亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米株下げ加速、NY金換金売りに耐性

2025年03月11日 18時46分52秒 | 金市場

週明け3月10日のNY金は続落した。先週目立っていたリスクオフ(リスク資産回避)の流れが加速し、株式市場が大幅下落する中で、最高値圏にある金市場では利益確定の売りが優勢となった。株価急落の折に見られる現金などの流動性を確保する目的の売りを指すが、米株安の規模の割には10日の下げは比較的小幅にとどまった。前週末比14.70ドル安の2899.40ドルで終了。

 

二転三転する関税政策やそれに対する該当国による報復措置の発表(貿易戦争)など不透明要因の拡大。一方で同時進行する米政府効率化省による急激な政府職員削減策と財政支出削減予算の選定など、ここまで消費者心理を弱気に傾かせ企業もそれを察知し低下が目立っていたPMI(購買担当者景気指数)などマインド系の各種指数。

徐々に下落トレンドが出来ていた株式市場だが「売り」がモメンタムを得て加速した。我慢も限界と言わんばかりに。

 

「売り」加速の一押し(ラストストロ―)となったのはトランプ大統領の「a period of transition(過渡期)」という表現で市場は敏感に反応した。米保守系メディアFOXニュースの9日のインタビューで米国の景気後退入りの可能性を聞かれた際のもので、明確に否定しなかった、したがって悪化を容認する姿勢を示した、と受け止められたとされる。客観的には不安心理が高まっていたところに、この発言が株「売り」の言い訳(excuse)にされたということか。

ダウ30種平均は前週末比890ドル2.1%安で24年11月4日以来およそ4カ月ぶりの安値をつけた。ナスダック総合は4%安と1日の下落率としては2年半ぶりの大きさに。多くの機関投資家が指標とするS&P500種も2.7%の大幅安に。もともとS&P500種のこのところ予想PER(株価収益率)は約21倍と、2015~19年の期間に「正常値」とされていた約17倍を大幅に上回っていた。

 

この日の株式市場は前日のトランプ発言を受け、寄り付きから売られ大きく下げて取引を開始し時間の経過とともに下げ幅を拡大し、引け前にやや買い戻され終了した。 一方、NY金の方は、株価急落の中でNY時間昼までは2910ドル台の狭いレンジで推移。売り優勢になったのは午後に入ってからで、引けにかけて20ドルほど水準を切り下げて終了した。一時2885.20ドルまで売られたが、その後は2890ドル台で推移しそのまま終了。さらに水準を切り下げる動きは見られなかった。

 

株安に際し2月までの金市場では同様にキャッシュ捻出(キャッシュアウト)の売りが先行し、目立った下げに見舞われていた。最高値圏にあり利益が乗っていることもあるが、ファンドの買い越し残(ネットロング)が積み増しされていたことがある。ただし先週の大幅株安の際に目立った売りはなかった。2月末に掛けて大きくファンドの買い(ロング)ポジションの整理が進み、足元で手じまい売りは一巡していることがある。現地7日夕刻に米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータでは、3月4日時点のNY金のファンドのポジションは、重量換算で774トン(小数点以下切り捨て)の買い越しだった。1カ月前の2月4日時点では964トンだったので、190トン約20%の減少となる。ファンドの買い残整理は、一巡している。

 

なお明朝はテレビ東京(および系列とBS7)の5時45分からの市況番組「モーニングサテライト」内のコーナー「深読みリサーチ」にライブ出演予定です。6時40分頃から8分程度。番組終了後に契約者向けのネット配信「朝活オンライン」にて30分話します。こちらもライブ。

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