亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

政治リスクが高まる時間帯に突入

2020年09月29日 21時40分14秒 | 金市場
昨日の後半の続きと本日のラジオNIKKEIでも取り上げた政治リスクについて続けると、今回発生した連邦最高裁の判事の欠員は、何ゆえ、このタイミングと言いたくなるような出来事といえる。いうならば「歴史のあや」ということだろう。

報じられているように連邦最高裁の判事は、終身制で辞任するか死亡以外は弾劾があるだけで、長く職につくことになる。大統領が指名し上院の司法委員会を経て、本会議での指名承認採決という手順を踏んで職につく。今回トランプ大統領は、保守派のエイミー・バレット連邦高裁判事の指名を発表。任命権を持つ上院は、共和党が多数を占め主導権を握っている。10月12日から司法委員会の公聴会を開き、22日には指名承認採決に持ち込む意向とされる。
承認されれば最高裁判事の勢力図が保守(6)、リベラル(3)となり、今後の米国の法制は保守的色合いが濃くなることが考えられる。周知のようにトランプ大統領は民主党員の利用が多いとされる大統領選での郵便投票を不正の温床として、やり玉に挙げてきた。それが今回、降ってわいたように連邦最高裁の判事の勢力図が大きく保守派寄りに傾く事態が生まれたことで、仮に大統領選の敗北が決まった折に、郵便投票の無効性を訴え裁判で決着をつけようとの腹を固めた発言をしている。今回の欠員が発生する前から、そうした流れが予想され、投票日から相当期間次期大統領が決まらぬ政治空白が生まれる懸念はあった。それが今回の事態の発生で、現職大統領は渡りに船状態と捉え、選挙で負けても負けを認めず法廷闘争に持ち込むことを現時点で公言しているありさまだ。

野党の民主党は当然ながら、この動きに猛烈に反発している。選挙後に次の大統領が指名することが、理にかなっているとしている。前例がある。2016年に保守派判事の死亡で最高裁に空席が生じた際、共和党は「大統領選の勝者が決めるべきだ」として、当時のオバマ大統領が指名したリベラル派判事候補の承認を司法委員会の公聴会を開くことを拒否し、本会議での採決に持ち込むことすらさせなかった経緯がある。今回は立場が逆になっている。法律的には共和党の手順は合法かもしれないが、道義上の問題から米国の分断はさらに進みそうだ。

日経も取り上げていたが、「国家元首である大統領が選挙の公正さを疑わせるような発言を繰り返すのはまともではない」。郵便投票について取り上げたものだが、結局、自分が負ける選挙は不正が行われた結果であり、おかしいという主張といえる。国家というよりも、党利党略が優先され、そこに現職大統領の個人的思惑が絡んでいる。仮に、民主党の言い分が通り、次の大統領が指名することになった場合、トランプ嫌いの共和党員は目をつむってトランプに投票するという事態も考えられる。

今後の2カ月は、言うまでもなく政治リスクが高まる時間帯と言える。こうして新たな問題が発生し、市場の流れも変わっていく。米国民はどう判断するのか。。大統領は新型コロナのワクチンは10月にも承認されると豪語していたが、その10月がやって来る。



本日の放送はこちら   

http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/trendplus/trendplus-200929.mp3
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