先週末2月2日に発表された1月の米雇用統計は報じられたようにサプライズとなった。
「ちゃぶ台返し」という表現があるが、市場セントメントおよび価格動向ともに前日までとは逆の流れを引き起こしたことから、まさに「ちゃぶ台返し」ということになった。もっとも、当初は大きく下げていた米株はその後戻して、最高値を更新したので米株についてはちゃぶ台は元に戻ったということか。
1月の米雇用統計にて就業者増加数が予想前月比18万5000人増(ダウ・ジョーンズ)に対し35万3000人増と大きく上振れした。合わせて発表された時間当たり平均賃金は前月比0.6%上昇と、前月の0.4%上昇から加速し、22年3月以来の大幅な伸びとなった。
前日1日までに発表されていた、ADP全米雇用報告(民間部門)や週次の失業保険申請件数、昨年10~12月期の雇用コスト指数さらに同じ期間の労働生産性指数(速報値)などすべてが、賃金面からのインフレ圧力が後退していることを示唆していたが、それらを否定するかのような結果といえた。
10年債利回りは4.023%で終了したが、前日からの上昇幅は14.5bp(ベーシスポイント)=0.145%と1日としては22年9月26日以来の大幅な伸びとなった。前の日は3.878%と昨年12月28日以来約1カ月ぶりの水準まで低下していた。
その中で一時2083.20ドルと1カ月ぶりの高値まで買われていたNY金だったが、2050ドル割れまで売り込まれることに。それでも終値は2053.70ドルと節目の2050ドルを維持し、下げ幅は限定的なものとなった。
パウエルFRB議長にしても、FOMC後の記者会見では「政策金利はピークに到達した」とみており、「(経済の動きが予想と一致すれば)年内に政策金利の引き締めを弱めることが適切だとみている」としていたので、FRBとしても今回は利上げ政策から利下げへの政策転換をはっきりと示す意図があったとみられる。
今後の政策方針は、常に利下げバイアスの下で判断が下されることになる。
それでも今回の雇用統計の上振れは、市場の見方を、具体的には24年の利下げ回数を見直しさせることになりそうだ。
日本時間の本日午前に米CBSの「60ミニッツ」に出演したパウエル議長が今年3回の利下げ見通しを示した昨年12月のFOMCのスタッフ予想について、現時点でも変更はないと話したようだが、・・・でしょうねと思わせる雇用統計の内容だった。
本日はISMサービス業景況指数の発表があるが、これも強いのだろう。