週末8月18日のNY金は10営業日ぶりの反発に。
前日までの9営業日続落は2017年3月10日まで続いた続落に並ぶもので、今回はこの間に60.90ドル、3%の下げとなっていた。主要な経済指標の発表のない中で、米長期債への売りが一服し、利回り上昇も止まり、さすがに金市場でも買戻しの動きが出ることになった。しかし上値は重く、NY時間外の早朝および通常取引入り後の午前の中ごろに買い優勢に転じたものの1926.00ドルまで付けるのが一杯だった。終盤には上昇幅を削り前日比1.30ドルと小幅高の1916.50ドルで終了した。
米債市場も6営業日続落の後の反発で、週末を控えポジション調整の買いに利回りは小幅に低下という印象だった。市場はもう一段安で10年債利回りが昨年10月に付けた4.325%(ダウジョーンズ)を超え、2007年以来の高水準に達するか否かに注目している。ただし、終値ベースでは2008年以来15年ぶりの高水準に達している。
先週の7月小売売り下高もそうだったが、発表が続く米国指標は景気の想定以上の底堅さを示しており、FRBの金融引き締めが長引くとの見方が強まっている。
市場の関心は、いまや「どこまで利上げする」から、(22年ぶりの高水準に引き上げた金利を)「どこまで長く維持する」かに移りつつある。
景気見通しの改善が長期金利の上昇を促す、いわゆる「いい金利上昇」につながっているという見方ができる。
ただし一方で、月初に格付け会社フィッチレーティングスが米国債を最上級格付けからの引き下げを発表、今後の財政赤字の急拡大とともに米政治機能の不全(ガバナンス問題)を理由とした。それを裏付けるように米財務省はその後米国債増発見通しを発表。需給悪化観測から長期債を中心に売りが膨らみ、利回りは急伸した。
直近で米10年債利回りが節目の4%を超えてきたのが、8月1日のフィッチの発表以降で、いわゆる「悪い金利上昇」という側面がある。足元の米債利回りの急伸には、このように好悪両面の要素が含まれている。
先週は16日に発表された7月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が発表され、インフレに上振れリスクが残っているとして、「追加引き締めが必要になり得るとの認識を大半の参加者は引き続き示した」と記していた。これも長期金利を押し上げた。
それにしても、昨年来の歴史的利上げが景気に影響がないとは考えにくく、やはり今後時を経て影響が表れると判断するのが妥当と思われる。
深刻な景気低迷を経験することなくインフレは目標水準に回帰できることを基本シナリオとするパウエルFRB議長だが、これに異を唱える著名投資家も少なくない。
今週は、24~26日の日程でワイオミング州ジャクソンホールにて恒例のカンザスシティ連銀主催の年次シンポジウムいわゆるジャクソンホール会合が開かれる。25日にはパウエル議長の講演が予定されており、その発言内容から9月の次回FOMCを読む手掛かりにしようと市場は身構えた状態にある。
米引き締め策を巡る議論も、いよいよ煮詰まりつつあると言えそうだ。その中で1900ドル超を維持する金だが、弱気材料について一定の消化が進んでいるとみられる。