ここでは昨夜、ギリシャ問題は言われているほど簡単には行かないのではとした。しかし、26日のNY市場は株もドルも買われ、一方で金は売られた。
後講釈的には、ギリシャの選挙というイベントが事前予想通りの結果に終わり、材料出尽くしで益出し売りということだが、今後のギリシャ情勢に関連した市場の混乱も心配されるほどには大きくはならないのではとの楽観論が支配していることがある。
まず、すんなりと内閣が誕生したこと。
急進左派連合(SYRIZA)は、(緊縮疲れの)ギリシャ国民の支持を集め勝利し、300議席のうち第一党に与えられるボーナスの50議席を与えられたものの149議席と過半数に達しなかったものの、同じ緊縮反対を唱え13議席を獲得した右派政党「独立ギリシャ人」と連立を組むことに成功した。早期に組閣できない場合には、再選挙ということだった。
さらに、急進左派連合のチプラス党首が、ユーロ圏からの離脱は考えていないと伝えられていることがある。ならば、妥協する可能性があることになる。加えて、これまで2度にわたるギリシャ危機を経て、ユーロ圏では基金の創設などいわゆるセーフティ・ネットの整備が進んだことから、南欧諸国への波及はなく、仮にギリシャのユーロ圏離脱があっても波乱はある程度抑えられるとの楽観的な見方が支配的なようだ。もちろん直近に採用されたECBの(大型)量的緩和策の存在は言うまでもないだろう。
こうした見方が支配する中で、欧州株が上昇し、主要国の国債が買われ金利低下という流れがさらに進んだ。この中で金市場では売りが出た。
果たして、楽観通りに事態は進むのか?
今回急進左派の「SYRIZA」は、政治信条が大きく異なる右派の「独立ギリシャ人」(ANEL)との連立を組んだのは、強力な「緊縮策反対」の一点にあると見られる。これに対しドイツはじめEU(欧州連合)は、妥協しない厳しい姿勢で臨む可能性が高いと見られる。妥協は、各国で高まっている(緊縮疲れの)国民の不満を背景にした右派政党の台頭を助長する可能性がある。また、構造改革に緩みが出るとの見方もある。そもそも、これまでギリシャには十分配慮して譲歩してきたとの思いもあろう。
26日に、ロイターが伝えたドイツのショイブレ財務相の言葉は、これからの交渉過程で、市場を揺るがす動きが出る可能性を感じさせるものだった。
以下、抜粋。
・チプラス氏がユーロ圏の支援資金を望まないのであれば、ギリシャの問題解決に向け「異なる方策を見い出す」必要がある。
・「ユーロ圏の支援プログラムは(ギリシャ)政府の要請に応じて発動されてきた」、「われわれから支援を受けたいのであれば、ギリシャから要請することになる」。
・「望まない国に対し救済措置がとられたことはない」、「チプラス氏が要望しないのであれば、それは結構なことだ。もしそうなれば、同氏はギリシャの抱える問題を解決するために別の手段をみい出す必要がある」
つまり、そっち(ギリシャ側)からの要請で支援したもので、そもそも条件(緊縮策)が飲めないのであれば、手を引くので別の支援先を探してくれ・・・つまり出て行ってくれ!という話。主張は明快で、突き放した印象を強く受けるもの。もちろん、今後の交渉を考えてのことで、本格交渉の前哨戦ということだが、折に触れ、こうした話が飛び出し、市場を揺るがす事態となりそうだ。
それにしても日本時間の22時30分に発表された、12月の米耐久財受注は悪かった。