亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金、この先はドル指数離れ  

2022年07月12日 16時23分15秒 | 金市場

ドル指数(DXY)の上昇が止まらない。というよりユーロが弱すぎて、パリティつまり1ユーロ=1ドルが投機的目標のような形となり、達成どころか行き過ぎないと止まらないような状況になりつつあるようだ。

欧州や中国さらに米国内から伝えられるニュースのほとんどが、ドル買いの手掛かり材料と見なされドル指数(DXY)を押し上げている。NY金にはファンドの売りが自動的に出てくるが、前日まで取り上げてきたように、新規のショート主体の売りゆえに、そうそう下値を追いかけて売り込むほどの市場環境の変化があるわけではない。ドル指数の上昇にどこまでもついてくる売りではないので、そろそろ上値は抑えられたとしても、週明けのNY金の終値は1731.70ドルだったが底値水準と思われ、これからはドル離れという領域に入ると思われる。

海外勢の中には、1670ドル程度までの下を読む向きもいるが、それは過去2年間の下値が1670ドルにそろっていることによる。おそらく足元の1700ドル台前半の水準は実需の買い引き合いが入るものと思われる。

11日のユーロドルは一時1.0034ドルと2002年12月以来20年ぶりの1ユーロ=1ドルのパリティに迫るところまで売られた。それを受けてドル指数(DXY)は108.268まで上昇。こちらは2002年10月以来の高値に。

 

直接的なユーロ売りの手掛かりとなったのは、ロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプライン(ノルドストリーム1)が最大10日間の予定の定期検査で供給が止まったこと。検査終了後もロシア側が供給停止を続ける可能性が懸念された。この懸念には既に6月中旬から同パイプラインを通した天然ガスの供給が60%カットされている事実がある。ドイツのシーメンス社製のタービンを使用しているノルドストリーム1だが、修理はカナダで行っており、修理終了後にカナダが経済制裁に沿ってロシア側に引き渡しを拒否。ロシアはその段階でドイツへの供給を60%カットしている。ドイツ側の要請でカナダはロシアへの引き渡しに応じているが、供給はカットされたままになっている。EU内で最大の経済規模のドイツ経済の先行き懸念は。そのままユーロ安に投影されている。夏はまだしも暖房需要が高まる秋から冬が懸念されている。

 

さらに中国を巡る問題もある。中国上海市でオミクロン型の派生型で感染力がより強いとされる「BA.5が確認され一部地区の屋内運動施設の利用が停止されたと伝えられた。また中国の特別行政区のマカオでは11~17日の1週間、事実上のロックダウン(都市封鎖)が発表された。今後、感染防止措置が強化されるとして景気への悪影響が警戒されている。中国はドイツの最大の貿易相手国となっている。 いずれもユーロ売りの材料のみならず、世界景気の後退懸念とも受け止められ、この日の米国株式市場での売り材料にもなった。米主要株式3指数は大幅続・反落となった。

ちなみに米国にて景気後退の有力なシグナルとされる2年債と10年債利回りの逆転現象だが、先週7月5日に3週間ぶりに逆転して以降、その状態が続いている。11日は10年債利回りが2.995%と3%割れとなる中で、2年債は3.090%で終了。逆イールドの幅も拡大している。

時期的に自社株買いを入れられないタイミングでもあるし、米国株は次の下げ波動がやって来る時間帯に入ると思われる。

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