昨日は「コアCPI上振れで波乱」としたが、本日はラジオNIKKEI岸田キャスターの市況番組、 「マーケットプレス」に9時35分から15分余り電話生出演だった。
上下に大荒れの市況を受け、話題は多かった。番組開始前に5分ほど軽く打ち合わせするのだが、岸田さんが盛んに言っていたのが債券相場の値動きの荒さだった。確かに債券相場、特に国債は安全資産で価格も安定しているイメージだが、最近は過剰流動(カネ余り)の中でヒラヒラと舞う局面が増えている。英国債も(利回りが)舞い上がり(価格急落)英国年金が左前になり中央銀行(BOE、Bank of England)の登場となった。市場規模の大きい米国債にしても、2020年春以降、今年の3月まで続いた米連邦準備理事会(FRB)のQE(量的緩和策)の吸い上げ(国債大量買い付け)効果もあり流動性は落ちている。それだけ値が軽くなっている。
発表された9月のCPI(消費者物価指数)の総合指数は、報じられたように前年同月比8.2%上昇した。伸びは8月の8.3%から鈍化しているものの、市場予想の8.1%上昇を上回った。傾向を見るうえで重視される前月比も0.4%上昇し、8月の0.1%上昇から加速した。 昨日取り上げたように注目の(エネルギーと食品価格を除いた)コア指数は前年比6.6%上昇と、予想の6.5%上昇を上回り、1982年8月以来の伸びを記録した。前月比でも0.6%上昇し、予想の0.5%上昇を上回った。市場予想は0.2%上昇だった。コアCPIを押し上げているのは、家賃などの住居費や賃金上昇にともなったサービス価格で、いずれも上昇すると下がりにくく、むしろ足元で上昇が持続しているもので「しつこいインフレ」と呼ばれる領域に突入している。
実際に住居費は前月比0.7%上昇。8月も0.7%上昇だった。サービス分野で最大の構成要素で、CPI全体の約3分の1を占めている。家賃と帰属家賃はいずれも前年同月比で6.7%上昇と、統計開始後最大の伸びを記録している。
FRBが40年ぶりとされる大幅利上げを実施しているにもかかわらず、インフレが弱まる兆候が見られず、むしろさらなる対応(利上げ)を市場は織り込みにかかることになった。11月の次回連邦公開市場委員会(FOMC)では0.75%の利上げが完全に織り込まれることになった。発表直後には1.00%利上げ見通しも急浮上し、NY金の急落など市場の乱高下につながった。
国債相場に話を戻すと、CPI発表直後から10年債利回りが急伸。直前の3.851%から直近の最高水準4.010%(9月28日、2008年10月以来の高水準)を大きく超える4.073%まで急伸し、その直後に3.920%下げ、再び4.05%という乱高下に。安定資産とされる米国債だが、これだけ値動きが荒くなると、デリバティブ取引で不測の損失を抱える投資家が表れても不思議はないだろう。
こうした流れの中で、ここまで0.5%の利上げが予想されていた12月のFOMCについても0.75%の利上げ観測も浮上している。ピークアウトの感触が得られないインフレは、FRBによる利上げの最終到達点金利(ターミナルレート)の見通しを立てにくくし、市場の不透明感が払しょくできない状況が続くことになる。
12日は長期金利とドル指数の急騰を受け、いったんは、9月29日以来の1650ドル割れ(1648.30ドル)まで売られNY金だが終盤に市場全体が落ち着きを取り戻すに従い、買い戻されることになった。NYコメックスの通常取引は、前日比0.50ドル安の1677.00ドルと前日の水準まで値を戻して終了した。本日は、「インフレ高進=FRB強硬スタンス継続」を反すうするような形でNY金は売り先行の流れが続いている。
舞い上がる不安定な国債相場だが、米国債のそれは市場の懸念材料であると思う。英国年金で起きたことは公的年金を含め米国でも起きる可能性がありそうだ。さらに値動きが荒くなればだが・・・。金市場の関心事といえる。