亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金に負ける円(果敢にリスクを取る日銀) 

2020年04月27日 20時48分36秒 | 金市場
日銀が国債の無制限購入を決めた。通貨のさらなる増発を意味する政策は円安要因ではあるが、先行して可能性が報じられていたこともあり、発表直後にもドル円はさして反応しなかった。その後、じりじりとむしろ円高方向に動き107円に接近する流れとなっている。もともと年間80兆円をめどにした買取りを掲げてきたが、半分も買えていなかった。

もっとも、円安に反応しないのは、(日銀の遥か)後から来て追い越していったFRBのこの2カ月間での“むちゃくちゃな”と表現したくなる超緩和策への転換がある。なんせ、「年間80兆円をめど」としていた日銀だが、一方のFRBがこの1カ月(3月18日~4月22日)で買取資産は1兆9049億ドル(204兆円)増えていて、国債に限れば1兆2686億ドル(約135兆円)にも上るからだ。この1カ月に・・だよ。恐慌阻止なので、これくらいの規模になるのだろうという他ないが、これだけのドルを撒けばNYダウだって半値戻りくらいするだろう・・という感じだ。日銀がこれから無制限に円を撒きますといっても規模感の違いは明らかで、足元で円安に反応しないのもわかろう。

日銀は同時に企業金融分野のサポート策を厚くする方針も発表した。社債やCP(コマーシャルペーパー)などの買い入れをこれまでの3倍に増やし20兆円に拡大するというもの。これまで社債買い入れは1~3年までだった残存期間(償還期限)を5年まで延長するとした。それだけリスクを取ることになる。発行体(発行企業)あたりの買い入れ限度額も拡大するとのこと。その他も含めて早い話が、日銀がリスクを取って資金支援に回るというもの。この辺りは4月9日に、FRBがジャンク債(投資不適格級社債、ハイイールド債)まで買い入れ対象としたので、中銀といえど今やこの程度のリスクを取るのは止む無しということか。平常時ならあり得ないことも、緊急時につきOKなんだと。。いうことで。

さてFRBにあって日銀にないもの。それがこの企業金融分野のスキーム(制度設計)の違いにある。FRBの場合、特別目的会社(SUV)を作り資金を回し、このSUVが社債なりCPなりを買い入れることになる。どの銘柄をどの程度買い入れるかはアドバイザーに委託している。アドバイザーは(今回も)運用会社ブラック・ロックがあたる。問題はここからだが、買い入れた社債などがデフォルトになったら、どうする?FRBが損失を出したらドルはどうなる?そこに仕掛けがあって、SUVには米国財務省が引当金のようなものを拠出しており、仮にSUVが損失を出してもこの範囲でカバーされることになっている。では財務省はどこの資金を回すのか?新型コロナ対策として米国政府は、先ごろ2.2兆ドルの財政支出を決めたが、その中に確保した資金を回すことになっている。つまり、FRBには影響が出にくい仕組みになっている。

我らの日本銀行の買い入れには、この仕組みがない。最後に残った金に負けていない通貨「円」も、負ける日が早晩やって来る。
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