結局、先週のドル建て金価格の独歩高は、アルゼンチンペソの急落をきっかけに表面化した新興国からの資金逃避懸念の高まりを先取りしたものだった。昨年5月のバーナンキ議長によるTapering開始意向と終了の時間的メドの表明が、その後の金融市場の波乱につながったのは記憶に新しい。当の米国でも長期金利が急騰(国債価格が急落)し、住宅ローン金利の上昇からその後の住宅市場の抑制要因となった。当時の市場の(おそらくFRBからすると過剰な)反応に警戒感を抱いたFRBは、相当神経を使って12月のFOMCにてtapering着手を決めたはずだ。当座は平穏に時間は流れ、株は最高値の突破を続け、反対側で金は2013年央の安値をのぞきに行った。
今回の市場の動揺はこれで終わると思われるが、結局、危機のピークから5年以上経過してなお回復の脆弱性を印象付けたということか。そのうち次の波乱がやってくる。思うのは米国の住宅市場についても、このまま2006あるいは2007年当時のピークには戻らないということ。普通に考えて当時は頭打ちになった需要を、ローンを組めない人々にまで組ませるスキームを作り、力技で需要を作り出した結果の価格の高騰や販売戸数の記録更新だった。それに際してリスクを飛ばすニーズの高まりに金融工学の理論家が待ってましたとばかりに乗り込んできて証券化ビジネスを一気に高みに上らせてしまったということだろう。そこではマネーの回転回数が異常に高まり、結局モーターは焼き切れてしまった。
そして焼き切れて回転数がガタ落ちしたモーターのコイルを巻き直したのがティモシー・ガイトナーであり、これでもかとオイルを差したのがベン・バーナンキだった。2人ともFOMCを仕切った間柄だった。困ったのは修理したモーターが元と変わってしまい、オイルを多量に差し続けなければならないものになってしまったこと。実は注入を減らしたら回転数はどうなるか誰にもわからない。今は、過剰オイル状態に慣れた人々が減らせば落ちると思っていることが問題なのだった・・・。
こんなこと書こうと思って書き始めたわけではないんだけど・・・。金価格の上昇はショートカバー主導ドシタ。。