亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金にリズムが出てきた

2019年06月12日 20時56分18秒 | 金市場
昨日は午後3時から5時までの2時間、丸の内の日本工業倶楽部にて5月初めに発表されたデータをもとに金市場の需給の推移と価格動向についてまず1時間。休憩をはさんで、金市場を取り巻く政治および金融環境についての注目点についての話を1時間、話をさせてもらった。5月以降に市場動向も環境も大きく変化してきており、さらに来週のFOMC、そして月末のG20サミットでの米中首脳会談の有無や、内容などイベントを通過することで、金市場の展開も大きく変わる可能性が高まっている。7月上旬にかけて発表される指標の重要性も増している。一言で表せば、米長期金利(10年債利回り)は、上下を繰り返しながらも下降トレンドを続け、ドル指数(DXY)は低下、金は上値追いとなると思う。

トランプ政権がメキシコ産品への制裁関税の見送りを発表したことを受け、リスクセンチメントが改善。加えてこの事態への連想から対中交渉への楽観論も浮上し、前日に続き11日の金市場では売りが先行する流れとなった。ただし、一時は1320ドルに接近するも売りが一巡するのも早く、むしろ押し目買いに最終的にはプラス圏に浮上し、そのまま小幅ながら上昇で取引を終了した。NY金にリズムが出てきた。

5月の金関連のセミナーにて円建ての4500円前後は買いとし、5月20日のここにも「4500円まで下がった金は魅力的に映る」と書いた。いつものようにドル円の下落(円高)が逆風となったが、それを跳ね返しやっと4600円台に乗ってきた。この水準になると消費税分8%を乗せると5000円を超えるので、現物の売りが増えるのが国内の特徴となっている。ただし、国際的には無視できるほどの規模なので、国際価格(ドル建価格)に目立って影響を及ぼすことはない。目先は“米中”がどう転ぶかで、市場内とりわけ株式市場のリスクセンチメントが変化し、金はその影響を受けることになる。仮に米中が貿易面だけにしろ落としどころを見つけたとしても、陰り始めた景気動向は止めることができず、FRBは利下げへの政策転換を迫られることになるのではないかと思う。つまりNY金の水準切り上げは続くと思われる。

米中首脳会談については様々な憶測が広がっている。習近平主席がG20サミットを欠席との悲観的見方から、このところの発言内容から株価への潜在的なダメージを回避するためトランプ大統領が追加関税の発動を先送りするとの楽観的見方まで幅広い。ただし、10日にはペンス副大統領が、我々は中国に関して非常に強い立場にあるとし、強硬な態度を続けるとしている(FOXニュース)。いずれにしても通商協議が物別れに終わった場合は、米国は残り3000億ドル規模の中国製品への関税を発動し、世界経済悪化の懸念が一気に高まることになる。米中双方にとって避けたい事態につき、最終的には妥協を図るというのが合理的判断であり楽観論の背景となっている。

この点で、トランプ大統領の経済顧問の国家経済会議(NEC)クドロー委員長が11日のインタビューで、「米国経済は強い」、「中国と合意しなくとも米国経済は今年3%成長が可能だ」と強気の見方を示していることが目を引いた。

大国主義の中国政府は「メンツ」を重んじることから、プレッシャーを強めれば強めるほど、それに屈したように見える妥協や譲歩はしない傾向があるので見ものではある。
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