての提案ということになる。開催地は欧州やアジアの都市が含まれるが、欧州となる公算が大きくスウェーデンやスイスなどが候補国とロイターは報じている。

いずれにしても開催場所の準備にも時間を要すると思われ、今月中の開催は難しく12月にずれ込むとの見方は妥当だろう。そこで思うのは、米連邦準備理事会(FRB)の執行部は困るだろうということ。次回の連邦公開市場委員会(FOMC)は6週間おきという開催既定の関係で年々前倒しになっており、今年は昨年より1週間早い12月10-11日となっている。すでに12月12日に英国の総選挙が組まれているが、米中合意の署名の有無もこの日程に被る可能性が出てきた。そもそもトランプ政権は最終の追加関税賦課の期限を12月15日に切っていることもある。12月の利下げ見送りは足元の市場で織り込まれているのだが、悩ましい12月になりそうだ。金市場の下値耐性の強さは続き、やはり年末高ということになりそうだ。

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