亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米「決められない政治」と「決まらない大統領」

2020年10月05日 19時02分45秒 | 金市場
市場は、トランプ大統領の症状の経過に注意を向けながら、やや様子見のスタンスに入っている。4日の記者会見で主治医は、週明け5日にも退院する可能性があると説明。ただ入院時の記者会見での楽観的なコメントはやや後退し、「(健康状態に)頻繁な浮き沈みがある」としている。またステロイド剤(デキサメタゾン)の投与を始めたことを明らかにしたが、米国立衛生研究所(NIH)は同薬について、人工呼吸器が必要な重症患者などに使用を限るように推奨していることから、同大統領の症状は説明されているよりも重い可能性があるとの指摘が見られている。リジェネロン社の「抗体カクテル療法」も取り入れているようで、かなり効果は期待できるとされる。それでも個体差や基礎疾患の有無などで効果は変わるのだろう。今後の選挙関連のスケジュールや選挙結果に影響を及ぼすのは必至につき、今回の件は、いわゆるアノマリーともややニュアンスが異なるが、毎度の選挙投票日前に現れがちな「オクトーバー・サプライズ(October Surprise)」となった。

当面は大統領の今後の症状により状況も変化しそうだ。老体にもかかわらず選挙戦をにらみ無理をしているように見受けられ、選挙自体の混乱度合いが回復までの時間によっても変わりそうで市場は静観といったところか。郵便投票に異を唱えていたゆえに、投票日から次の大統領が決まらないペンディング状態が長引けば、その後の対応策も取れなくなり、いわゆる政治的不透明感ということで荒れることを前提に組み立てようとしていた。

(各市場共通するので)金市場の視点というわけでもないが、どちらが大統領になっても拡張財政という点では同じで、すでに指摘されているように民主党の方がトランプ2期目を上回るとみられる。トランプ2期目は減税も掲げているので、財政支出は多少抑えても財政赤字の拡大は避けられないだろう。もともと社会保障費が急拡大するのは、10年ほど前から想定されていたことだし。議会選の結果がどうなるかといことも、この双方の政策路線を巡り財政赤字がどのように拡大していくのかを見る上でポイントになる。民主党もクオモ(NY州知事)とか、ブルンバーグの方が面白いいことになったのではと正直思う。

大統領の感染問題で市場の関心が薄れることになったが、この日は注目の9月の米雇用統計が発表された。NFP(非農業部門雇用者数、Non Farm Payrolls)は前月比66万1000人増と市場予想の85万人増を下回った。また8月の148万9000万人増から大幅に減速することになった。回復を始めた5月以降で最少となる。6月に478万1000人増加した後、鈍化傾向が続いており、コロナ禍前の水準と比較すると、なお1070万人もの雇用が失われている。失業率は7.9%と前月の8.4%から改善。予想の8.2%も下回った。ただし、仕事探しを諦める人が増えたり(労働参加率の低下)、「雇用されているが休職中」の人の扱いなど、データよりも実態は悪いとの指摘もある。

今回の内容は、毎週発表される週次ベースの失業保険新規申請件数の高止まりなどを合わせ、労働市場の回復が失速気味であることを示唆することから、追加の財政刺激策が必要なのは明らかだろう。にもかかわらず、追加法案を巡る米議会の話し合いはこう着状態にある。

9月末で航空業界の支援策が失効したのに伴い、アメリカン航空とユナイテッド航空は今月中に計3万2000人超の人員削減に着手する方針を示している。これに対し、2日は、民主党のペロシ下院議長が、米航空業界向けの250億ドルの追加雇用支援策を巡る合意が「目前に迫っている」と述べた伝わったが、その後追加情報はない。全体の支援法案から切り離して成立させるのか否かも不明。ただし、9月30日夜にアメリカン航空のパーカーCEOが、ムニューシン財務長官からこの日、協議が「数日内に合意の可能性がある」と説明されたと語っている。どの程度の見込みで語っているのか、早晩明らかになる。

いずれにしても以前から書くが、「決められない政治」が続いている。そこに今回は、「決まらない大統領」問題が加わる。

本日は、NY時間外の現時点で、10年債の利回りの上昇が目立っている。ほとんど反応してこなかったのに、何ゆえ。
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