亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

理屈は通用しない世界

2020年02月03日 21時20分14秒 | 金市場
月末週末の取引となった1月31日のNY市場の金価格は、前日に水準を切り上げたことから利益確定売りに上値の重い展開となった。しかし、新型肺炎感染者の拡大が加速する中で、米国はじめ主要国にも中国との人的移動を制限する国が増えたことから、世界的な経済活動への懸念が高まる中で金は通常取引後の時間外でプラス圏に浮上する値動きとなった。31日のNY金の通常取引は前日比1.30ドル安の1587.90ドルで終了。その後米国株が下げ幅を拡大し主要3指数ともに2%前後の下げとなる中で、リスク回避の資金を集め1594.00ドルまで上昇。そのまま1590ドル台で週末の取引を終えた。

31日の市場は株式大幅安、金利急低下(債券高)に象徴される典型的なリスクオフの相場展開となった。新型肺炎患者数は予想された通り日を追うごとに拡大し、中国湖北省が突出し偏りがあるものの、世界的な流行を意味するパンデミック状態に移行する勢いとなっている。その中で市場が懸念するのは、人的移動の制限に代表される経済活動の停滞にある。この日は米国株式市場では、NYダウが前日比603ドル安と1日の下落率としては昨年8月以来となる大幅な下げに見舞われたことが目を引いた。根強い先高観の下で「V字回復相場」なる言葉まで生まれるほど、何かイベントがあり大きく売られる局面は、むしろ買いのチャンスとなってきた米国株。実際にそれは2019年を通して生まれた成功体験に裏付けされた投資行動でもあり、センチメントとしては「(上昇相場に)乗り遅れる恐怖」とも表現されてきた。しかし、外から見ている分には、大丈夫かよ!?と。

今回の調整局面も買いの好機になるのか否か。感染の急拡大の中で中国経済を取り巻く不透明感は高まっており、「米中第1段階合意」にて中国側が飲んだとされる「輸入数値目標」の達成も危ぶまれる状況といえるだろう。米国とて「独り勝ち」などと、うそぶいてはいられなくなりそうだ。

中国側が輸入目標を数を達成できない場合には、今回の新型ウイルス騒動がエクスキューズということになりそうだが、それに対し合衆国大統領が反応するかは、その時の支持率によるのだろう。そんなことではアカンのだけど、現実はそういうことなのだろうから、それを前提に組む必要がある。

リスクオフを表すもう一つの動きは米国債利回りの低下。金市場同様にリスク回避資金を集め価格は急騰。利回りは低下した。10年債利回りは1.509%と昨年10月以来の水準に、2年債は1.323%と2017年9月以来の低水準を付けた。2年債利回りの低下は、市場が米連邦準備理事会(FRB)が利下げに向かうことを、織り込み始めた兆候を表す側面がある。週初めに表れ、いったんは解消していた3カ月物と10年債の利回りの逆転現象、長短金利の逆転も31日は復活(3カ月物1.549%、10年債1.509%)し、市場の目を引いた。将来の景気後退の予兆とされるが、クラリダFRB副議長はブルーンバーグTVとのインタビューで、長期債の利回りの低下は主に世界の不透明感を反映しており、米国の状況を反映していないと懸念を打ち消す発言をしている。すでに理屈は通用しない世界に入っている。

さて!!今夜のISM製造業景況指数はどうか。6カ月連続50割れか。
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