亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

織り込み済みのCPI、“懸念”でなく真正のインフレ

2022年03月11日 21時49分40秒 | 金市場

3月10日のNY金は、アジア時間こそ50ドル強下押した前日の弱気地合いを引き継ぐ形で一時1975.00ドルまで売り込まれたが、結局、それが安値ということになった。NY時間は2000ドル台をおおむね維持して、昼前に1990割れまで落とされたが直ぐに復活し、大台を維持して終了となった。

過去最高値圏ゆえに投資家の見方も拮抗し、価格変動が大きくなるのは避けがたいところではある。ウクライナ情勢やインフレリスクなど目先の買い手掛かり材料が一巡した上での上値の重さ、という印象が強い展開と言える。

注目指標の2月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比7.9%の上昇と1月の7.5%を上まわり加速した。1982年1月以来約40年ぶりの高水準を維持した状況で3カ月連続で7%超となった。 中古車が前年比で41.2%の上昇といまだサプライチェーン問題が尾を引いている。米国内で強烈にインフレを感じさせているのは言うまでもなくガソリン価格。前年比で38%の上昇になっていた。全米自動車協会(AAA)が集計する全米平均価格は、9日時点で1ガロン(約4リットル)あたり4.25ドルと、約14年ぶりに最高値を記録。地域格差も大きく、カリフォルニア州ではここにきて7ドルに迫る価格が常態化しているとされる。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数(コアCPI)も6.4%と1月の6.0%から加速した。

米国でのインフレは、当初の「インフレ懸念」から高インフレが現実化した段階に移行しており、ピークアウト後の高止まりを指摘する見方も増えている。ただし、こうした状況はすでに足元の金市場では織り込み済みとなっており、発表された結果に目立った反応は見られなかった。今回のCPIのデータは、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げと利上げサイクルのスタートを正当化するものとなった。

 

と、ここまで書いたところで、ウクライナとロシアの交渉で進展が見られるのではとの話が伝わったとかで、米株先物が急伸する一方でNY金の下げが目立ち1970ドル台まで落ちている。米長期金利は2.025%と1カ月ぶりの水準まで上昇している。金はどこまで押すか。とはいえウクライナ情報は双方の思惑含みで正確性に欠くので要注意ではある。

今朝目に付いたニュースでは、PIMCO(パシフィック・インベストメント・マネジメント)が、ロシア国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を販売しており、デフォルト(債務不履行)した場合、数十億ドルの損失が出る可能性があるというものがあった。FT(フィナンシャル・タイムズ)が報じたもので、数千億円規模の損の可能性ありというもの。15億ドル余りのロシア国債も保有しているとされる。

90年代のLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)ではないが、ロシアがらみでこの先も出てきそうだ。当時のLTCMは破壊的な影響があったが、あれは、みな真似をして同じようなポジション(ミラー・ファンド)を持っていたことによると記憶している。

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