亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金市場の材料になり始めたスイス国民投票

2014年11月20日 14時50分13秒 | 金市場

19日のNY市場の金価格は、金をめぐるスイスの国民投票を材料に乱高下することになった。10月27日のここで少し詳しく取り上げておきましたが(「果たしてスイスは金を買い戻すのか?」)、やはり近づくにつれて市場の材料になり始めたということでしょ。このあたりはスコットランドの独立問題と同じ。

繰り返すと要点は、以下の3点。
1.SNB(Swiss National Bank)すなわち中央銀行であるスイス国立銀行のこの先の金売却を禁止する。

2.SNBが英国、カナダに預けている金準備をスイス国内にて保管すること。
これは現在全体の70%をSNB自体が保有しており、イングランド銀行に20%、カナダ中銀に10%あるので、この30%相当分を自国に戻せという要求です。

3. SNBの資産の20%を金で保有する。これが市場の最大関心事。

本日の17時00分からの生放送、日経CNBC「デリバティブ・マーケット」にて詳しく取り上げる予定です。
昨夜のNY市場での価格の乱高下につながった材料ですので、タイムリーな企画になりました。

なお再放送は本日19時45分からです。


以下、19日の市況です。

「金を巡るスイスの国民投票の見通しで乱高下」

11月19日のNY市場の金価格は、通常取引は乱高下の中で小幅反落状態となった。また、終了後の時間外取引の時間帯に発表された10月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が、結果的に市場が期待したほどには利上げの先送りを示す内容でもなかったことから、金市場は売り優勢に転じることになった。

19日の市場は前日の上昇で引き上がった1190ドル台での取引をNY時間外のアジアからロンドンと維持して推移した。ロンドンの取引時間帯には買い気が高まり1200ドルを突破するなど堅調地合いが続きNYの通常取引に入ることになった。
ところが現地時間の午前10時過ぎにまとまった売り物が出て20ドル近くも急落状態に。

ニュースで11月30日に予定されているスイスでの金をめぐる国民投票にて、否決が濃厚となったとの見通しが流れたことによる。ファンドがこの材料に反応して急激に売りを膨らませたと見られた。ただし、急落後の売り買い交錯状態が1時間余り続いた後に、今度はまとまった買いが入り逆に急伸し、急落前の1190ドル台半ばの水準に戻るという荒れた展開となった。

スイスの国民投票とは、同国の保守政党「スイス国民党」が提案したもので、中央銀行であるスイス国立銀行の保有資産の20%を金で持つことを要求する内容が骨子となっている。

夏前に「Save Our Swiss Gold(スイスの金を救え)」とのスローガンを掲げ、署名を集め既定の数をクリアしたことからスイス政府が7月に11月30日に是非を問う国民投票を実施することを決めていたもの。中銀の資産の20%を金で保有するとは、スイスフラン発行量の20%は裏付けに金があることを意味する。

かつて1999年までスイスは25%の金で裏付けるとしていたが、廃止した経緯がある。廃止した上で、金売却を進めた結果、かつて2590トンを保有していたが今では1040トンまで減っている。

スイス国民党の要求は、再び水準を引き上げ20%まで金を買い増すことを促すもの。現時点では8%割れの水準となっていることから、計算では1500~1600トンもの金を購入する必要が出てくると見られている。実はこうした要求は成立しないであろうとされ、関心が向けられていなかった。

ところが10月下旬に実施された世論調査では賛成が44%にも上り、にわかに注目度が上がった経緯がある。19日のNYの時間帯に流れたニュースは、世論調査で賛成が38%に減少というものだった。

先週末からの金価格の上昇の背景は、このスイスの国民投票に対する期待というよりも、米国の金利引き上げを過剰に織り込み売られ過ぎに対する修正という側面が強いと見られた。したがって、急落局面は逆に買戻しの機会と捉えたファンドも多かったと思われる。

結局、終わってみれば、NYコメックスの通常取引は前日比3.20ドル安の1193.90ドルとなった。一時は前日比23.20ドル安の1173.90ドルの安値を見たものの、終盤に一気に値を戻すことになった。ただし、FOMC議事録要旨では、多くのメンバーが米国景気の持続的な回復に自信を示していたことから時間外取引で1180ドル台前半に押し戻されることになった。(亀井幸一郎 2014年11月20日記)






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1200ドル大台回復 | トップ | NY市場金価格は2日連続1170... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

金市場」カテゴリの最新記事