日本が連休中の先週末から週明け21日にかけて、欧米株式市場が急落状態となったことをきっかけに、リスクオフの(対ユーロを中心とする)ドル買い(ユーロドル売り)が進み、金市場は売り優勢の流れが生まれることになった。週明け21日の金市場は前週末比51.50ドル安の1910.60ドルで取引を終えたが、終値ベースでは7月24日以来の安値だった。また取引時間中に一時1885.40ドルまで売られたが、これは8月12日以来(1974.20ドル)の安値水準であるとともに、取引時間中としても初めての1900ドル割れだった。
株安の流れを受けたドル高が金売りを先行させたが、ユーロドルの動きを反映しやすいドル指数(DXY)の動きに沿ったファンドのAIプログラムによるロボットトレードが、このとこと金市場の目先の方向性を決めている。ドル指数はこの日約2カ月ぶりの水準となる94ポイントに接近した。
週明けの株安のきっかけは、欧州株の大幅安だった。英国やフランス、スペインなど欧州諸国で第2波を思わせる新型コロナ感染拡大が見られていること。再び経済封鎖の措置が取られるなど経済の先行き懸念が高まっている。さらに、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)など複数のメディアが20日、欧米複数行が20年近くにわたり違法とされる巨額資金移動(マネーロンダリング)にかかわっていたと報じたことも、地合いを悪化させた。ドイツ銀行などに加え、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)の米銀も含まれているとされ、市場センチメントを一気に悪化させた。
欧州の流れは、そのままNYに引き継がれ、NYダウ30種平均が一時、前週末比900ドルを超える水準まで安まで売られるなど、波乱の中で金も売られた。こうなると、再びキャッシュアウト(現金捻出)の金売りを連想させるが、率直に言って、それほどの売り圧力の強さではないように思われる。
米国株の下げ幅が当初拡大したのは、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、政府の対応が後手に回ることを懸念してのもの。米連邦準備理事会(FRB)高官が「予想以上の戻り(パウエル議長)」と評するほど好調に回復基調をたどってきた経済の先行きに、不透明感が高まっている。7月末までの成立を目指していた新型コロナ支援追加法案が難航を重ね、共和・民主両党の対立は歩み寄ることなく、いまなお成立の目途が立っていない。11月の選挙を控え米議会は9月末に休会に入ることから、市場は「合意なし」を織り込みにかかっている。
双方が主張する予算規模は、5000憶ドル~2兆2000億ドルと大きな開きがあるが、いずれにしても大統領選以降に先送りされることは、当面の米国経済には大きな需要が抜け落ちることを意味する。「財政の崖」と表現されるが、当面の景気回復に水を掛けることは必至と思われる。先週後半から今週初めの米国株急落は、それを警戒してのものだろう。そこに、9月末の四半期末のポジション調整の売りが重なっている。
NY金の下げについても、株価急落の折に見られる金の益出し売り(キャッシュ・アウト)が連想されるが、こちらも四半期末の先物市場でのポジション調整という側面が指摘できる。先週末時点でもNY金の年始からの上昇率は、約29%となっているから、益出しの対象になりやすい。
9月21日の金市場でまさに刮目したのは、金ETF(上場投信)の最大銘柄、「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」の残高が1日で31.83トンと急増したことだった。1日の増加としては今年に入って最大で、2019年6月21日(34.93トン)以来の増加高となる。急落に買い向かったという点で、利益確定の売りが先行した先物市場とは異なった展開は、やはり中長期の視点での資金流入を思わせるものと言える。なお、9月22日のNY金は株式市場が下げ止まりとなる中で、ドル指数はなお高止まり、前日比3ドル安の1907.60ドルで終了となった。そして本日、現時点で日本時間の午後10時でNY金は通常取引入りをしているが、8月12日に記録した安値に接近している。終値ベースでの1900ドル台維持。直近のザラバ(取引時間中)安値を更新しないという2点にセンチメント上の意味がある。これから始まる株式市場の状況に影響を受けそうだ。
週明けに「一時104円まで売られたドル円と、NY金の1900ドル割れが重なり6300円台に落ちた円建て金価格。8月初めに至る上昇相場に乗り遅れたと思った向きには、買いに入るチャンスだと思う。
株安の流れを受けたドル高が金売りを先行させたが、ユーロドルの動きを反映しやすいドル指数(DXY)の動きに沿ったファンドのAIプログラムによるロボットトレードが、このとこと金市場の目先の方向性を決めている。ドル指数はこの日約2カ月ぶりの水準となる94ポイントに接近した。
週明けの株安のきっかけは、欧州株の大幅安だった。英国やフランス、スペインなど欧州諸国で第2波を思わせる新型コロナ感染拡大が見られていること。再び経済封鎖の措置が取られるなど経済の先行き懸念が高まっている。さらに、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)など複数のメディアが20日、欧米複数行が20年近くにわたり違法とされる巨額資金移動(マネーロンダリング)にかかわっていたと報じたことも、地合いを悪化させた。ドイツ銀行などに加え、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)の米銀も含まれているとされ、市場センチメントを一気に悪化させた。
欧州の流れは、そのままNYに引き継がれ、NYダウ30種平均が一時、前週末比900ドルを超える水準まで安まで売られるなど、波乱の中で金も売られた。こうなると、再びキャッシュアウト(現金捻出)の金売りを連想させるが、率直に言って、それほどの売り圧力の強さではないように思われる。
米国株の下げ幅が当初拡大したのは、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、政府の対応が後手に回ることを懸念してのもの。米連邦準備理事会(FRB)高官が「予想以上の戻り(パウエル議長)」と評するほど好調に回復基調をたどってきた経済の先行きに、不透明感が高まっている。7月末までの成立を目指していた新型コロナ支援追加法案が難航を重ね、共和・民主両党の対立は歩み寄ることなく、いまなお成立の目途が立っていない。11月の選挙を控え米議会は9月末に休会に入ることから、市場は「合意なし」を織り込みにかかっている。
双方が主張する予算規模は、5000憶ドル~2兆2000億ドルと大きな開きがあるが、いずれにしても大統領選以降に先送りされることは、当面の米国経済には大きな需要が抜け落ちることを意味する。「財政の崖」と表現されるが、当面の景気回復に水を掛けることは必至と思われる。先週後半から今週初めの米国株急落は、それを警戒してのものだろう。そこに、9月末の四半期末のポジション調整の売りが重なっている。
NY金の下げについても、株価急落の折に見られる金の益出し売り(キャッシュ・アウト)が連想されるが、こちらも四半期末の先物市場でのポジション調整という側面が指摘できる。先週末時点でもNY金の年始からの上昇率は、約29%となっているから、益出しの対象になりやすい。
9月21日の金市場でまさに刮目したのは、金ETF(上場投信)の最大銘柄、「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」の残高が1日で31.83トンと急増したことだった。1日の増加としては今年に入って最大で、2019年6月21日(34.93トン)以来の増加高となる。急落に買い向かったという点で、利益確定の売りが先行した先物市場とは異なった展開は、やはり中長期の視点での資金流入を思わせるものと言える。なお、9月22日のNY金は株式市場が下げ止まりとなる中で、ドル指数はなお高止まり、前日比3ドル安の1907.60ドルで終了となった。そして本日、現時点で日本時間の午後10時でNY金は通常取引入りをしているが、8月12日に記録した安値に接近している。終値ベースでの1900ドル台維持。直近のザラバ(取引時間中)安値を更新しないという2点にセンチメント上の意味がある。これから始まる株式市場の状況に影響を受けそうだ。
週明けに「一時104円まで売られたドル円と、NY金の1900ドル割れが重なり6300円台に落ちた円建て金価格。8月初めに至る上昇相場に乗り遅れたと思った向きには、買いに入るチャンスだと思う。