亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

やはり出てきたIMF保有金売却提案

2021年06月15日 20時55分04秒 | 金市場
週明けのNY金は続落ということに。前週に水準を切り上げたドル指数(DXY)はほぼ横ばい。10年債利回りも、やや上昇したとはいえ前週末比で6bp(=0.06%)ほどの上昇で1.498%と1.5%を下回る状況にある。つまり、金を売る手掛かりが増えたわけではない。本日から始まる米連邦公開市場委員会(FOMC)では、現行の大規模緩和策は維持される見込みだが、市場が関心を寄せているのは、今会合にて量的緩和の縮小(テーパリング)の議論を始めるのか否かということ。何度も書くが、金市場では、何らかの議論が行われるとの警戒感が先行し、結果を前にファンドが取引を手仕舞う動きが続いているとみられる。

13.70ドル安の1865.90ドルで終了したNY金だが、アジア時間からロンドンさらにNYの早朝、通常取引入りの時間帯にかけて水準を切り下げながら相場は進行した。1870ドル、1860ドルさらに1850ドルと節目を下回る際に、目立った抵抗もなく、かといって売りが加速することもなく淡々と下げる珍しい展開となった。NYの通常取引に入って底打ち反転したが、安値は1845.70ドルだった。昨日はここに「200日移動平均線が1845.10ドルに位置しているが、心理的抵抗ライン1850ドルは維持したいところだ」と書いた。その200日線で止まり、反転、しかも薄商いだったのだろう1870ドル超まで急反転となった。心理的な節目の価格1850をさしたる抵抗もなく下回ったものの、移動平均線というテクニカル要因に反応したのは、ファンドのロボット・トレードのなせる業だろう。終盤は1870手前で揉み合いで終了ということに。本日15日は、なんとアジアから現時点でNYの午前7時半だが、終日1860~1870ドルの10ドルの範囲にとどまる相場となっている。

昨日から一部で騒がれているニュースに、IMF(国際通貨基金)が保有する2814トンの金の売却話がある。今回の英コーンウォールでのG7サミットに際して、フランスのマクロン大統領がエリゼ宮(大統領官邸)にて事前に(6月10日に)行った記者会見の内容が、仏外務省の公開文書で明らかになり話題となった。

内容の中に、重債務最貧国のカテゴリーにある諸国の中で、アフリカ諸国に絞った援助を呼びかけるくだりがあった。SDRというIMF加盟国が有する特別引き出し権でドル資金を、それら諸国に融通しようというもの。その原資にIMFが保有する金準備の一部を売却して当てようという提案が含まれていたもの。コーンウォールの会合では実際にどう話し合われたかは不明。ここまでのところ知る範囲で、G7に関連するメディアにも取り上げられていない。

もともと昨年春以降の新型コロナパンデミックの中で、いずれIMF保有金売却案が持ち上がる可能性は、想定されていたこと。手前味噌だが事実なので書いておくと、昨年上梓した拙著「通貨の凋落で金急騰がはじまる!(宝島社2020年8月)」にて、新型コロナ禍の中で売却案が浮上する可能性があるとしてIMF保有金についてまとめておいた(61ページ以降)。

昨年の夏ごろまでは危機に瀕した新興国の中で、通貨危機などに見舞われるところが出るのではと警戒モードにあった市場だったが、杞憂に終わっていた経緯がある。

アフリカ諸国に対して手を差し伸べることは、バイデン新政権も賛成方向とみられるが、実際の保有金売却には高いハードルがある。85%以上の投票権(賛同)を得る必要があるが、米国一国で17.4%を持っていることから、米国の賛同を得る必要がある。この場合政権でなく米国議会となる。もっとも、仮に米国が賛同しても85%に達しなければ売却できない。以前であれば米国の賛には異を唱える国は少なく絶対だったが、トランプ前政権の強硬な自国中心主義などもあり状況は変化している。

ちょうど6月10日の記者会見でマクロン大統領が語った翌日からNY金の下げ足が速まっていることから、このニュースが下げのきっかけとする見方があるが、それは違うと思う。なぜならフランス大統領府の提案は1カ月前に明らかになっていたことがある。見過ごされるほど関心を向けられていなかったニュースに盛り込まれていた。

このIMF保有金売却に関連する話題は、文章では長くなるのでポッドキャストかYouTubeにて、近々取り上げる予定。


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