このところユーロ圏や米国がらみの週末のイベントが続いている関係で、金の世界も欧米の日曜夜の時間帯にあたる日本時間の週明け月曜日の午前7時台に急な値動きが起きるということが続いている(Globex)。今朝は急落で始まった。言うまでもなく膠着していた連邦債務引き上げ問題に合意の動きありという報道が材料だった。週末金曜日に米4-6月期GDPサプライズを材料に金は1637.50ドルまで跳ねた。そのまま時間外でも債務上限問題の決着がついていなかったことも手伝い、1630ドル台で終了。ドル円とは異なり、引けのどたん場の薄いところを力技で売られたりということもなかった。
債務上限引き上げ問題は合意を前提に金価格は組み立てられているものの、それでも“よもや”という思惑組もいて多少のプレミアムはついているといったところ。ただし基本的には、7月後半の急騰劇に対して益出しのタイミングを狙っているといえる。
さて7月11日のここに「現実と化する、投機的攻撃の目的(今は周りの方がヨロシクナイ)」と題して書いた。そこに「円高とドル建て金高の綱引き。早晩80円割れが常態化して、ふたたびドル買い派は水浸しに。どこまで行っても、より優れた他国の存在を意識し、自国に自信が持てないニッポンジン。確かに日本の状態はヨロシクナイ、ヨロシクナイけど、今は周りの方がヨロシクナイ」とした。結果的には、その直後からドル円は70円台に入って、そのまま定着した状態になった。
ドル円には一貫して弱気してきたが、基本的には2000年を境に「曲がった国」という捉え方をしている。もちろん米国は今でもスーパーパワー国だが、やはり「曲がった国」ゆえに最大評価をされていた通貨も落ちて来た。また、ここにきて通貨を落とすことによって本体を浮上させるという本末転倒的な事態に至っている。今月でニクソン・ショックからちょうど40年になる。つまり管理通貨制度のとば口に立ってから40年経過し、その下での市場経済も曲がり角というイメージだ。
為替は言うまでもなく相対的なもの。このところの材料は、国家としての“稼ぐ力”すなわち経常収支の質と量がどの程度かという部分にスポットが当たっていると見ている。そもそも稼ぐ力が劣っているにもかかわらず、借金を積み上げて来た国で構造的に弱いところから“ほころんできた”。それがギリシャをはじめとする国々。日本のように膨大な借金を抱えながらも過去の遺産ともいえる対外純資産のお陰もあり、安定的な稼ぎを得ていることで、相対的な優位性を保っている国もある。この“稼ぐ力”が返済の能力の差と捉えられ、安定して稼いでいる国は安全といった視点が高まったのは、昨年のギリシャ・ユーロ危機以降のこと。今やかつて持てはやされた“金利差”など優先順位がぐんと下がったというわけだ。
ドル円に関しては、そもそも世界最大の対外債務を抱え、このところ恒常的に莫大な経常赤字を垂れ流している国が、ゼロ金利にして、しかも量的緩和策に踏み込まざるを得なくなったことが、相対的に相手側(円)を押し上げている構図となる。
足元でいえば、連邦債務上限問題に決着がつき、デフォルトを避けられたとしても、そもそもそれ自体がイレギュラーであって、それをもってドル円の流れが変るわけではないということになる。介入をしても、対症療法のようなもので、当座の効き目を得られるのみ。いまの構造が変わるわけではない。
写真は、今週号(2011年7月30日)の英エコノミスト誌(The Economist)の表紙写真。タイトルは“Turning Japanese(日本人になる)”。最近の米欧の政治の混乱は、なにやら日本に似てきたぞ・・という話。「日本は改革を避ければ避けるほど、実現が難しくなった」。稼ぐ力が弱ると日本の問題は噴き出す。だから、当面はそこが要と思う。
日本の経常赤字へのシナリオはどのようなものなのでしょうか?
日本は経済財政問題だけではなく、原子力や、自然災害の脅威とも戦わなくてならないです。本当に大変です。お金があれば何とか暮らせるという訳でもなさそうです。
中国経済が米国債券を仕込むスピードは日本よりスゴイみたい。通貨安競争が米国債券を支えてる状況みたいな感じがする。だから…