先週末発表の注目の9月の米消費者物価指数(CPI)は、エネルギー価格の上昇を背景に前月比0.5%上昇したが、市場予想(+0.6%)は下回ることになった。8月末から9月にかけてメキシコ湾岸を襲ったハリケーンの影響で製油所がストップし、ガソリン価格の上昇が目立っていたことから、上昇加速が予想されていた。実際にガソリンは前月比で13.1%もの上昇となっていた。CPIの前月比0.5%の上昇は、1月以来8ヵ月ぶりの大幅なプラスとなるもの。
しかし、それで喜んではいられない。FRBの利上げ判断でより重要視される(変動の大きい食品とエネルギーを除いた)コア指数は、前月比0.1%の上昇にとどまった。こちらも市場予想(+0.2%)を下回った。前年同月比では1.7%の上昇となり、過去の数字が修正されたが、それでも5ヵ月連続で1.7%の上昇となっている。つまり物価に加速の気配はない。家賃や医療などサービス価格が鈍化、食品やエネルギーを除いたコモディティ価格は前月比で0.2%低下と下げが加速。幅広い範囲で軟化しており、物価上昇の鈍さはFRB当局者にとって懸念材料となる。9月のFOMCでも積極的に討議されていたことが、先週公開された議事要旨で明らかになったばかりでもある。
この結果を受けた15日日曜日、イエレン議長がワシントンで開かれたG20財務相・中銀総裁会合の分科会で講演したが、インフレ見通しについては、議事録にあった内容をなぞる形で以前より慎重スタンスをにじませたものの、足元の“停滞は一時的”と、これまでの見方を変えることはなかった。やはり12月の利上げに向けた意思は固そうだ。それでも、この話が伝わった本日週明けのアジアの時間帯の取引では、ドルが買い戻されるわけでもなく、週末にCPIの結果を受けて1300ドル台に駆け上がった金も売られることはなかった。
市場は、年内の利上げ観測のその先、来年3回の利上げ観測を額面通り受け取っていないのだが、FRBが資金回収という金融引き締め策に乗り出した今月は、やはり政策が転機を迎えたタイミングでもあり、目には見えねども株式市場などにも徐々に影響が出て来るのではと思っている。
そういえばフィッシャー副議長が、13日、トランプ大統領はイエレン議長を再任すべきと発言したと伝えられる。そもそも再任されたとして、イエレン議長自身が受けるのか否かという問題もありそうだ。