先週末2日発表の11月米雇用統計と週明け5日の11月ISM非製造業景況指数が予想外の強さを示したことで、今週は市場センチメントが大きく振れたのが特徴だった。指標の好転でFRBの利上げは、力強い景気を冷やすために「より高く、より長く(higher and longer)」続くことが意識され、一転して警戒モードに転じることになった。強い引き締めが結果的に景気後退を招くとの見立てが急浮上することに。
景気後退の強力なシグナルに長短金利の逆転現象(逆イールド)がある。一般的には米10年国債の利回りと2年債の利回りの比較で、2年の方が10年より高くなる逆転現象を指す。 先行きの景気後退を示唆する有力シグナルとされ、すでに表れて数カ月経過し、今週はその差が0.8%を上回り大きくなった。 それよりも、10月下旬に現れた10年債と3カ月物の逆転現象の方は、ほぼ間違いなく駅期後退入りを示唆するものと経験則が教えるが、7日は一時0.9%以上開き、終値では3カ月4.324%、10年3.425%と0.899%となった。短いものはFRBの利上げ接近を読み上昇し、長いもの(10年)は先行きの景気悪化を読み低下した結果の利回り差の逆転現象は、1981年以来の大きさとされる。
追い打ちをかけるように、今週は米銀の最高経営責任者(CEO)から景気に対する厳しいコメントが相次いだ。 いずれも7日だがJPモルガン・チェースのダイモンCEOは、CNBCのインタビューで「インフレは消費者の蓄えを浸食し、経済は失速し景気後退を招く」とし、現在の経済を取り巻く暗雲は「ハリケーンかもしれない」とした。
ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOも同じ日、ブルームバーグテレビで「これから波乱の時が待っていると想定しなければならない。ボーナス減額や人員削減が実施されたとしても意外なことではない」と語っている。
さらに、バンク・オブ・アメリカのモイニハンCEOもブルームバーグテレビで、個人消費の減速を理由に採用活動を鈍化させたとした。
こうした中で目につくのが原油の下げ。8日まで5日続落71.46ドルで終了。一時71.12ドルと、昨年12月以来の安値を3日連続で更新した。つまり今年の上昇分をすべて失い前年末比マイナス圏に入っている。当初は中国での強力なゼロコロナ政策による需要減を警戒し売られていたが、ここに来て中国は政策方針を緩和。それでも原油に押し目買いが見られないのは、米国景気の悪化と世界景気の冷え込みを懸念してのものとされる。
確かに今週米エネルギー情報局(EIA)が発表した在庫統計で、ガソリンやヒーティングオイル・軽油という最終商品の在庫の大幅増加していた。今年の春はロシア産原油の供給削減で、これからエネルギー危機でWTIは150ドルだと(知人の)専門家が語っているのをテレビで見たが、今は売られ過ぎという解釈をしているのだろうか。
本日は、ダラダラと書いてきたが、いつもはそう注目度は高くない米国の11月PPI(生産者物価指数、卸売り物価指数)の結果が注目されている。市場予想は前月同様、落ち着きを見せる見立てになっていて、そのように見えるがどうなるか。
週初、NY金は強い相場に転じたという意味合いでここに書いた、足元で1800ドル割れ(1780ドル台)に売られ6日のここで「この水準で押し目買いがどの程度見られるかが注目される」とした。
8日は1800ドル超に復帰したが、繰り返し書くがNY金の基調は上昇に変わっているとみている。もちろん、相場のことゆえ参考意見であり、判断はご自身で。