先週末12月9日のニューヨーク金先物価格(NY金)は、通常取引は1810.70ドル(清算値)で終了。週足ベースでは前週末比1.10ドル、0.06%高と上昇ではあるものの、ほぼ横ばいとなった。こう書くと波乱なく小動き、レンジ相場で推移した印象だが、実際には週明け早々5日のNYの時間帯に(NY時間外)アジア時間に付けた高値から40ドル超の急落に見舞われ、この日の終値は1781.30ドルとなった。
前の週末にいったんは心理的節目の1800ドルとともに6月以来となる200日移動平均線をも上回り、テクニカル面でも明るさが見えた矢先のことだった。約半年ぶりに上回った200日移動平均線だが、押し戻され復帰に時間を要すると逆に上値の抵抗ラインに転じることになる。ちなみに足元のS&P500種平均株価がそれで、戻れないと200日線が強力な抵抗ラインになりそうだ。したがって、NY金の場合早期の復帰につながる押し目買いの動向が注目された。
結果的に週央から週末にかけ、ドルが強含む逆風の中で金市場は買いが先行する流れに転じ、8日には終値ベースで1800ドル台を回復するとともに200日移動平均をも再び上回って終了。週末9日もそれを維持して終了した。
週初にNY金に大きな下げをもたらしたのは、広範な市場センチメントの振れだった。
前週前半まで市場内を覆っていたのは、物価上昇の落ち着きとともに連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースが緩み、経済は軟着陸との見立てだった。ところが12月2日発表の11月の米雇用統計が予想以上の米国景気の底堅さを示したことに加え、5日発表の11月の米ISM非製造業景況指数が予想外の改善を示したことから、FRBの利上げは「より高く、より長く(higher and longer)」続くことが意識され、市場の空気は一転。警戒モードに転じ、強い引き締めが結果的に景気後退を招くとの見立てが急浮上することになった。
それと符合するのが、債券市場で長短金利差逆転(逆イールド)現象がさらに深化していることだ。
一般的に2年物と10年物国債の利回りの逆転は近い将来のリッセッション(景気後退)を示すシグナルとされる。逆転が見られて数カ月経過しているが、7日の取引では終値ベースで2年債が10年債を(終値ベースで)0.846%も上回る状態に至っている。
1970年代後半以降、逆イールドは今回含め5回起きている。ただし、マイナス0.5%を下回ったのは1980年代のボルカーFRB議長による強力な引き締め時以来のことになる。
さらに10月下旬に現れた10年債と3カ月物の逆転現象も7日は一時0.9%を超え終値でも0.899%3カ月物が上回る状態となっている。2年債との逆イールドより3カ月債との逆転は、先日も書いたが経験則としては確実にリッセッション入りを示すされるもの。ちなみに3カ月債との差も1981年以来の大きさになっている。
いずれにしても俯瞰すれば、FRBの利上げサイクルは終盤に入っている。ドルは売られゴールドは上がる。