亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

クリフ・ハンギングのNY金

2023年07月07日 19時56分18秒 | 金市場

6日のNY時間早朝に発表された企業向け給与計算サービスADP発表の6月の全米雇用報告(民間部門のみ)はサプライズになった。

報じられているように(非農業部門の)雇用者数が前月比49万7000人増と5月の26万7000人から大きく拡大し、市場予想(22万人)の2倍以上となった。昨年2月以降1年超ぶりの大幅な伸びとなる。娯楽・レジャー産業を中心にサービス需要の根強さを映し出した。

この日、ISM(米供給管理協会)が発表した6月の非製造業(サービス)景況感指数も53.9と市場予想(51.3)を上回り5月50.3を大きく上回った。やはりサービス業を中心に米経済は底堅いとの観測が強まった。こうした結果を受けて本日7日に発表される労働省の雇用統計の雇用者増加数の予想を引き上げるところも出ている。労働需給の逼迫が高インフレの継続につながることが改めて警戒されることになった。

 

この日コロンビア大学での講演で、ダラス連銀のローガン総裁は「6月に利上げを行うことは、ここ数カ月のデータのほか、FRBが担う二重の責務(物価の安定と最大雇用)の目標に合致しており、完全に適切だった」とした。見送らず利上げも可能だったと。 一方で、「困難で不確実な環境」を踏まえると「1回の会合で(利上げを)見送り、より緩やかに進めていくことは理にかなう」ともした。年内あと2回の利上げを実行に移すことが重要としている。それでも「インフレが持続的かつタイムリーに政策目標に戻るか依然として非常に懸念している」とした。

こうした発言もあり、米金利先物市場が織り込む利上げの確率「フェドウオッチ」で、7月の利上げ確率は9割強に達している。

 

早朝のADP発表直後にNY金は20ドルほど急落した。目を引いたのは米債市場で、10年債利回りは一時4.085%と3月2日以来4カ月ぶりの高水準を付け4.038%で終了。

金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは一時5.145%と2007年6月以来16年1カ月ぶりの水準に上昇した。

金利のピークアウトを見込んでいた投資家(ファンド)が投げ売りし、売りが売りを呼んだ展開とみられる。本日の6月雇用統計の結果次第では、値動きがさらに広がる可能性がありそうだ。

 

ちなみに前回2年債がこの水準まで上昇した時期2007年6月は思い当たる人も多いだろううが、サブプライムローン問題が浮上したタイミングで、その後2008年の金融危機に進むことになった。「This time is different.」ということになるのや否や。

 

そう考えると四面楚歌ともいえる環境下で先週のような1900ドル割れを試すまでには至らず、1910ドル近辺では押し目買いも見られたNY金の意外な底堅さも理解できそうだ。

クリフ・ハンギング(Cliff hanging)とでも表現できるゴールドだが、じっと耐える展開で今夜の雇用統計を迎える。

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