亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

Week-Longの一掃

2011年05月09日 12時07分21秒 | 金市場

日本国内が連休中のNY市場の金価格は上げ足が止まったところから高値警戒感が一気に高まり反落状態となった。さらに取引規制が掛ったことをきっかけとする銀相場の暴落が止まらず、原油など他市場に伝染するなかで金も下げ足を速め1500ドルを割る状況となった。

 

まず5月5日のNY市場の状況から書くとコメックスの終値(通常取引)は1481.40ドルで前日比33.90ドル安となった。直近の高値(=史上最高値)は5月2日に瞬間的に記録した1577.4ドルだが5日のNYの安値が1462.50ドルとなり、高安の値幅で114.9ドル、率にして7.2%の大荒れ状態といえた。終値ベースで見て5日までの4日間で4.8%下げたことになる。ただし、同じNYコメックスの終値で見て銀は25.4%の下げとなっており、こちらは大暴落となった。元々こうした値の荒さが銀の特徴といえる。今回の銀および金の上昇相場には、ほとんど無縁といえたプラチナだが、5日迄の4日間の下げ(同じく終値ベース)は4.7%で金とほぼ同じ状態となっている。下げ局面は共に売られた形だ。

 

取り立てて悪材料が出たわけではないが、金市場が下げに見舞われたのは、銀を基点に投機的な動きに対する調整局面が訪れたことがある。

 

その銀だが上げピッチを速めたことが投資家の高値警戒感をピークまで膨れ上がらせ、上昇が止まったとたんに急速に高値が意識され反落状態に陥った。きっかけは取引所側の取引規制強化だった。銀は先々週だけで3回も証拠金の引き上げが実施された。さらにその反落が、次の下げに繋がるという典型的な下げパターンとなった。その面では、市場内での自律的な下げといえよう。

 

さて翌6日の状況だが、週末5月6日は注目の米4月の雇用統計の発表があった。結果は好悪両面の受け止め方ができるものだった。(非農業部門の)雇用者は市場予想18万5000人に対し24万4000人と2月、3月のデータが上方修正されたことから3ヵ月連続で20万人以上の増加と景気回復に力強さを感じさせるものとなった。前月比の伸びも昨年5月以来の高さとなった。同じ週に先行して発表されていた週間ベースの新規失業保険申請件数が増加する一方で、民間雇用サービス会社発表の民間雇用の伸びが予想を下回ったことから、弱含みの見方が多かっただけにサプライズとなった。

 

一方で同じ日に発表された4月の失業率は予想8.8%(前月比変らず)のところ9.0%となった。上昇は昨年11月以来となる。なかでも景気低迷でパートタイマーになることを余儀なくされた労働者や職探しをあきらめた人を含む広義の失業率も15.9%と前月の15.7%から上昇となった。6日の市況では株式など金融市場では失業率の上昇よりも、雇用の増加を好感するかたちで上昇となった。

 

この中で金市場は急落した前日の地合いとは変り落ち着きを取り戻し反発となった。

 

NYコメックスの先物価格は前日比10.20ドル高の1491.60ドルで通常の取引を終了。一般的な反応では雇用の増加は景気好転を映すとの解釈で、金融緩和策の終了を予見させるものとして金の売り材料となるが、やはり反対側で失業率が上昇したことがそれを打ち消した形といえる。基本的には、FRBによる超緩和策が当面続くという認識が市場全体に浸透していることが、金価格を支えている。海外では、むしろ緩和策が続く中で、米国景気に明るさが出るならばインフレを警戒すべきとの見方もあり、それが金価格を支えているとの分析もある。いろいろシナリオは書けるということ。

 

もうひとつ。週末6日は為替市場でドルが対ユーロで買われた・・・・というよりユーロが急落となった。前日のECBの定例理事会後の記者会見にてトリシェ総裁が早期の連続利上げに消極姿勢を見せたこと。市場は6月の利上げを織り込んでいたことからユーロの売り材料となった。さらに独誌シュピーゲル(ネット版)が、ギリシャのユーロ脱退観測を流したことが、ユーロ売りに拍車を掛けることとなった。当然ながらこのニュースはユーロ圏当局から否定されている。しかし5月4日には1.49ドル台まで上昇していたユーロは、1.43ドル台へと下落。

 

このユーロ安すなわちドル高のなかで金が上昇したのは、先の失業率もあるが、すでに週前半の下げ環境の中で(ファンドによる)目先の売り手仕舞いが一巡したことを示す流れといえよう。この6日も銀は続落となった。

 

余談だが今回の銀をはじめとする商品市況急落の中で、商品ヘッジファンドで世界最大手の英クライブ・キャピタルが原油の急落で4億ドル(約320億円)の損失を出したとの報道があった。

 

以上、本日の市況解説を参考までに掲載したが、金の場合、本文にも書いたように結果的にはweek-longの一掃が見られたということになろうか。先日2日のNYと3日のアジアを見て、下値のメドとして1480ドルと書いたが、ここまではおおむねそのような展開。その時に書いたように(インドもトップ需要期でもあるし)多少の“振れ”はあるのだが。


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6 コメント

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Unknown (fairlane)
2011-05-09 12:47:18
こういう乱高下の激しい相場は素人無用ですよね。現物の方は神経を鈍くして眺めているだけで良さそうです。損をしている人はほとんどいないはずですし。

コメックスで36万枚も出来ているようだと、もうプロ同士のぶっ叩き合いでしょうね

なんかここ最近の相場は空中戦の印象です。どうも今ひとつピンと来ないです。



だんだん原発事故に慣れつつあります。そろそろ金相場ウオッチに戻らないと。。。 
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Unknown (shibahara)
2011-05-10 01:01:34
いつも有益な情報大変有難く拝読させていただいております。下げは一時的なものであるとの御分析と理解致しました。それにしても原油にそこまでの投機資金が入っているということは、相当な商品市況の盛り上がりですね・・・ドル円は先行きが読みずらいですが、6月のQE2終了がどういった影響を及ぼすかで、円建金もまた面白い展開になりそうだとの感想を得ました。今後ともどうぞよろしくお願い存じます。
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Unknown (こがねむし)
2011-05-10 13:44:47
RMB建てで少し買い足しました。
前回覚えがあるのは、銀がたしか50円だったが、いまやリサイクル価格で90円ですか!

こちらは春が短く、連日35℃を超す真夏日です。半袖、クーラー、そして西瓜をよく食べてます。
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QE2終了でFRBは米国債をもう十分買えない!? (Kファン)
2011-05-11 15:37:00
現在FRBは、FRB(財務省)の刷ったドル札で国債購入に充てている金額も多かろう?
QE2終了後RRB保有のMBSや国債の償還資金だけで国債を以前と同じように大量に買うことができるのだろうか?
やはり、7月からはばら撒かれるドル札は格段に減少するのではなかろうか?

どうも、FRBが行っている国債の買入れやドル札の発行などの実態が正直よくわからない。

世間では、FRBのBSに変化はなく過剰流動性に変化はないと言っていて、私もそう思ってはいるが、そもそもFRBのBSなどを見たこともないし、実態は不明だ。

過剰流動性はさておくとしても、新規・既発の国債買取資金は大幅に減少するのではないか?
減少しないなら、それはQE2継続と同じということだろう?

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銀現物買い多数 (botton)
2011-05-11 19:39:13
昨10日銀現物買いに行きましたが
現物がなく(10キログラム)に小分けした銀
注文しましたが約1ヶ月位で納品とのこと
販売店曰く普通の人の買いが大変多いとのこと
参考になればとメールします。
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中国の金 (金河鉄道999)
2011-05-12 23:11:15
こがねむしさん、いかがおすごしですか?
中国も計画停電があるみたいですか・・・。
RMB建ては中国のバーですか?
LBMA認定品あるのでしょうか?
中国の金投資も盛んらしいですね。

日本は今から復興です。
金地金少し売りました。
すこし募金してきました。

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